2022年5月10日のハイパー縁側は、前田昌則さんをゲストにお迎えしました!
テーマは「大阪市北区の教育施策 “自分で考え行動する人財の育成”」

Vol.188Vol.200に続いて、 3回目のご登壇となる大阪市北区の前田区長。以前は、北区将来ビジョンや防災についてお話し頂きましたが、今回のテーマは教育についてです。

まずは、北区の地域性について。北区の小学生の3割、中学生の約半分の子どもたちが私学に進学するそうです。通塾率が80%を超える学校も。北区だけでみると、全国学力試験の平均をはるかに上回る成績で、大阪の中では「特異な地域」と前田さんは指摘します。

そんな北区では、“自分で考え行動する人財”を育成することが大事だと考えます。学力の基盤がある子どもに対しては夢を見せ、その夢にどうチャレンジするのかを自分で考えることができるようにしたい。その為に区役所は、「子どもたちの夢づくり事業」を展開しています。

前田さんが「子どもの夢づくり」を応援したいという考えに至るには、3人の人物が影響していると言います。1人目は大正生まれのお父様。“教育は財産”と考え、自分のことよりも子どもの教育に投資したい、という家庭で育ったそう。

2人目は30年間、前田さんがお勤めになったパナソニックの創業者 松下幸之助さん。“ものをつくる前に、人をつくる”という言葉は、今でも肝に命じていると話します。そして、3人目は、Vol.188でも紹介して下さった『夢』という詩。前田さんの名刺の裏側にも記されています。
この3人に影響を受け、教育・人・夢に重きを置き、人材の“材”は、財産の“財”と捉える前田さん。北区ならではの「夢づくり事業」をどのように推し進めているのかを教えて頂きました。

北区長1年目から取り組んでいることが、「職業出前授業」。企業の方に学校に来てもらい、仕事について話して頂きます。以前はPTA会長さんやご近所の団子屋さんに来て頂いていました。それも大事なことですが、視野を広げる為にはメニューを提供することが必要だ、と前田さんは考えます。

そこで、区長の前田さんが自ら企業に電話をしたり、メールを送りまくり、学校に来てもらうよう依頼しました。時には、会社を訪ねて直接交渉も。そうして、大手企業の商社マンや彫刻家・写真家・世界的なラグジュアリーブランド、さらには米国総領事館の大使など、幅広い職種の方を学校に呼ぶことができるようになり、今では100社と繋がっています。

“夢づくり”

授業をしてもらう時に最も重要なことは、会社の概要だけでなく「どんな夢を描いて今の会社に入社したのか」「その夢を実現する為に、どんな苦労をしているのか」を必ず伝えてもらうこと。大人が歯を食いしばり、挑戦する背中を見せる事が子どもたちの夢に繋がる、と前田さんは力強く語ります。

授業後は「面白かったー!」と、輝いた目をした子どもたちに会えるそう。アンケートを実施すると、以前は夢や目標をもちたいと答える子どもの割合が約60%であったのに対し、91%まで上昇しました。現在、この授業は中学生向けだけでなく、小学生向けにも行っています。

また、北区には四季劇場・シンフォニーホール・梅田芸術劇場など、文化施設が充実しています。「学校の講堂に劇団を呼ぶのではなく、装置があるのだから本物を見て感動させなあかん!」と、前田さん。劇団四季ミュージカルや能などを見に行き体感できる、芸術鑑賞の機会を作っています。

さらに、中学生の吹奏楽部がシンフォニーホールで演奏し、本物の音の響きを体験できるようにしたり、バレーボール部はJTの実業団の方に指導してもらうことも。他にも、パソコン部には大阪工業大学の学生を派遣したりと、夢を身近に感じる経験を積むことができます。

1回目にご登壇して頂いた際に、実現したいとお話があった「子どものダンス大会」。専門学校が全面的にバックアップする形で機材準備や進行などを担って頂き、8月に開催が決まりました!子どもにとっては本格的な会場の音響や照明で発表することができ、専門学生にとっても社会に出る前に本番の演出を体験できる機会になる、と前田さんは話します。

参加する子どもたちの「夢づくり」でもあり、演出する専門学校生にとっても「夢づくり」になります。ダンス大会の翌日には、eスポーツ大会も専門学校の協力で行われる予定です。

一方で、夢をみることは大事だけれど、足元もみないとだめ、と前田さん。「感謝の授業」として、腰塚勇人さんをお招きしての授業も開催されます。腰塚さんは体育教師をされていましたが、スキーでの事故をきっかけに全身マヒに。懸命のリハビリを続け、社会復帰を果たします。腰塚さんの話を通じ、人への感謝、日常を普通に過ごせることへの感謝ということを伝えたいと話します。

また、Vol.121にご登壇した香月さんが開催する『ほめる学校』を北区でも行う予定です。友達のいいところを探して感謝状を作り、次に自分のいいところを探し表彰します。これを北区内の全ての小・中学校で実施しようと計画中。感謝の気持ちを教えるとともに、自己肯定感を高めることに繋がる、と考えています。さらに、「ありがとう」や「感謝」と書いた紙をもつ写真を10万枚集め、ギネス記録にも挑戦中です!

最後に、教員をされている方からは、「目の前の授業などに追われるので、伝えたいこともなかなか子どもに教えられない。北区のような枠組みや仕組みが、自分の地域にもあれば有難いのに。」と、率直な感想を頂きました。また、「具体的にどのように人との繋がりを作っていくのか?」という質問に対しては、まずその会社のコンセプトや概念を理解し、自分の考えと合わせてから、メールなり電話なりをするようにしているとアドバイス。

「ものづくりは、無いものをつくっていく、そこからしか物事はスタートしない」と、前田さんは力強く語ります。長年、ものづくりに携わってこられた前田さんの鋭い感性と熱意で、北区の教育現場は活発化し続けています!

【前田 昌則(まえだ まさのり)】
大阪市北区長
◆経歴
昭和58年3月 大阪工業大学 建築学部卒業
昭和60年3月 大阪工業大学大学院 工学研究科 建築学専攻都市計画学修了
昭和60年4月 パナソニックホームズ株式会社 入社
平成20年9月 パナソニックホームズ不動産株式会社 中部近畿統括部部長
平成27年4月 パナソニックホームズ不動産株式会社 営業企画部部長兼パナソニックホームズ・合人社コミュニティ株式会社 取締役
平成28年4月 大阪市此花区長
令和2年4月 大阪市北区長
◆資格
一級建築士
宅地建物取引士
マンション管理士
二級ファイナンシャル・プランニング技能士
空手道4段
大阪市北区