2023年10月15日のハイパー縁側@私市は、中地佳子さんをゲストにお迎えしました!
テーマは 「女と小商いが元気な町」

10月のキサイチゲート1日目は、昼からあいにくの荒天。予定していたハイパー縁側も、翌日に持ち越しとなりました。前日の開催時間は2時間ほどでしたが、「短時間に、ギュッと魅力を詰め込んだ感じでしたね」と、感想を笑顔で述べる中地さん。

10月のキサイチゲートでは、中地さんがマルシェのプロデュースを担当し、個性豊かで生き生きとしたマルシェが並び賑わいます。「交野じゃなかったら、プロデュースびびってやってません」と笑いながら、出店者もお客さんも優しいし前向きで、住みがい・商売のしがいがある「懐の深いまち」と交野の魅力を語ります。

そんな交野のまちに、自然ないいものとフェアトレードのお店『green stone 』をオープンし、今年で10年目。最初は、一軒家を借りて営業していました。
6年前、助産院の先生が古民家を借り上げてリフォームして「みんなが集える場を作りたい」と、『きさいち邸産巣日(むすび)』を開きます。『産巣日』にはイベントスペースや店舗スペースがあり、『green stone 』を営む中地さんに声がかかったそう。

ちょうどその頃、中地さんは4人目のお子さんを妊娠中でした。「先生、お店もお産もまるごとお願いします!」と、『産巣日』に移転する事を決断。現在は、『産巣日』内で営業しながらイベントスペースで講座などを行い、繋がりを紡いだり、情報や体験を発信中です。

大学では経営学を専攻していた中地さん。就職を意識し始めた時に、世界の事・世の中の事・よく知らない自分に危機感を持ち、「とりあえず、アジアに行こう!」と自分探しの旅に出かけます。タイやベトナムを訪れると、ストリートチルドレンなどの姿を頻繁に目にしました。

お金を渡す事はできる。しかし、それは何の解決にもならない。人間同士、対等な立場のはずなのに、日本人というだけで優越感のようなものを感じてしまう違和感。生まれた環境が違うだけで、格差が生まれている事実。様々な事にカルチャーショックを受け「モヤモヤを抱え帰路に着いた」と言います。

帰国後、たまたまテレビでフェアトレードを知り、中地さんは「目から鱗だった」と衝撃を受けます。適正な価格で商品を継続して取引することで成り立つ、国際協力の手段であるフェアトレード。寄付だと一過性になりがちで、続けるのが難しい。
しかし、ビジネスを通じてならお互いにメリットがあり、“対等”の立場を保つことができる。「フェアトレードすごい!」と感銘を受けた中地さんは、当時住んでいた神戸にフェアトレードの店が開業した事を知り、すぐに訪れ「何かできませんか?」と、学生ボランティアとして関わり始めます。

今でこそ、フェアトレードの認知度は上がってきていますが、25年ほど前はフェアトレードという言葉すらほぼ知られていません。そんな中、“お買い物で国際協力”というキーワードで、国際協力バザーの出店や企画に奔走します。フェアトレード商品を箱に詰め、様々な場所に出向いて売る、というスタイルについて「今とやってる事、全然変わってないですね」と、笑います。

ただ、そのフェアトレードのお店は、気持ち優先の経営で、ビジネスとして成り立たず、閉店していまいます。中地さんは、「ビジネスをちゃんと学びたい」と強く感じ、新卒を募集している東京本社の自然食品会社に就職。その頃は、健康の意識も低く、食品の知識もなかったので、働きながら学び続けた、と言います。

フェアトレードのお店でボランティアしている時は、一面的に物事を見て、視野が狭くなっていましたが、自然食品会社で働いていると、日本の農業や食事情にまで、視野が広がり、とても面白く学びが多かったそう。奥が深すぎて、東京の店舗で4年、関西で9年、気づけば13年働いていた、と振り返ります。その間に、育休、産休を取得しながら、2人のお子さんを出産します。

2人の子どもを育てながら、21時まで開いている店の店長を務めていた中地さん。17時の保育園お迎えの時間になると、店長にも関わらず帰らないといけません。東京に出張する機会や、重要な会議が夕方から開始される事も多かった、と言います。

また、会社内で働くお母さんは、1人か2人。そんな会社での働き方に、限界を感じます。会社を変えるのではなく、自分の働き方を変えよう、という考えを持ち始めました。

中地さんは、2人目のお子さんを、交野の助産院で出産。産後は親子ヨガや料理教室などのイベントで、交野のお母さんと交わる機会がありました。自然の多い交野に住む人は、効率ではなく“心の豊かさ”を求めて住んでいるという印象を受け、「ここなら、自然食品やフェアトレードを受け入れてくれる土壌があるはず」と感じた、と言います。

