2023年10月10日のハイパー縁側は、MKM(杉江明寛)さんをゲストにお迎えしました!
テーマは「MKM〜移り行く様こそ美しい〜」

杉江さんは大阪の阿倍野ご出身。趣味でサーフィンをされています。中学高校のころに先輩の影響でかっこいいなと思い、モテたいなという一心で始めたそうで、大会にも出ていたりしたそう。社会人になってからもいける時は週1回、日曜日に行ったりしているそうです。

杉江さんは現在、本業で刺しゅうをされています。作品は自然からのインスピレーションを受けていて、サーフィンの話もありましたが海からの影響は大きいと話します。山も大好き、動物も好きです。

刺しゅうは元々、杉江さんの母が創業して家業としてやっていました。仕事は春が学校の新学期ということもあり繁忙期。そこでたまたまアルバイトがてらお手伝いを始めるようになって、そこからなぜか自分も本業としてやるようになっていたそう。

最初は機械でやる刺しゅうをやっていましたが、始めて10年ほど経った時に、同業の先輩から「刺しゅう屋やるんやったら、ミシンで自分の手でやる刺しゅうを覚えないと一人前と言われへんで」と言われます。

そんなことはないやろと思っていた杉江さんですが、ある時に東京のイベントで刺しゅう屋仲間が集まる機会がありました。
そこにミシンを上手にする年下の人が高知から来ており、ライブ型で刺しゅうを披露している所にすごい人だかりができていたのだそう。作品が完成した時には、女の子たちの黄色い歓声が上がりました。

それを横で見ていた杉江さんは「これはやらな!」と思ったそう。サーフィンを始めたのと同じ理由で、そこからミシンを使った刺しゅうをするようになりました。

子供時代は苦手だなと思っていたミシンですが、大人になってやってみたらいけないことはありませんでした。杉江さんは元々絵を描くのは好きだったので、やりだすとうまくできるようになってきてハマっていったと話します。

ただ、先輩は技術のさわりだけしか教えてくれず、簡単には教えてくれないのだそうです。それでもわからないなりに、自分で試行錯誤しながらやっていると「先輩が言っていたのはこういうことか!」ということに出くわす時があるそう。その時によっしゃーとなる楽しみが大きくのめり込んでいったそうです。

杉江さんは刺しゅう屋さんとしてだけではなく、アーティストとして刺しゅう作品も制作しています。子供の頃から車の絵、特にフェアレディZを描くのは好きで毎日描いていたそう。現在はMKMという名前で作家活動をしています。

アーティスト名のMKMとは、「めっちゃ危険マル」の略だそう。マルとは、杉江さんの家にいたハスキーの名前。すごくいいやつだったが噛んだりするので危険だということで、それがきっかけでMKMというアーティスト名にしたそうです。

今回のハイパー縁側の登壇にもつながった、巨匠(山田廣之信さん)とは10年以上前に徳島の手作りアートバザールに出展した時に、隣のブースにいて出会いました。最初は強面で巨匠にビビっていたという杉江さんですが、声をかけてくれて、巨匠のつながりのおかげで色んなクリエイターのお友達がたくさんできたと話します。

杉江さんは2023年の茶屋町で開催された100万人のキャンドルナイトでは、キャンドルアワード2位にも輝いています!

また、2024年5月にはニューヨークでも出展される予定があります!アーティスト4-5人で、キングコングの西野さんも出展していたギャラリーを借りて合同展を開催します。行くならまずロサンゼルスまで行って、そこからニューヨークまで5,000キロ横断してみたいという展望も描いています!

刺しゅうのルーツは国によって違い、また日本の中でも違うものがあります。杉江さんがやっているのは元々アパレルからの流れをくむもの。
使っているのは横振りミシンというミシン。これは元々、アメリカで穀物を入れる麻袋を縫うためのミシンがあり、それを日本人が持ち帰って、改造したら刺しゅうに使えるのではないかと考えて、いじくりだしてできたのが始まりなのだそう。アメリカから仕入れ、日本で開発されたミシンなのです。

一般的なミシンと違って押さえもない、下の送りもないもの。針が当たったら同じところを縫うだけ。それを自らの手で動かしながら図柄にしていきます。ミシンは鋳物製。作るときにはまず鉄の塊をアメリカのアリゾナの砂漠に埋めます。何年かして、錆びてボロボロになったものをまた掘り出して、それを削って仕上げるのだそう!

これにより鉄の中の不純物を取り出すことができ、仕上げるとひずみがないのだそう。年月をかけてつくる昔の人の知恵です。杉江さんのミシンももう80年ほど経つそうですが、未だに現役です。部品が壊れても未だに作っているメーカーさんがいて、アメリカから仕入れて手に入れることができます!

“世の中のスタンダードをつくる”

性格的に、あまのじゃくなところがあるという杉江さん。自分はちょっとひねくれていると話します。
刺しゅうで先輩から教えてもらったことを実践しながらも、自分が世の中のスタンダードをつくりたいというところがあります。自分なりにやってみて、例えばこの縫い方で光の当たり方でこんな見え方がある、と見えてきたらその部分を伸ばしていきたいと話します。

ただ、自身の作品は一般ウケがあまりしないそう。アーティストとしては売れてなんぼやということもあるかもしれませんが「キャッチーなものづくりをしないといけない」という考え方は嫌いと話します。

そんな中で杉江さんがYMOさんの音楽作品を聴いてはっと気づいたのは、これは祭りばやしだ!ということ。このように、日本人がDNAとして持っているものを自身も作品として表現してみたい。そんな道ができてしまえば勝ちではないかと笑います。数字だけ売れたらいいやろという人もいますが、そうではないと考えています。

最後に来年の目標として、5月のニューヨークでの展示会開催に向けて、せっかく行くので向こうで妥協せずにできるだけのことをしたい。自分というものを刻んできたいとお話されました!
ゆるやかな語り口ながらも、熱い思いを語った杉江さん。これからの日本・海外での活躍が楽しみになりました!

※合言葉は、アーノルド・シュワルッツ・ねが~~!

【MKM(杉江 明寛)】
すぎえ刺繍 / 刺繍アーティスト
1967年11月29日生まれ
2004年 刺繍の創作活動を始める。
Tシャツをキャンバスと見立て製作販売をマシン(コンピューター)の刺繍機により行う。現在、ハンドメイドの横振り刺繍による作品作りを充実させるため意欲的に横振り刺繍を行う。
2014年11月 日仏交流現代美術展2014 出展
2015年5月 第20回アートムーブコンクール展 入選
2015年10月 フランス ルーブル美術館 ART SHOPPING 出展
2016年7月 ART100大賞 入選
2017年2月〜3月 ART+ART=100出展 兵庫県立三木山森林公園 森の風美術館
2018年10月 九度山アートウイーク 出展
2019年12月 第二回全日本芸術公募展 入選
2021年10月 ギャラリー螺にて個展”tide 潮流” 開催
2021年11月 Loco920にて個展 ”tide潮流” The Rock & Chill at night featuring 山田廣之信 開催
2022年10月 ギャラリー螺にて個展 ”manipulate shadows 影を操る” 開催
2023年6月 100万人のキャンドルナイト キャンドルアワード 2位獲得
ヒップホップという音楽のジャンルは、その昔存在しなかった。マイケルジャクソンのダンススタイルは、未だに引き継がれている。
そういったように、道のない所に道を作っていく。自分の作品制作を繰り返し続けることで、結果としてそういったことになればいいと思っています。
自然や動植物をテーマにしたもの作りが多い中、技術的な部分をもっと評価してもらえるように、これからの活動の中に重きを置きたいと思います。

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