2023年12月13日のハイパー縁側は、前川壮太(まろ)さんをゲストにお迎えしました!
テーマは「愛情表現のハードルを下げ、まちなかに愛とシアワセを表出させる。」
まろというお名前は職場で新入社員の時つけられたあだ名なのだそう。普段は鉄道会社に勤務をしており、主に不動産の開発、いわゆるまちづくりの仕事をしています。
まろさんのご出身は北摂の吹田。高校を出て、大学時代は法学部に入ります。その後、公共政策大学院に入って観光・まちづくりをやっていくうちに、結局キャンパスにほぼ居着くことなく、フィールドワークとして滋賀の長浜の方で観光協会や商店街連盟のおっちゃんにかわいがってもらう生活を送っていました。
その中で、エリアマネジメントに関するまちづくりの授業があり、教授に誘われて行ったシンポジウムで、現在の会社の役員に出会います。そういう場ではきれいな言葉が飛び交いがちですが、その役員の口からは、財源の話をはじめ世知辛い事もつまびらかに話してくれたそう。そんな人は他におらず、この人が役員になれているこの会社は絶対面白いんじゃないかと惚れ込みます。就活をして、結果現在の会社に入社することに。
現在、入社6年目。これまでは駅ナカのテナントのお仕事やシェアオフィス事業の立ち上げ、なんばエリアのまちづくり方針を作ったり、開発用の土地を買う仕事をしたりとデベロッパーとしての仕事をしています。あべのってのみなさんとも仲良しです!
まろさんがシェアオフィス事業の立ち上げをしていた時、仕事が忙しくなかなか話も前に進まずしんどかった時に、心のオアシスが必要だと感じたのだそう。そこで残業中に、オフィスで“ちょっといいお茶”を淹れていたまろさん。一人で飲むのも忍びなく、年の近い先輩とかを誘ってお茶会をしていたのがプロフィールにもある「場リスタ」の前身でした。なので、お茶が最初でコーヒーにはまったのは実はその後でした。
コーヒーに出会ったのは、なんばのまちづくりビジョンを作る仕事をしていた時でした。日本橋駅のそばに、バリスタ世界チャンピオンの方がお店を開けたと聞いたまろさんは、そんなすごい方がなぜ「なんば」に?とコーヒーが苦手ながらもお店に行きました。
そこで飲んだコーヒーに、「コーヒーが苦いものという概念をまるっきりひっくり返された」と話します。生まれて初めて、セクシーってこういう味のことを言うんだと思わされるような色っぽいコーヒーに出会ったそう。その経験を経てコーヒーを淹れ始め、最近はまちなかでやっています。
ハイパー縁側でも、豆を挽いてコーヒーを淹れながらお話をしてくださいました!今回はまろさんが淹れましたが、来てくださった方同士で「コーヒーの淹れ合いっこ」をしてもらっています。
まろさんは田中元子さんの本を読み、フリーコーヒーがすごく面白いと感じました。自身もコーヒーにはまり、外との接点を持ちたいと思ってコーヒー仲間で話をしていると、日本橋の面白いお店の人がきっかけで屋台を作る事になるなど、始めるチャンスがありました。
ただ、最初はまろさんが無料でふるまうだけ。面白かった反面、どこかしっくりこなかったと話します。それは結局、コーヒーを淹れることに夢中になっていたからだとまろさんは振り返ります。誰かとコミュニケーションをとるのがフリーコーヒーのイメージ。田中さんは淹れるのに夢中になるのが嫌だからエアロプレスという手法を取っていたのに、まろさんはハンドドリップという、何度もお湯を注がなければいけないやり方を取っていました。
ただ、楽しかったのは事実なので、どこが一番心を踊ったのかを振り返ると、一人だけ「俺もやってみたい」と言ってくれた人が思い浮かびました。その人にケトルを渡した瞬間が、自分の中で何か「おっ!」となった瞬間だったと話します。
その人が淹れてくれたコーヒーもとてもおいしいものでした。ならば「これごと人に振ってしまえば、レシピは自身が説明するし人と話せるのでは」と考えました。それで“淹れ合いっこ”をするようになったのです。