また、会社員の頃は転勤が多く、お客さんと仲良くなってもすぐに離れてしまったり、駅ビルや百貨店の店舗では、お客さんとの関係性が遠かったそう。自分のまちに店があれば、“近い関係性を、長く続けられる”という考えも相まって、思い切って交野で店を開くことにしたと語ります。

『green stone 』は、開業当初から、単にものを売るお店にするつもりはなく、イベントスペースを設け、“交流・学び・気づきを得られる場”にしたいという思いがありました。17時に閉店し、土日どちらかは休み。無理をせず、1人のサイズで完結できる仕組みにして、続けられることを意識したそう。
そして、“子どもと一緒に”というのは大前提。実際に3・4人目のお子さんが赤ちゃんの頃は、レジの後ろにベビーベッドを置き、授乳しながら接客した事もあるのだとか。

ご自身を小商いと称する中地さん。1人でできる事には限界があるけれど、他の小商いの方と一緒にイベントをしたり、商品開発をしたりする事で相乗効果を生めている、と実感しています。一緒に仕事をすると、関係が密になり継続的になる。それが、今回のキサイチゲートにも繋がっていると語ります。

“やりたい事を、やりたいようにやる”

中地さんは「女性は妊娠や出産を経験する事で、ターニングポイントを迎えるきっかけになりやすい」と指摘します。出産は命がけ。自分と子どもの命に向き合い、極限状態で、“何が本当に大事なのか”を突き詰める瞬間がある。女性は気を遣う事や、我慢する事も多い。けれど、最終的に“やりたい事を、やりたいようにやるしかない!”という考えに至り、何かを始める人が多いのでは、と感じています。

『産巣日』では、お産についてのお話会が頻繁に開かれています。「どういうお産をしたかったか」を突き詰め、「今抱えているモヤモヤは何だ?」と自分と向き合います。そうすると、“やりたいことをやる”にたどり着く、と言います。「お店をやりたい」「ウクレレをひきたい」など、たどり着く先は人それぞれ。

また、お産だけでなく自分や子どもの病気などでも、やりたい事にたどり着くきっかけになる人もいるそう。そして、それは伝播しやすく、連鎖していく。女性が元気だと、男性も子どもも元気になる。さらには、まちもが元気になる、と中地さんは考えています。
フェアトレードに関しても、“女性のエンパワーメント”がキーワードで、生産者は女性が多いと語ります。

10年にわたり、交野で店を構える中地さん。約束なしに来て何かしらを吐き出せたり、情報を提供する“場”であり続ける事を大切にしてきました。
最初はお客さんだった方が、刺激されて元気になり、自分も何かやってみたくなるケースが多いと言います。その際、まちが広すぎると関係性が薄くなるけれど、交野のまちのサイズは“ちょうどいい”と、感じています。

『green stone 』ヘビーユーザーのゆいちんさんも、その1人。交野には、仕事も子育てもごちゃまぜにしながら楽しむお手本の女性がたくさんいる。
そして、『green stone 』はつわりで不調だったり、自分がいい状態でなくても行ける暖かい場所、と魅力を語ります。だから、元気になったら自分も何かしたい、という気持ちが湧くのかも、と赤ちゃんを抱き、笑顔でお話して下さいました。

最後に10年後の未来について尋ねると、「10年後は娘が出店して、私はビール飲んでるだけかも」と笑い、終始、自然体の姿が印象的でした。
「みんな大変なんだから、大変さを隠さなくてもいい」と、さらっと言ってのけるスマートさと、暖かいオーラを持ち合わせる中地さん。元気の連鎖は続いていき、交野がますます“生命力あふれるまち”に育っていきます!

【中地 佳子(なかぢ よしこ)】
自然ないいものとフェアトレードのお店 green stone 店主 / 四児の母
石川県金沢市出身。
大学在学中のアジア旅行をきっかけに、寄付でなくビジネスで国際協力をするフェアトレードに興味を持つ。
フェアトレードショップでアルバイトをしながら、ボランティアチームで国際協力バザーの出店や啓発イベントの企画運営をする。
卒業後、株式会社ナチュラルハウスに入社、自然食品店の店長として東京・大阪の駅ビルや百貨店・路面店にて13年勤務。結婚後、2006年から交野市在住。会社員時代に長女、次女を出産。
仕事と子育ての両立のため、2014年独立。35歳で自然食品とフェアトレードの品を扱うgreen stoneを交野市私市に起業。
販売だけでなく、イベントスペースで講座や体験などのイベントを毎年30本程度開催。
その後、長男、三女を出産。2017年に助産院の運営する古民家シェアハウスきさいち邸産巣日ができ、green stoneが移店、来年10周年。
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