2022年8月19日のハイパー縁側@新京極は、新田雅美さんと小出浩孝さんをゲストにお迎えしました!
テーマは、「誰もが守りたくなる、来たくなる新京極公園へ」
昨年より、京都市では「公園利活用トライアル事業」がスタートしています。行政の力だけではなく、企業や地域の方々と共に魅力的な公園を作ろう、という取り組みです。

昨年の11月に、その一環として、『劇場・映画文化と未来の風景にふれる日』と題して、新京極公園を舞台に、まちあるきアートギャラリーや今昔写真展などを行い、新京極の映画文化や歴史などに触れることができるイベントを開催。新京極公園の歴史を大切にしながら、どのような公園にしていきたいかを考える機会となりました。

今年は、開催日程も増え内容もバージョンアップ。『新京極夏祭り〜150年後に残したいまちの文化と公園の風景にふれる日〜』というテーマで、8月19・20・21・27・28日の5日間、開催されます。新京極公園とろっくんプラザの二箇所で、古着青空市・灯りイベントなど、様々な催しを行う予定です。

そして、この『新京極夏祭り』でのトークセッション最初のゲストは、新京極公園の西側に隣接する錦天満宮の禰宜である新田さんと、北側のダイアモンドビルに25年間お勤めの小出さん。錦天満宮で行われる中之町の町内会の会合で知り合ったお2人は、新京極公園のすぐ隣で、公園の変化を日々感じています。

横浜ご出身の新田さんは、お父様のご実家が錦天満宮だと話します。宮司であるお父様がご高齢になってきて、3年ほど前に神社に奉職することを決意し、京都に帰ってきました。横浜では薬剤師として働き、女性の健康サポートなど、地域の方の健康を守ってこられた新田さん。現在は、神職として、人々の健康や幸せを祈り見守っています。
子供の頃、夏休みやお正月に横浜から帰省して目にする新京極公園界隈は、子どもの姿も少なく、寂しくて怖い公園だったと振り返ります。

同じく小出さんも、子どもの頃は雰囲気も治安も悪く、いいイメージが少ない公園だったと話します。時にはホームレスの方が血まみれで倒れていたことも。

現在のような平和な公園になったのは、行政と地域の努力のおかげだ、と言います。まずは、成人向け映画館が縮小することになり、並ぶお店が変わりました。そして、ゴミ回収の回数を増やしてもらうなどして、どんどんよくなっていったそう。
ひとりひとりが街の中の公園を、自分の居場所や庭だという感覚をもてば誰も汚さないし、注意看板も必要ない。どうやってその意識をもってもらうかが課題だ、と小出さんは考えています。

そんな小出さんは、ダイアモンドビルの専務取締役を務めながら、新京極公園愛護協力会の会長も務めています。2年ほど前に、新京極公園と錦天満宮の境にある門の前で、死にかけていた子猫を保護したのが始まりだった、と話します。

その子猫は病院へ連れて行き、命が助かり小出さんが飼うことに。しかし、公園を見渡すと、他にも野良猫が住み着いていることに気づきます。小出さんは、餌箱を作り、餌をあげていました。すると、ある時、その餌箱が壊されていました。野良猫をよく思わない人は、もちろんいる。このままじゃ、保健所に通報され殺処分になるかもしれない。餌をあげることが、猫を守ることにはならない、と感じます。

野良猫にむやみに餌を与えることは、条例で禁止されていますが、繁殖制限を施した猫に対しては、給餌することは認められています。そこで、京都市と一緒に猫を守っていく必要があると考えた小出さん。猫が、一代限りの一生を全うできるように、捕獲して手術を施し、元の場所に戻すという「まちねこ活動」を開始しようとします。しかし、それには行政の手続きや、町内会の承諾が必須です。

その町内会の承諾を得ることが、かなり大変だったそう。困り果てて、中之町町内会の西川さんに相談します。すると、すぐに町内会のメンバーに話をしてくれ、思いを伝える場を提供してもらえ、次々と承諾を得ることができました。

「町内会の方々は暖かい人ばっかり」とお2人は口を揃えます。下の名前で呼び合い、すぐに仲良くなれたと話します。しっかりと目を見て真剣に話をきいてくれ、ウエルカムな雰囲気の中之町町内会。

小出さんが、自分の利益にはならないこの活動を熱い想いのまま続けてこられたのは、“中之町の仲間”のおかげだと力強く話します。励まし、協力してくれる仲間を得られたことが、かけがえのない財産だと感じています。

“まちへの愛着”

そして、どんな活動でも一時的なものでは意味がない。持続させていく為には、仲間を増やすことが必要。町内会など関係なく、外部の力を受け入れて人数が増えればアイデアも出るし、自分たちが去った後も繋がっていくと考えています。

新田さんが、動物という共通の話題として、新京極を見守り続ける狸さんのお話を教えてくださいました。
江戸時代、この辺りはお寺がたくさん並んでいました。ある日、境内で息絶えていた3匹の狸を、お寺の方々が暖かい気持ちでお祀りしたそう。錦天満宮でも、その1匹の六兵衛さんという狸の御霊をお預かりしていた時期があったと言います。現在は、新京極公園を囲うように、六兵衛さん・七兵衛さん・八兵衛さんがそれぞれの場所で祀られています。

芸能や商売繁盛の神様である狸。詳細は未だ分からないことも多いですが、まちの活性化を願い祀られたのではないか、と新田さんは考えています。狸さんに導かれるように文化が栄え、新京極150周年の歴史で変化する中でも、狸さんにずっと守られ続けている公園なのかと思うと、胸が熱くなると話します。

治安が悪い時期には、錦天満宮でお供え物が盗まれたり、ゴミを捨てる人も多かったので、新京極公園と錦天満宮を繋ぐ裏門は常に閉まっていました。しかし、昨年の11月のイベント時には、その門を開放し人々が行き来できる本来の姿となりました。今後は、公園と神社、行き来しやすい環境を作っていきたいと新田さんは言います。

また、中央の噴水も復活すれば楽しい、と小出さんも続けます。誰もが使える清潔なトイレ、喫煙所がある新京極公園。給水スポットを設けることができれば、さらに過ごしやすくなるというアイデアも。

公園は、まちの顔。誰もが過ごしやすく、地域の歴史や変遷を知ることができる公園を作れば、興味が湧き、まちに愛着をもつことできる。その為に、発信を続けていくことが必要です。

とても優しい口調で誰をも包みこむ新田さん、強い目力で熱い想いを伝える小出さん、偶然にも同じ亥年のお2人。見守ってくれている狸さんを感じながら、これからも仲間も増やし、突き進んでいって欲しいです!

 

【新田 雅美】
錦天満宮 禰宜
横浜出身。外資系製薬会社、調剤薬局において管理薬剤師として勤務し、地域の健康支援にも力を入れ活動していたが、錦天満宮を継承する実家で神職として奉職する決意をする。
神職としても今までと同じ気持ちで人との繋がりを大切にしながら皆さまの幸せを心から願っています!
錦天満宮
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【小出 浩孝】
ダイアモンドビル 専務取締役 / 新京極公園愛護協力会 会長 / 新京極まち猫の会 会長
25~26年ほど前よりダイアモンドビルにて勤務。
新京極公園にたむろするガラの悪いオッサンたちと仲良く過ごす。
ビル周辺に住む野良猫が、一代限りの一生を全うできるよう、まち猫活動を開始。
中之町町内会の仲間たちに支えられ、街の希望となる公園づくりを目指す。
新京極ダイアモンドビル