2022年11月9日のハイパー縁側@中津は、堀池幸一郎(ホーリー)さんをゲストにお迎えしました!
テーマは「今こそ、目に見えないもののデザインを」

「人から、何屋さんかよく分からないと言われます」と笑う堀池さん。店舗内装のデザインやグラフィックデザインをメインに、企画・コーチンング・ブランディングなども手がけています。さらに、人と人との関係の仕組み作りまで、振り幅の広い活動をされています。

ご出身は兵庫県姫路市。近年、姫路市では駅から姫路城に続くメインストリートで「歩行者利便道路(ほこみち)」が運用され、まちが変化しつつあるそう。

デザイナーに頼んだら、素敵ないいものができてよく売れる。また、東京の超有名店を誘致すれば、まちは賑わう。そのような昔からの考えに対して、「それってどうなん?」と疑問をもち、「自分たちが住んでるまちをとり戻そう」という動きが社会的に起こっている、と堀池さんは指摘します。まちに関わる人たちが「自分らしいとは?」「自分なりのかっこいいとは?」と、遠回りでも話し合う方が、結果的にみんなが幸せなのではないか、と考えています。

ただ、それは限りなく手間がかかるかもしれない。法律を変えたり、条例を作らないといけないかもしれない。
今まで企業や行政レベルでしてきたことを、市民レベルでもしていくことが必要になってきます。その中で、その道筋を示すことがデザインの仕事だ、と堀池さんは力強く語ります。

デザインという言葉を軸に考えている堀池さんは、例えば席配置もデザインと言います。ハイパー縁側の空間についても、“場のデザイン”と感じています。意図的に作られた部分と、余白を楽しむ部分があり、手を離れたところにもデザインが存在している。
そして、何でも正解になりうる。何通りも想定しておいて、それをストックして組み込んでいくこと、提案してくこともデザインの仕事で、情報処理能力や整理能力も必要だ、と話します。

「自由に生きたいけど、不安定はいや」という考えの堀池さんは、独立後、工務店と年俸制でパートナー関係を結びます。そこで空間デザインをメインに安定収入を得ながら、チャレンジができる環境を整えています。

独立したての頃は、夜中にパソコンの前でデザインの仕事をし、昼間は人と会ったり、活動する時間にあてていました。寝るのは空いた数時間。現在は、夜に寝る時間を確保できるようになり、週2回ほど空間デザインや設計の仕事。その他が、チャレンジとして活動する時間、家事やキャラ弁作りのネタ探しへ100均に行く時間というバランスだそう。

チャレンジとしてすることは、目には見えないし、お金にもならないけれど、「自分が求めている生活像に投資することでありたい」と、話します。例えば、イベント企画を頼まれて、自分も楽しく、人も幸せになり、繋がった人と将来何かできそうと感じたら、お金にならなくても積極的に引き受けます。

ただ、ボランティア的なことがしたいわけではない、と言い切る堀池さん。ボランティアに頼った運営は持続的ではない。一定のキャッシュが回っていることが必要で、持続する為には対価があるべきだ、と言います。

“ミニマムにスタートし、超エッジを立てる。”

今はスモールビジネスを始めやすい時代。資金をつぎ込むのではなく、ミニマムにスタートする。その代わりに超エッジを立てる。それで、うまくいったら肉付けしていくというスタイルの堀池さん。新しいことをするなら、許容値の中で華々しく挑戦して、失敗したらいい、と考えます。

そして、実験をして失敗することにも慣れていかなくてはいけない。
私たちは、失敗せずに合理的にゴールにたどり着くという教育を受けてきたけれど、失敗に耐えうる強さ・ここまでなら失敗してもいいという線引きの仕方・失敗を回避するノウハウなどを、失敗を経験して蓄積することで身につけることができる、と話します。

失敗したり、人を傷つけたり傷つけられたり、総じて今必要なこと。「自分は基本的にポンコツです」と堀池さんは言います。
ポンコツであるがゆえに、人の失敗を許すこともできる。「デザイナーは、さぞシュッとした生活なんでしょうね」と思われがちですが、「今日も、シンクに食器が積まれているのに目をつぶって来ました」と、笑います。

