2023年10月18日のハイパー縁側は、徳永虎千代さんをゲストにお迎えしました!
テーマは「長野と大阪で共創するチャレンジ」

現在お住まいの長野を朝6時に出発し、大阪に来たという徳永さん。
この日は一日、中津ブルワリーでビール醸造をしていました。りんご農家である徳永さんは、今回フレーバーとしてりんごとコラボしたビールをつくりました!

会場にも、県のオリジナル品種である秋映え、信濃スイート、信濃ゴールドの「りんご3兄弟」と呼ばれるりんごを持ってきてくださいました。

徳永さんのりんごの作り方には特色があります。一般的なりんごは、果実周りの葉っぱを摘み取って果実を赤くするといいます。なぜかというと、スーパーで並ぶときに見た目重視で選別されていたからです。
しかし徳永さんは葉っぱを摘み取らず、最後までりんごに光合成をさせています。それにより色にはばらつきが出ますが、甘さや栄養度が高く、おいしさが増した濃密なりんごになっています!

現在は株式会社フルプロの代表として、フルプロ農園を経営されている徳永さん。フルプロのフルは「フルーツ」。プロは「プロフェッショナル」と地域のプロデュースをしていきたいという意味で「プロデュース」、生産者であるという意味で「プロダクト」の3つの意味を込めています。

地方の農産業の課題として挙げたのが、天候が不安定であること。これが農産物に多大な影響を及ぼしています。
ひとつは、春先がだいぶ暖かくなってしまい、木が勘違いして花を咲かせてしまうこと。その状態でまた氷点下など低温状態になって霜が降りてしまうと、花が枯れてしまいます。
またもうひとつが、夏の猛暑。花面の温度が50度を超えてしまうとやけどのような状態になり、劣化してしまいます。そうなると、出荷できないB級品のりんごがたくさん出てしまうのです。そのりんごを活用できていないことが課題です。

そんな課題を抱えている中で、長野県庁から紹介したい案件があると話を聞きました。その先に中津の山田まりこさんとつながります。この日の2週間前にZoomでお話してすぐに「10月18日に来れますか?」と誘われ、今回のハイパー縁側につながりました!

徳永さんのいる長野県長野市では、4年前に台風19号による大きな災害が起きました。河川の堤防が決壊し、徳永さんの地域はなんと4mも水に浸かってしまいました。
りんごの木は樹高3-4mほどしかありません。7年前に、耕作放棄地を再生しようと徳永さんが植樹した木も全て、水に巻き込まれてなぎ倒されてしまい、りんごも地面に大量に散乱するという大被害を受けました。高価な農機具や軽トラックも被害に遭いました。

1件の農家さんでも被害額にして5,000万を超えるといわれる、本当にいいことがない苦しい状況。ですが激甚災害に指定され全国的に注目されたこともあり、SNSで発信するとすぐに50人、100人と協力してくれる人が集まってくれました。災害史上最速で復興したのではないかとも言われており、令和の時代の新しい復興のあり方が見えた災害ではあったと徳永さんは振り返ります。

りんごの木が2日ほど水に浸かってしまったので、徳永さんは木が死んでしまったのではないかと心配していました。しかし先人の知恵で、この地域は沼地があり、過去にも水害があったことを踏まえてりんごを植えたということがあり、木は強さをもっていました。
そしてもう翌年には、きれいにりんごを実らせることができたそう!みなさんの手助けをいただいたこともありこのような成果になったと話します。

“この景色を守りたい”

災害を機に、高齢の方を中心に離農してしまった方も大勢います。でもその中で、辞める方が多いからこそ、ここで私たちが存続してその人達の畑もお借りして担っていく必要があると徳永さんは考えます。産地のこの景色を守りたいという思いがあります。

生まれ育ちが長野である徳永さん。秋になるとりんごがなっている景色が失われるのはもったいない、それが長野のアイデンティティだという思いがあります。自身が途絶えさせないようにがんばるべきだなと考えています。

大阪のような都市だと、長野の水害のようなこれだけ大きな災害が起きても、次の日にはニュースにもされなくなってしまいます。長野県内では1年中触れられていても、都市ではすぐ風化してしまい覚えている人も少ないと徳永さんは感じています。

それでも自分たちは生産し続けるべきだと感じています。また、今回のように都市に来て自分が発信することも大事。消費地の人たちにも何かを感じてもらったり、できることをしたいと思ってもらえるように、つながりが大事になってくると考えています。

生産と並行して、顔を広げていくのが大事なのではないかと思っている徳永さん。これまでにはNHKのアサイチの企画でも扱ってもらったことを始め、なんとテレビに100本以上も出ているそう!

規格外品をできるだけ正当な値段で販売していくという意味では、今回のビールづくりのほか、関西の有名なベーカリーさんからもお引き合いをいただいたりしています。露出しているからこそこういったお話が来ているのかなと感じています。

来場者からも、りんごが定期的に送られてきて、収穫時期には3-4日程度の体験もできて農家さんを応援できる、りんごの木のオーナー制度もいいなという意見が出ました!

最後に、大きな災害や天候の影響もあって大変な状況にはありますが、我々もがんばりたい。応援だけでなくて、ぜひできた収穫物も楽しんでもらい、そしてつながってくれると嬉しいとお話されました!

徳永さんのりんごに、地域にまっすぐに向き合い続ける姿勢に、心打たれ刺激をたくさんいただくお話でした!

【徳永 虎千代】
株式会社フルプロ 代表取締役 / フルプロ農園
平成4年6月20日生まれ。長野市赤沼で100年続くりんご農家に生まれ、父親の農家引退を期に農地を受け継ぎ、4代目徳永農園の農園主となる。農地を受け継いですぐに高密植栽培を導入し、その生産性と高効率にチャンスを感じ法人化をする。耕作放棄地対策や復興の活動、りんごを活用した新たな挑戦を積極的に取り組みメディアからも注目されている。

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