たとえば、見ず知らずのプロのバリスタが淹れるコーヒーと、関係性が既にできている大切な人に淹れてもらうコーヒー。同じレシピで淹れてもらった時にどちらがおいしいか?それは大切な人から淹れてもらったコーヒーなのではないかとまろさんは考えます。
“大切な人に、笑顔を届ける”
クリスマスに商店街に行った時は、通りがかったご夫婦にコーヒーの淹れ合いっこをしてもらい、そこでお互いにメッセージを書いたステッカーを渡してもらっていました。商店街のおっちゃんと寄ってたかって「愛が足りない、書き直しだ」などと周りから言いながら書いてもらうと、奥さんは「結婚して初めてこんなメッセージをもらった」と話したのだそう。旦那さんにコーヒーを淹れてもらうのも初めてでした。心理的なハードルを下げて、大切な人に笑顔を届けられるのを見た時に、これがしたかったんだ!とまろさんは感じました。
愛情表現は、夫婦やカップルに限らず職場の同僚やお友達同士でもでき、色んな種類があります。しかし、友達だとしても家に上げる、スキンシップを取る事は日本人にとって心理的なハードルがあります。
でも、相手に淹れてもらったコーヒーを飲み、相手にコーヒーを淹れるのはそんなにハードルは高くないと考えます。
やろうと思った時に、装置が必要だったりと物理的なハードルはあるので、それを下げて色々な人たちが淹れ合うようになったら、誰かにお疲れさまやありがとう、あなたの事を大事に思ってますといったメッセージをもっと簡単に届けられるようになります。送った側は何気なくても、送ってもらった側はその一言・その一杯だけで一日ごきげんに生きられたりします。
まろさんの手帳にも、これまで色んな人に書いてもらったステッカーやメッセージが貼ってあります。今日も緊張して来たそうですが、これを見て大事な仲間と一緒に過ごした時間を思い浮かべて、「大丈夫だ、自分は最強だ!」と思えるそう。
コーヒーをきっかけに、たとえその場限りのご縁だったとしても、ちょっと幸せになる人たちがいる。そんな機会が多ければ多いほど、このまちに受け入れられているんだという幸せを感じる機会が増えます。一人一人が笑顔で歩いているだけで、来た人も幸せになれます。それがまちの価値なのかなとまろさんは考えます!
現在は本業以外でやっていますが、お仕事でもそういう場所をどんどん作っていけたらとは考えているそう。もともと電車は何のために走っているんだろうと考えた時、誰かに想いを届けたり、人と人との縁を繋いだりするために、わざわざあんなものを敷いて長い距離を走っているのではとまろさんは考えます。
最後に今後やってみたい事をお聞きしました。バリスタごっこを色んな場所でやりたいのもありますが、「こんな事やってみたいと思う他の人の力になれたらな」とまろさんは話します。
まろさんがこれまでにさせてもらった場所で、企画を仕掛けている方もいます。他の会社のオフィスでもバリスタごっこをさせてもらったそうですが、他でもしたいと考えていて呼んでくれたら、休暇が取れればすっ飛んでいきたいと話します。色んなオフィスに呼んでもらい、社内バリスタの仲間を増やすことが野望としてあります!
そんな仲間が増えれば、もっと大阪がおもろくなると考えています。こうやって頑張って支え合う関係が増えたらいいなとお話されました!
寒い中でしたが、まろさんの愛情にあふれるコーヒーとお話でハイパー縁側の空気も温かくなりました。これからもコーヒーをきっかけに、幸せの輪が広がっていくことでしょう!
場リスタ
ミナミの某社の自称「場リスタ」。執務室よりも給豆室での遭遇率高め。
オフィスの廊下でいいかおりがするときは、だいたいコーヒーやお茶を淹れてるこいつの仕業。ときどきなかまを集めて執務室内でお茶会を開き、周囲の顰蹙を買いながらも当人はシアワセに浸っている。
社内だけでは飽きたらず、コーヒーグッズを持ってまちに出ては、来た人どうしでコーヒーを淹れあいっこする「バリスタごっこ」に手を染める。照れくさそうに大切な人にコーヒーを淹れる様子を見て悦に浸る趣味を持つ。
本業はまちづくりなのに、嫌いな言葉は「まちづくり」と「お客さま」。「主客の境界線のない場を育てる」がいまのテーマ。