2022年4月22日のハイパー縁側@天満橋は、中野弘巳さんと吉崎かおりさんをゲストにお迎えしました!
テーマは、「水上で暮らす御舟かもめの生態」
ハイパー縁側@天満橋では、初めてご夫婦でご登壇下さった中野さん・吉崎さんご夫妻。「新婚さんいらっしゃいみたいやな」「あ、新婚じゃないわ」と仲良しのお2人は、2009年にご夫婦で「御舟かもめ」を立ち上げました本日は、船長の制服である白いシャツと個性的な被り物を身につけ登場して下さいました!
「御舟かもめ」は、“川に浮かぶちいさなおうち”がコンセプトの、定員10人の小さな船。運航時は、船長1人でガイドや運転すべてを担います。八軒家浜を中心に発着し、中之島や道頓堀・港エリアや枚方方面に行くコースもあるそうです。船の半分は縁側のようになっていて、のんびりと空の広さや風を感じることができます。
大阪出身の吉崎さん、小さい頃は大阪のまちに対して「狭くて、汚くて、うるさい」と感じていたと話します。ところが、23歳で設計事務所に勤め、最初に取り組んだ仕事が大阪の水辺の調査でした。
そこで、天満橋や中之島エリアの水辺の魅力を知り、「むっちゃいいやん!」と感じた吉崎さん。水辺で楽しく遊ぶ大人たちに触発され、50万円の小型ボートをローンで購入。「人生で初めて取得した免許は、船の免許でした」と笑います。そして、ボートを楽しむため、水辺のマンションに暮らしていました。
その頃、中野さんは大学で都市計画の勉強に励んでいました。同じく水辺好きの中野さんは、偶然にも吉崎さんと同じ水辺のマンションの3階に住んでいたそう!共通の知人を介してお2人は出会い、そのまま結婚に至ります。
当時、吉崎さんは働きながら水上タクシー事業も始めていました。そんな中、妊娠が分かり吉崎さんだけでは船の管理などが難しくなります。そこで、中野さんは勤めていた会社を辞める決断をします。13年前は、今のように小型船やサップなどの姿はなく、大きな遊覧船の運行が主流でした。しかし、小型船の魅力を知っていたお2人は「これでやっていけるか、2人でやってみよう!」と「御舟かもめ」が生まれました。
朝8時出発の便から20時出発の運航もある「御舟かもめ」。お子さんも3人いらっしゃるので、仕事・家事・育児も分担しながら、他のスタッフの皆様と共に運営されています。
朝から夜まで運航するのはとても大変ですが、理由があると言います。季節や時間帯によって見える景色が全然違うので、それを味わって欲しいと2人は口を揃えます。朝は水面がとても静かで、まちの騒音もなく、野鳥の声が聴こえるそう。ボートの練習をする学生が漕ぐオールの音を聞きながら、優雅な時間を過ごせます。夕方は、まちがざわめいた後で、クタクタに帰路につく人や、夕日が沈みポツポツとまちの灯りがともっていく様子をゆっくり眺めることができます。
また、小さい船なので水面を近くに感じることができ、水面に夜景が映る様子なども見て欲しいと言います。川の上に浮かんでいると、月がでていることや日が沈む方角が変化していく事など、小さなことに気づき“いちいち楽しませてくれる”と、中野さんは川の魅力を語ります。
観光客の方も来られますが、お客様の7〜8割が大阪市在住の地元の方だと言います。水上からは、まちを一歩ひいた俯瞰的な目線で見られるので、「こんな街じゃないと思ってた!」と、新しい発見にびっくりされるお客さんも。
また、USJで遊んだ次の日は「御舟かもめ」を利用し、“大阪のA面・B面”を知ることができる面白い組み合わせを楽しむお客さんもいらっしゃるそうです。月が綺麗な夜に日本酒をお猪口に注いで、そこに月を映して乾杯。静かにクルーズを楽しむ常連のご夫婦もいらっしゃるとか。
“暮らしを 楽しむ”
住まいや勤務先からすぐのところで、このような体験を気軽にできるというのが、このエリアのいいところだと、吉崎さん。中野さんも、水辺を楽しむアイデアを持っている方に「御舟かもめ」が届いたから、今まで続けてこられたので、まずは地元の方に楽しんでほしいと話します。
ハイパー縁側も中盤を過ぎ、「そろそろ」とようやく被り物の説明を伺いました。お2人が企画する様々なクルーズのひとつが「建物クルーズ」。中野さんが被っているのは、水辺の建築を合体させたもので、中央公会堂やOMMビルの窓なども組み込まれ、マニアにはたまらない仕上がりとなっています。
吉崎さんが被っているのは、「野鳥クルーズ」で使用する、渡り鳥が飛び立つ様子の被り物。素材は、湿気に強い牛乳パックでできていて、水面を表すキラキラが目を引きます。
この被り物を専門家の先生が被り、ガイドをするクルーズは好評です。ある時、中野さんが「専門家の先生をお呼びしてガイドをしてもらおう」という提案をしたところ、2言目に「被り物やな」と吉崎さんが発したそう。三重県出身の中野さん、関西の笑いは分からないと言いながら、「今となっては楽しんじゃってます。」と、笑います。
最後に、水上で過ごす時間が長く水辺の魅力を熟知しているお2人が考える、地上での暮らしをより楽しむヒントを尋ねました。
吉崎さんは、暮らしの中で当たり前にしていることの場所を変えることで発見がある、と考えます。時々、近所の公園に鍋ごと晩ご飯を持って出て食べるそうです。いつも遊んでいる場所でも、そこが晩ご飯を食べる場所になると、違う反応をみせる子どもたち。“いつもと違う空間で、いつもと同じことをする”と、違う感覚を味わえると話します。
中野さんは水上生活が長い中で、最近は山のことに興味が湧いてきたそうです。山から水は流れてきていると感じたり、今見ているものの先を想像することが大事ではと考えます。
わざわざお金や時間を使い船に乗ると、周りのものをゆっくり見渡すけれど、そうでなくても普段から意識的に周りのものを愛でられたら、ちょっと何かの向きが変わるのでは。そして、そんな人たちが増えたら現代のストレス社会が少しは解消するかも、と話します。
水上の良さを知り、地上の民である私たちとは違う目線をもつお2人。だからこそ、立ち止まることや、場所を変えることの大切さを実感されていて、その先にある豊かさをお伝え頂きました!
【中野 弘巳】
御舟かもめ 代表・オーナー兼船長
三重県生まれ。大阪大学大学院工学研究科(都市環境デザイン)修了。
NHK番組制作ディレクターとして、教育、ドキュメンタリー、情報番組等を制作。
平行して03年より始めた「水辺暮らし」の心地よさにハマり、09年ついに脱サラ船長となる。