2023年9月25日のハイパー縁側は、東京建物の髙橋優希さんをゲストにお迎えしました!
テーマは「森・呼吸〜自然と人が融合するまちづくりを目指して〜」

髙橋さんは、不動産会社の東京建物株式会社に所属。普段は、既存の物件の運用管理のお仕事をされていて、現在は東京にある「大手町タワー」の運営管理をしています。
そこにつくっているのが、「大手町の森」という緑地。都市を再生しながら、自然環境を再生しようというコンセプトでつくっています。

今年で森ができて10周年。ビルがメインの事業ながら、この森には色んな可能性があるのではないかと感じています。都市の中で人と自然が融合していくまちづくりに、森をどう活用していこうかと考えながら、イベントなども交えて活動しています。

この森に生える植物は、大手町のその場ですべて育てています。大手町で始める前には、千葉県君津市の自然豊かな場所で実証実験をしました。大手町の森の1/3ほどの大きさでコンクリートを敷いて土壌を設置し植物を植え、都市で森を作れるのかを実験するプレフォレストというものです。そこでできる感触を得てから、ビルができるタイミングで土壌をまるごと移植して始めたそうです。

髙橋さんがこのプロジェクトに関わっているのは、東京建物に入社以来のここ2年ほど。前職ではプロパティマネジメントを専門にしている不動産会社に入社し、お客さんのアセットを預かって運用管理する仕事をしていました。ですが仕事をするうちに、お客さんのものだけでなく自分たちで持つアセットを自分たちのやりたい形で運用管理する仕事もしたいと思い、それをしている現在の会社に入社しました。

髙橋さんは大手町の森担当3代目になります。今年の1月から本格的に担当になり、今年はテレビなどの取材がよく来ていると話します。去年までは年に2-3件あるぐらいだったそうですが、今年になって多いときは月に2-3件あるなど注目の高さを感じています。

「都市×緑」というテーマは大事だとわかってはいながら、経済合理性のある要因としてはまだまだ弱いという部分があります。ビルづくりの中でいうと、事業として成り立つから現在やっているわけではないと髙橋さんは話します。

この10年の間に生物多様性保全やカーボンニュートラル、ネイチャーポジティブなどの世界的な動きや日本の中でも取り組みが出てきました。これらに関することを、10年前から観測してやっている人たちは意外と多くないと感じています。それをたまたま大手町の森では10年前から都市の中で取り組んでいて、世の中の流れが乗ってきているので取材に来ていただけているのではと感じているそうです。

大手町の森は自然の森、郷土の森、本物の森でありたいという願いでつくりました。自然の力に任せながら適した植物が育っていく状態でいきたいと考えています。最初に植える樹種も研究の上、かつてこの辺りで生えていたであろうと推測される107種類を選定し、関東の中で養生された植物だけを使ってつくったそう。コストはかかっていますが、それ以上に想いが現れている森だと感じています!

大手町の森の近くには、とても大きな森である皇居がすぐ近くにあり、生態系の頂点にあるタカなどの猛禽類がいるそうです。ただその中でも競争があるようで、その競争に負けてしまった個体が大手町の森に来るそうです!
大手町タワーは約200mの平べったい長方形の高層ビルですが、その屋上からタカやワシが崖を降りるように急降下してエサを食べる姿をみることができるそうです!

生物のすみか、えさばという意味でも緑があることは重要だと髙橋さんは話します。また、そういった強い鳥がいるのでカラスが来づらい森になったそうです。
大手町タワーはみずほ銀行本店やホテルのアマン東京もあるビル。お客さんが森を歩きながら、一般的な都心の公園であるようなカラスの声ではなく、あまり聞いたことのない鳥の鳴き声を聞きながら過ごせる空間がたまたまできていると話します。

ただ、この森の形は究極的な自然ではなく大手町の森で感じられることには限りがあります。郊外や地方にある森と比べたら全然森ではありません。どちらかというと里山に近いと考えています。

“大手町の森から里山へ、つなぐ”

もともと自分は森の担当をしていなかったら、山や森には行っていないタイプの人間だと話す髙橋さん。どうしたらそんな人たちが森に行くようになるか?そこに人をつなげていく役割は誰ができるのか?と考えたときに、大手町の森をきっかけにもっと立ち入ってみたいと関心をもってくれた人を、より五感で感じられる郊外の里山につないでいく。それが自分たちができる役割としてあるのではないかと考えています。

カジュアルに自然を楽しみ、体感できるのが大手町の森だとして、東京で一番近いところなら多摩地区の森などにつなげていくこともできるのではないかと考えています。

当日来場していた山田まりこさんもコメントしてくださいました。山田さんたちのホップの活動は、都会に住んでいて緑に触れたい人もいっぱいいるのではないか。その人達がホップを通じてあいさつできる関係になったらと思い始めました。大手町の森もより人が入れるようにして、近くに住んでいる人たちが「ここはオレの庭や!」と愛着を持ってもらえるぐらいになったらいいなとお話されました。

最近、髙橋さんたちは森で取れた苗木をみんなで育てようと、ビルのワーカーさんと種になる植物を育てる取り組みをしました。半年育てて返してもらい、大手町の森や千葉県の圃場で育てて森に返していく取り組み。それは愛着を持ってもらえる取り組みの一つかもしれないと話します。

最後に次の1年の目標として、この大手町の森を風景としてみてくれるファンづくりをやっていきたいと話します。風景はそもそも森を見てくれる人がいないと成り立ちません。それをどうやってつくっていけるのかを考え始めたこの1年だったので、次の1年はファン活動の一発目をしたい。それが加速できると、風景としても加速していくので関係性をつくっていきたいとお話されました。

今は大都会のイメージがある大手町。この先ここに自然と人との関係性がどう現れてくるのか、楽しみになるトークでした!

【髙橋 優希】
東京建物株式会社 ビルマネジメント第一部
1993年生まれ。東京生まれ、埼玉育ち。
2011年 首都大学東京(東京都立大学)システムデザイン学部 経営システムデザイン学科入学。生産システム研究室にて経営工学を専攻し、主に画像認識を用いたプラントメンテナンスの教育支援システムの構築を研究。
2015年 三菱地所プロパティマネジメント社へ入社、入社時には東京・有楽町エリアのビル運営管理部門に配属。古き良き多くのテナント管理を経験し、丸の内の複合施設の新規開発PJにて竣工前PM・開業準備を担当。
2021年 東京建物に入社、大手町タワーの運営管理に従事(現在まで)。オフィス・ホテル、大手町の森を担当し、特に森の生きものについて勉強しながら、最近は森の広報・森と人を近づける活動に取り組んでいる。
プライベートでは自宅が完成し、引っ越したばかり。