2022年8月27日のハイパー縁側@新京極は、田川広一さんと大森勇志さんをゲストにお迎えしました!
テーマは、「あかりを灯す・人が繋がる・未来を創る」

「3人でキャンプに来たみたいやな」と、焚き火に癒されながら、和やかな雰囲気でハイパー縁側がスタートします!
1人目のゲストは、和蝋燭職人の田川さん。中村ローソクにて、お寺にある大きな蝋燭や時代劇で出てくるような蝋燭を制作しています。和蝋燭の材料は、100%全て天然のモノでできているので、環境負荷が少ないそう。

また、使用済みの蝋を溶かし、それを再利用する循環サイクルもできあがっています。さらに、再利用する際に出る芯のかすや燃えかすを、燃料として使うことも、日本人が昔から当たり前にやってきたこと、と田川さんは話します。

コロナ禍でキャンプ人口が激増し、田川さんたちが普段使う燃料を「キャンプで焚き火をする時の着火剤にしたい」という依頼が来ました。植物由来の原料の為、アウトドアで使用しても自然を汚す心配はありません。材料は田川さんたちが提供し、福祉施設の方に作ってもらい商品化するという流れで、福祉施設の方々と一緒にものづくりをしています。

今回の焚き火は天然素材の和蝋燭を燃やしているので、すぐ灰になって土に還ります。後始末にも困りません。塗料が付いていたり、プラスチック製のものを燃やすと変な色の炎がでますが、天然のものだと変な色がでない、と田川さんは語ります。黄色の美しい火が燃え続けます。

2人目のゲストは、「みんなの想火 京都」の代表の大森さん。平日は事業をされていて、休日に放置竹林の整備をし、その竹を使って竹あかりを灯し、京都のまちを元気にする活動をしています。

「みんなの想火」は年に1回、全国47都道府県で同時に竹あかりを灯すプロジェクト。今年は、9月18日に行われる予定です。熊本の竹あかりアーティストの方が発起人で、「竹あかりを日本の文化にしたい!」という想いを持ち、東京オリンピック開催予定の年だった2020年、開会式の前日に竹あかりを灯し、東京だけでなく日本全体で盛り上げよう!という気持ちを込め、一斉点灯されたのが始まりです。

熊本で実際に竹あかりを目にしたことがあった大森さんは、2019年末にこのプロジェクトを知り、「キャッチーだな、やってみようかな」と、軽い気持ちで参加することに。当時は、飲食の仕事をしながら竹あかりの活動に取り組んでいました。そんな中、コロナウイルスが蔓延し始め、緊急事態宣言が出されます。店は営業停止になり、あかりが消え、まちの景色が一変。昼間でも、暗い雲がドーンと覆っているイメージだった、と振り返ります。

そこで、飲食業というのは、お店に来て頂いたお客さんを喜ばすだけではなく、“まちの中で店を営業をし、あかりを灯すということ自体がまちに貢献しているのではないか”と、気づきます。まちにあかりを灯す竹あかりの活動は、今だから必要だと強く感じた大森さんは、そこから本腰を入れて活動を始めます。今年は、「みんなの想火」の全体を取りまとめる副実行委員長も担っています。

過去2回、開催された「みんなの想火」ですが、コロナの影響や、火を使うことに対しての規制もあり、灯したい場所で灯せなかった、と大森さんは言います。
2020年の秋に、竹筒に入っている田川さんの和蝋燭に出会い、洋蝋燭にはない、芯の光の太さや強さに魅了された大森さん。今年の「みんなの想火」では、和蝋燭だけで灯すエリアをどうしても作りたいので、色々なことを調整中だそうです。

和蝋燭は、ビル風にも消えず燃え続けてくれます。京都は、文化財が多いことを理由として、規制が厳しいですが、神戸などでは和蝋燭を灯す竹あかりイベントは行われてきた、と田川さんは話します。石油系の洋蝋燭と和蝋燭は全く別物。それをひとまとめにして、蝋燭が危なく火災の原因になるというのは、勘違いだ、と声を大にして訴えます。

“繋がり”を大切されているお2人。なぜ“繋がり”をキーワードに活動されているか聞かせて頂きました。
大森さんは、「熊本地震の時、普段から地域の繋がりがあっても、熊本全体で被災してしまうと、自分たちの力ではどうしようもできないことを体験した」という話をきいたことがきっかけと話します。