最後には、学年違いで同じ誕生日のカモメ・ラボの今村さんが登場。堀池さんと今村さんは、昭和町のアートギャラリー&オープンスぺースを共に手がけました。堀池さんは理屈では分かるけれど、どうやったらまちに開けるか、“場の開き方”が分からなくて、「アドバイザーとして入ってほしい」と今村さんに声をかけました。

直線でゴールにはめたがる、ちょっと悪い癖があると言う堀池さん。今村さんは、お施主さんとの話に入ったり、「ホーリは、急ぎすぎてる」とアドバイスをしてくれたと話します。まちの人を巻き込みながら進めていく今村さんに、“場の開き方”を教えてもらったと言います。

一方、今村さんは、堀池さんが風呂敷を広げて方向性を決めてくれるから動きやすいそう。
ロジックは苦手で、“とりあえずやってみる精神”の今村さん。論理的で長時間考えがちな堀池さんは、「やってみよう!」の今村さんの言葉に救われた、と話します。全部を全部、自分が兼ね備えてなくてもいいと最近は感じています。

そんなお2人は昨年から、仲間と一緒に『ティーパーティ・ムーブメント』を始動。京都府南山城村の耕作放棄地を有効利用し、茶園をシェアして「マイ茶畑」をもち、お茶のことを知り、新しいコミュ二ティが生まれるプロジェクト。

そこでとれたお茶で、中津ブルワリーでほうじ茶ビール(ナウマンほうじ茶エール)も作りました。もともと、耕作放棄地で何も生まれなかったところから、最終的にビールという形になり、人の手に渡り笑顔に変わっていくことに感動した、と堀池さんは語ります。

自分の我を出しすぎたデザインを押し付けると、人はついてこないことを体感されてきた堀池さん。虚勢を張るのではなく、失敗やポンコツ話をしながら、ありのままでいたいと話します。

外からみてデザインをするのではなく、中に入って人との関係もデザインしながら、一緒に失敗も共有し、もまれながら作り上げていきたい。人に背負わすのはやめて、できないことは誰かに頼りながら、一緒に泣いて、一緒に喜んで、一緒に全部を背負っていきたい、と語って下さいました!

【堀池 幸一郎】
&DAYS DESIGN 代表 / まちマチART&DESIGN ブランドディレクター / ティーパーティ・ムーブメント 共同主宰 / 築港ターミナル 水先人 / マルイチ百貨店 オーナー

&でつないで笑顔が絶えない日々をつくること。

デザインの仕事をしていると、「カッコいい」とか「オシャレな」デザインをしてほしいと言われることが非常に多いのですが、僕が思うに、デザインというのは、単なるハード的なアウトプットだけではなく、「そこに住まう人」や「そこに関わった人」、そして「それを使う人」、みんながより良くなるための手法を提案することだと考えています。

だから、最初は空間設計の依頼を受けたはずなのに、いつの間にか運営やプロジェクトの企画を一緒にやっていたり、パンフレットの依頼を受けたはずなのに、打合せしているうちに、その予算を使ってイベントをやろうってなったり、そんなことが日常茶飯事です。

よく何のデザインしている人なのか分からないって聞かれるのですが、結局のところ必要だと思うことは、場のデザイン、モノのデザイン、人のデザイン、関係性のデザイン、そして言葉のデザイン。そんな仕組みづくりからブランディングまで、なんでもデザインします。

ただ、もちろん自分にはできないことや、苦手だったりすることもあるので、その際はそれを得意とするデザイナーさんやクリエーターさんとチームを組みながらお仕事しています。

デザイナーという仕事をするにあたり、いつも心がけていることは、生み出たデザインがちゃんと目的に対して機能し、継続し、繋がり、広がっていくこと。そして、一緒にいる人とたくさん笑い合うこと。

だからみなさん、是非一緒に縁側に来てくださいね。
ビール片手に、たくさん笑いましょー。
WEB
Instagram
Facebook