2024年3月26日のハイパー縁側@淀屋橋は、冨永剛さんをゲストにお迎えしました!
テーマは「To・gather〜地域と共につくる、つどいの場所〜」
ハイパー縁側@淀屋橋が行われている『GAS STAND』。当初から「焚火をしてみたい」と熱望する声があがっていましたが、本日ついに実現。焚火のぬくもりを感じながら、ビールを片手にワイワイと賑わいます。
「オフィス街で焚火って、いいですね」と話すゲストの冨永さんは、東急不動産SCマネジメントに所属し、あべのキューズモール・もりのみやキューズBASEの施設運営全般に携わりながら、地域連携業務を推進しています。
商業施設と地域が連携するという考えは、みのおキューズモールから始まった、と冨永さんは言います。20周年を迎えたみのおキューズモールは、箕面の地域の人々と共に育ってきました。子育てサポートをする法人と一緒に地域の子育てを応援できないか、と親子が日常的に訪れる事ができる「つどいの広場」を開設。スタッフが常駐し、地域の子育て世代のサードプレイスとなっているそう。
ただ、みのおキューズモール以外の店舗では、テナントが入り収益を生むスペースを地域に開く場にする発想はなかった、と言います。そんな中、コロナウィルスが大流行し、人々が出歩かなくなってしまいます。商業施設は、客を集めテナントの売り上げをあげる事が主な仕事。しかしそれができない、どうしたらいいのか、と悩んだ時に、“原点に帰った”と言います。「地元や地域の人々と何かできるんじゃないか」と、考え方を大転換。
結果的に、地域連携の動きが箕面を出発点とし、阿倍野や森ノ宮に伝播し、会社全体に広がっていったと語ります。トップダウン型ではなく、みのおキューズモールの現場から始まったボトムアップ型であり、特殊ではないかと冨永さんは感じています。
そして、「Gather(つどい・交流)× Together(共に)」=「To・gather」という造語を生み出し、コンセプトとして掲げています。「出会い」「体験」「交流」を目的とした「つどいの場所」を地域の人々と共につくり、地域活性化に貢献。みんなの「こんなのやってみたい」を随時募集しています。持ち込み企画に対して、「No」と言わない冨永さんの元には、柔らかい案件も含め、多種多様な案件が舞い込んでくるそう。
冨永さんは、地域の方々と「一緒にどうつくっていくか」というスタンス。意識的に「No」を言わないようにしているのではなく、気がつけばそうなっていたと語ります。各方面を調整しながら実現していくのが、自身の役割だと考えています。
「冨永さんに相談すれば、絶対に実現できる」という都市伝説も広がっているのだとか。例えば、「子どもの声の館内放送があれば面白い!」という声があがり、お子様の声で館内放送を流していた時期もあり大好評でした。マルシェや体験会など、様々な「こんなのやってみたい」が実現し、地域社会が盛り上がっています。
“にやっ”
冨永さんは普段から、繋がりや知らない事から生まれるものがある、と考えています。世の中、知らない事だらけ。地球上の80億人みんなと知り合えるわけではない。だからこそ、1人でも1つでも知らない事と出会いたい。自分の理解が全てではないし、知らない事を知る事で、仕事や人生の「面白い」に繋がったらいい、と語ります。だから、阿倍野や森ノ宮を飛び出し、神戸など色々な場に出向いて、繋がりを求めています。知らない事を発見できたら、「こういう世界もあったんや」と「にやっ」としてしまうそう。
現在、積極的に活動中の冨永さんですが、もともとは、出不精で臆病で人見知り。そんな自分が嫌で、反動が出ているのかなと自身を分析します。ただ、留学や旅行には学生時代から興味があったので、知らない文化や人の流れなどに触れてきた事が今に繋がっているかもしれないと語り、「後付けですけどね」と笑います。
冨永さんが知らなかった事の1つに、阿倍野の魅力を発信する団体『あべのって』の存在があります。最初は、何が何だか分からないし、つかみどころがないなと感じていました。関わっていくうちに、年代や職業を問わずに交わる事ができる、フラットでニュートラルな場だと気づきます。誰かがやりたい事があれば、そっと背中を押し、遊びや仕事にしていく。
そんな感覚や雰囲気に影響を受けた冨永さんは、代表の平川さんに相談し、『もりのみやって』もスタート。森ノ宮界隈にも活動を広げています。何が生まれるかは分からない。生まれないかもしれない。ただ楽しんで来てくれる人がいる。だから、常に、“場”だけは開け続けておく事を大切にしています。そこから、「何か生まれるきっかけになればいい」と考えています。
商業施設として、テナントを埋め、収入を生む活動とは、全く異なる地域連携の活動。この活動に対して、社内でどう立ち回るのか・どのように評価するのか、答えはまだ出ていません。そんな中でも、心がけているのは、「今、取り組んでいることが1番だ」と思い込み、地域連携の活動をするのではなく、冷静に引いた目でみながら、バランスを取る事。
そして、バランスを取りながら同じ悩みを抱える他社との交流の中で、答えを見出していきたい、と考えています。また、地域連携に目を向けて運営するテナントの方もいるので、今後は共感してくれるテナントとの連携を視野に入れています。「テナントから見た地域連携」「商業施設から見た地域連携」が合体したら、新しい商業施設ができるのではないか、と期待が膨らみます。
冨永さんは、まちの中の商業施設の役割は地域によって異なる、と指摘します。それが何なのかを見つけるのが、自分の仕事だと捉えています。施設を継続するために、単発的に売り上げを上げる事はもちろん大切。しかし、3年後、5年後、さらには何十年後、「このまちに、この商業施設があってよかった」と思ってもらえるために、今何をすべきなのか。さらに50年後、100年後のまちを常に見据えるようにしています。
何をすべきか考える時に、社内だけでなく、その地域の方々や同業他社と考えを共有する事で、地域が活性化し、違う動きが生まれ面白くなっていく。そして、地域連携しながらも収入に繋げる事ができれば、また違う世界が広がる。そのような世界に近づくような活動を紡いでいきたい、と考えています。
何もしなかったら、オフィス街にあるただの空間でしかない『GAS STAND』。大きい事をしているわけではないけれど、“好き”が集まる事でできる空気感。ここから何かが生まれ実現していく。そんな空間に感銘を受けている、と語ります。冨永さんは、出来上がった商業施設に運営で入る立場。
しかし、今後、商業施設の在り方として、建設する時点から収支構造や建築コストを考えるべきだ。すると、今までにない面白い商業施設が生まれる、と感じています。この空間に対し、ビル建設後も「やりたい」を叶えられる体制をずっと想い描き続けてほしい、と願っています。
「なるほど…これがハイパー縁側かぁ」と、しみじみ語る冨永さん。聴いているのか聴いていないのか分からない、ゆるい感じ。「はじめまして」が、そこら中で自然と生まれる雰囲気を肌で感じ、「商業施設でも、気ままにできたら面白い」と、感想を述べられました。
最後に、地域や枠組みに捉われることなく、みんなで繋がれるような環境を整えられるように遊んでいきたい、と語って下さいました!これからも、新しい発見に「にやっ」としながら、未来のまちを面白く豊かな方向へ導く、冨永さんの活動に注目したいですね!