災害は起こらない方がいいけれど、起きてしまった時の為に、平時から全国で横の繋がりを作っておくことが大事。何かあったら、駆けつけ助け合える仲間づくりが必要だと考えています。“自分のまちは自分で灯す”という同じ志をもった仲間と、竹あかりを通じて繋がりを築くことを、意識的にしています。

海外の方々と知り合う機会が多い田川さんは、彼らが欲しているのは、“日本のもの”ではなく、“日本の文化”だと言います。和蝋燭そのものではなく、和蝋燭が見せる景色や雰囲気。それを実現する為には、伝統工芸の人々と繋がるしかないと言います。例えば、仏像を彫る人や、舞妓さん、芸妓さん、他にも庭なども含みます。

今回のこの空間も、まさに“繋がり”があって実現したものだ、と田川さんは言います。和蝋燭を灯す竹、それを灯す場である公園、そして、それらを企画したりまとめる人も必要。専門職の人間が集まれば、他に追随されない独自のサービスができると田川さんは考えています。

“繋がりが生む新しい価値”

「この人とこの人を繋げればおもしろくなる」というセンサーが働くと言う田川さん。そして、その繋がりは自然とどんどん広がっていく、と言います。その中で、新しい価値を作っていくことができます。

今回の焚き火企画は、昨年11月の新京極公園でのおそとチャレンジのアンケートで、「公園で焚き火をしたい!」というお声を多数頂いた事がきっかけでスタートしました。生の火を囲み、揺れる火を見ながら、まちや公園の未来を語り合いたい、という想いがあるものの、公園で焚き火を行うには様々な規制があります。

規制に関わる様々な課題に対し、有識者や地域のみなさまからのアドバイスをもらいながら、一つずつ丁寧に対応していく。そして京都市や消防局の許可を得て、社会実験として行うことで、新京極公園の中心で、焚き火を囲みトークセッションをすることが実現しました!

今回のように、「公園で焚き火は無理」と決めつけるのではなく、固定概念を取り払い、なぜできないのかを把握し、改善する。そして、いろんな人が繋がれば実現できることは多い、とお2人は話します。
思ったことを口に出す。まずやってみる。トライしてダメだったら、また違うことにチャレンジする。フットワークが軽いお2人から、学ぶことが多く、刺激的な時間でした。

あかりを灯すことで、人が繋がる。人の繋がりが、未来を創っていく。そのことを実感できるような、心が燃えるようなお話を聞かせて頂きました!

【田川 広一(たがわ ひろかず)】
有限会社中村ローソク 代表取締役 / 和蝋燭職人・和繋ぎびと
京都老舗会会員
京都市伝統工芸連絡懇話会会員
京都商工会議所会員
京都市長推奨京の手しごと工芸品店
京都市輝く地域企業輝き特別賞受賞
京都市未来の名匠
一般社団法人 京都伏見十六会 代表理事
伏見みなとあかり実行委員会 代表
JAPAN WAX KYOTO株式会社 取締役
京都悠久の灯りプロジェクトメンバー
伏見美人プロジェクトメンバー
京都和繋ぎ会代表
◆経歴
1963年(昭和38年)2月10日生まれ
1981年(昭和56年)洛南高校卒業
1981年(昭和56年)京都日産自動車入社
1988年(昭和52年)中村ローソク入社
2007年(平成19年)代表取締役就任
2018年(平成30年)京都市未来の名匠認定
◆有限会社中村ローソク
1887年 本家より分家 創業 中村商店
1977年 会社設立 有限会社中村ローソク
有限会社中村ローソク
【大森 勇志】
みんなの想火京都 代表 / 株式会社Confiance 代表取締役
2008年同志社大学在学中に株式会社 Confiance代表に就任する。
2018年業績不振により当時行っていた事業を全て閉鎖し、スタッフが全員退職する。
「時々痛い目にあうことがあったとしても、疑うより信頼しきる人生のほうが豊かな人生を歩める」と思い、2019年7月社名を株式会社Confiance(フランス語で信頼)に名称変更。
2019年11月より事業を再スタート、2020年2月みんなの想火京都を立ち上げ代表に就任。
現在に至る。
みんなの想火 京都
株式会社confiance