2022年8月23日のハイパー縁側@中津は、綾 美津子さんをゲストにお迎えしました!
テーマは、「でこぼコいいじゃん!〜自分は自分でいい、と思える仲間探し〜」

ハイパー縁側@中津の開催場所の西田ビル。その3階、「ラフアウト中津」のコワーキングメンバーである綾さん。友人の紹介でラフアウトを見学し、立派なシェアキッチンに一目惚れしました。綾さん達が昨年立ち上げたウェブサービス『でこぼコ・ラボ』は、発達障害や不登校などの「発達でこぼコ」の悩みをもつ子の保護者が、同じように「発達でこぼコ」をもつ「子ども先生」に質問し、答えてくれるというサービス。

配信中のYouTubeで子どもの得意を伸ばそうという料理系のコンテンツがあり、「彼が、このキッチンで料理をしている姿がすぐに目に浮かんだ」と綾さん。「ここでやりたい!」と即決し、ラフアウトのメンバーになりました。

綾さんは大阪の茨木ご出身。子ども好きで高校生の時に「幼稚園の先生になりたい」と夢をもち、教育学部に進学します。そして、そのまま先生になると思いきや、不動産業界へ就職。就職活動時はバブル期で、不動産業界が楽しくキラキラしているように見えた、と話します。あっさり先生になる夢を捨てた綾さん。「時代に翻弄された〜」と振り返ります。

しかし、内定した途端にバブル崩壊。バブルの名残りを感じながら、イベントを企画したり、総務や経理を担当します。また、ローンの手続きなどの業務にも従事。自由で働きやすい会社ではありましたが、お母さんになってからは大変だった、と話します。周りに育児休暇を取った前例もなく、働く時間帯や環境に無理がありました。仕事と子育ての両立が難しく行き詰まり、12年間勤めた会社を退職することを決意します。

その後、建築士だったお父様が亡くなり、晩年取り組んでいた不動産管理会社を綾さんが引き継ぐことに。会社員時代のネットワークにも助けてもらいながら続け、今年で14年目になるそう。その仕事関係で、4年前に知り合った城戸さんが発達障害の子の支援施設を奈良に立ち上げます。城戸さんの同級生の小児科の先生から「発達障害の子を診断した後のフォローする施設がない」と聞いたのがきっかけでした。

「大阪から遠隔で、スタッフとして手伝ってくれないか」と声がかかり、発達障害をもつ親子に関わることになりました。子どもに対するセラピーは、言語聴覚士さんが担当。綾さんは保護者向けのワークショップやイベントを開催しながら、綾さん自身も発達障害について勉強を始めます。

人の表情が読み取れず、コミュニケーションが苦手な子や、音に敏感で人混みでは体調不良になる特徴がある子。一方、こだわりが強く、自分の好きなことには寝食忘れて打ち込むことができる。「でこ(得意)」と「ぼこ(苦手)」の差がとても激しいので、周りの子たちに受け入れられにくく、学校でうまくいかないケースも多いと言います。

学校では、特別支援教室があるものの、専門的なケアを受けられるわけではありません。保護者があちこち廻って調べ、先生たちに伝えたり、療育施設を探したり。ノウハウがないので手探り状態で、困り果てている親子を目の当たりにします。

綾さんがお手伝いしている支援施設では、オンラインでのサポートはなく、支援を受けられない親子が50人以上待っているという状況でした。発達障害のことを知っていくうちに、「今思えば、自分の娘も発達障害だったのかも」と感じた綾さん。「他人事とは思えず、このままほおっておけない、この状況を何とかしたい!」と、教育学部で先生を目指し、勉強していたときの気持ちも蘇ってきたそう。

親自身、子どもの特性や反応が分からないという悩みを抱えています。子どもが「何を考えているのか」「どう感じているのか」、それを少しでも解消したい。専門家を間に挟まなくてもやりとりができたら、という思いから、『でこぼコ・ラボ』が生まれたと話します。

“でこぼコ・ラボ”

「当事者にきいてみよう」という発想で、「発達でこぼコ」をもつ小学3年生から中学生の「子ども先生」が、保護者からの悩みに答えます。まず、悩みをもつ子と同じような特性を持っている「子ども先生」とマッチング。そして、「子ども先生」は、言語聴覚士さんとのセラピーの時間に、言語聴覚士さんにフォローしてもらいながら保護者からの悩みに答えていきます。

「うちの子はうまく言葉にはできてなかったけど、自分なりに考えて行動してたことが分かった」と、保護者の気づきがあったり、綾さん自身も驚くアドバイスが返ってくることもあるそう。
「子ども先生」も、質問に答えることで、自分のことを俯瞰的に見ることができます。また、人の役に立っていることも実感できるので、「子ども先生」にとってもいいことだ、と綾さんは笑顔で話します。自画自賛ですが、「すごいシステムなんです!」と綾さん。しかし、このシステムを広めるのに苦労していると言います。

広報活動をしている中で、「発達でこぼコ」がきっかけで、不登校になっていると話をしてくれたお母さんのグループと出会います。そこで、綾さんは“リアルな声をきくことがすごく大事”と気づきます。専門家ではないので、「でこぼこ」の「ぼこ」の部分を直すことができないけれど、悩みや話をきいたり、気持ちを共有することで、親御さんがどんどん元気になっていくそう。

「そのままでいいやん」と伝えるだけで、学校に行けていないことを認めることができ、責めなくなります。親が元気になると、子どもも元気になり、「“元気の渦”が廻るんです!」と、綾さん。この“元気の渦”をデジタルの力を使って拡散できないかと、考えています。

必要な人にこのサービスが届くには、やはりママ友ネットワークが効果的なのではないか、という意見も頂きました。接点はアナログで、サービス自体はデジタルで広がっていくのがいい。そのアナログな接点を増やすには、大手新聞より、地域広報誌などの方が認知は広がるのでは、というアイデアも。

現在、「でこ(得意)」の部分をもっと伸ばすプロジェクトも進めているそう。このプロジェクトもみなさんに知ってもらいたいので、アナログとデジタルの組み合わせを有効に使いながら広げていきたい!と意気込みを教えて頂きました!

明るい笑い声が印象的な綾さん。柔らかな物腰の中に、困っている親子の力になりたいという強い信念を感じました。
リアルな悩みに寄り添い耳を傾けながら、画期的なサービス『でこぼコ・ラボ』が必要な親子に届くことで、“元気の渦”がそこら中に渦巻き、大きく広がっていく未来が楽しみです!

【綾 美津子】
合同会社アンラベル 共同代表
大学卒業後、マンションデベロッパー、株式会社リクルートコスモスに入社。
関西で初めて育児休暇を取得するも、子育てと仕事の両立に行き詰まり、退職。
建築士だった父が亡くなり、晩年取り組んでいた不動産管理会社を引き継ぐ形で独立。
子育てが落ち着いてきたタイミングで、たまたま、知人(アンラベルの共同代表)が立ち上げた発達障害支援教室を手伝うことに。
そこで「発達障害」という言葉に初めて出会い「自分の娘も発達障害だった気がする」
と思ったこと、子どもたちがすっかり元気をなくしていること、親たちが色々な悩みを抱えていることなどに気づき、ITやデジタルで解決できるサービスを作れないか?と2020年にアンラベルを立ち上げる。
コロナ禍、zoom打ち合わせを80回経て、webサービス「でこぼコ・ラボ」を2021年春リリース。
「でこぼコ・ラボ」は発達障害の子どもを育てる親たちが同じ特性をもつ「子ども先生」とマッチングされ、質問ができるデジタルサービスです。
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