2023年9月26日のハイパー縁側@淀屋橋は、岡本浩典さんをゲストにお迎えしました!
テーマは 『船場の「やってみなはれ!」精神〜住民や子供たちの想い出づくりのできるまちづくり〜』

ビルの耐震についての雑談から始まったハイパー縁側。辰野株式会社にお勤めの岡本さんは、不動産事業部で不動産の開発計画に携わり続け、2000年頃からは、船場エリアのまちづくりに関わっています。生まれは堺市で、親御さんの仕事の関係で福岡へ転勤。

大学2年生まで過ごした後、大阪に戻り、簿記の専門学校に通いました。「経理の仕事に就けば転勤もなく、会社の中でゆっくり過ごせると思って」と笑います。たまたま専門学校に今の会社の募集がきていたので、応募して内定。夏前に就職が決まり、「いっぱい遊べる」という誘惑と知り合いの「あそこは不動産をたくさんもっているし、大丈夫やで」というアドバイスもあり、「就職先を安易に決めてしまいました」と振り返ります。

来年90周年を迎える辰野株式会社。もともとは繊維事業が主で、官庁関係の制服を製造販売していました。それから、コンクリートサポート材の会社を買収して電力会社と取引をし、その儲けで土地を購入していきました。平成元年頃から、その土地を生かし、開発事業に乗り出します。中規模のビル建設や百貨店の本社、企業のビルなど、注文建築も始めました。

ちょうどこの時期に入社した岡本さん。経理の仕事をするつもり満々で入社したのですが、配属されたのは不動産事業部。ビルや不動産に関する事は何も分からなかったので、ビルを建てる度に知識と経験を積んでいった、と言います。その時、上司から教えられたのは「自分が所有者になったつもりで考える事」。まず、それを考える癖を身につけ、不動産の開発計画に携わってきました。

そして2000年頃から、東西約1キロ・南北約2キロ・230haほどの船場エリアのまちづくりに関わっていきます。近年、船場エリアはタワーマンションが増え、ファミリー層が入居して子どもの数が増加しています。そこにある小さな都市公園の九宝公園。

岡本さんらは、この公園に隣接して建物を所有している事もあり、この公園を生かしたまちづくりにチャレンジしています。2019年に、まちづくり団体『船場倶楽部』がコンペを開催。「船場2030年ワクワクする船場のこれから」というテーマでアイデアを募集すると、船場らしい面白いアイデアがたくさん集まった、と言います。

その繋がりで、地域のマンションに住む親子から「船場で手持ち花火大会をしたい!」という声が上がります。「これは絶対に実現しなあかん、うちならできる!」と、確信した岡本さん。『船場倶楽部』と協力しながら、実現に向け動き出します。

しかし、スタートした時期は、コロナウィルスが蔓延し始めた頃。まずは、公園を使う事から始めた、と言います。ソーシャルディスタンスを楽しく認識してもらうイベント「ワンメーターズプロジェクト」を公園で行いました。翌年からはいよいよ花火を実現する為に、行政や地域の方々の協力を得ていきます。
船場の子どもたちの想い出づくりにしたかったので、近所の小学校・幼稚園・保育所に宣伝すると、すぐに予約の枠が埋まるほどの反響があったそう。

「用意した花火しか使わない」「ゴミは持ち帰る」などのルールづくりをし、花火の前には、水消火器訓練を行いました。想い出づくりと同時に、「地域の防災意識を高める事」「ルールやマナーを厳守する事」も伝えるイベントにしたかった、と岡本さんは語ります。また、有志で若手の子たちが集まり、発案・企画・運営をしてくれたそうで、そんなチームが生まれた事も大きな財産だし、実現するフィールドがある事を実感できた事も、今後のまちづくりに繋がっていると感じています。

2000年頃、船場のまちづくりに関わり始めた当初は、地域の町会と顔を合わすことがなかったそう。ワンルームのマンションが多く、誰が住んでいるかも把握をしていませんでした。しかし、ファミリー向けのマンションが増え、住人の顔が見えるようになってきて、まち自体が変化していきます。

岡本さんが公園を含めたまちづくりを進めていく中で、地域の住人や町会と接点を持ち、一緒にやっていくべきだ、と自然に感じるようになったと言います。ただ、最初からうまくいったわけではなく、講師を呼んでセミナーばかりをしていて、何も実行できていなかった、と振り返ります。

2003年に、イベントでまちを活性化する考えの堺屋太一さんの勉強会をきっかけに、自社が所有する駐車場を使って「イベントをしよう!」と動き出します。メインイベントは女子プロレス。服飾学生にガウンを作製してもらい、ガウンコンテストも行いました。しかし、中船場は「卸のまち」なので、イベントなどで盛り上げるまちづくりが難しい。そこで、近代建築が残る三休橋筋を中心に活性化しよう、と考えます。

ちょうど、船場エリアにある8つの町会が、三休橋筋を背割りに関わっていた事もあり、岡本さんは各町会に「このエリアを盛り上げたいので、世話人になって下さい!」と挨拶に廻ります。

すると、いい返事をもらえると思っていなかったのですが「やってみなはれ!」と、よそ者を快く受け入れて頂きました。今まで「やったらあかん」と言われたことはなく、岡本さんは「本当にありがたい」と、感じています。

“まちの魅力を引き出したい”

「何でもします」と、話す岡本さん。この地域に、このビルに、何が適しているのか、まだ分からない。より、まちの魅力を出していきたい。船場で言えば、子どもたちが増えているので、そこにスポットを当てた施設や、使い方を提案する事が大切ではないか。だから、今は実験的に何でもする、と話します。そして、船場で育った子どもたちが巣立っても、戻りたくなるまち、「船場出身やねん」と誇らしく言ってもらえるようなまちにしていきたい。これからも、関わる人が増えるようなきっかけづくりを積極的にしていきたいと考えています。

2013年頃から流行った出汁が効いた大阪スパイスカレーをきっかけに、スパイスカレーにどはまり中の岡本さん。最近は、インドやネパールの現地系のカレーがお気に入りなんだとか。カレー屋さんのコミュニティは濃く、コラボレーションやイベントも色々と行われています。そこに音楽が入り、外国人の方も交じり、みんなで楽しむ。

岡本さんは「カレーと出会って良かった」と、しみじみと語ります。船場はカレー屋さんが多く、インド領事館もあります。岡本さんの個人的な嗜好による「船場インド化計画」が、裏で着々と進んでいるそう。

今後は、大阪府の北にある豊能町にある土地を活用しようと構想中です。農業が盛んで、魅力あるまち豊能町と船場を、農業をきっかけに繋げられるようなまちづくりをしていきたい、と考えています。カレー仲間で、農地を借りて野菜を作りたい人も多いそう。やはり、「情報源はカレーです」と笑います。

花火のアイデアがでた時に、「絶対やりたい!」と強い気持ちをもった岡本さん。「本当にやりたいと思ったら絶対できる。あとは、みんなで乗り越えていくしかない」と、力強く語る姿と、スパイスカレーの魅力を楽しそうに語る岡本さんの姿が印象的でした!

【岡本 浩典(おかもと ひろのり)】
辰野株式会社 不動産事業部 開発チーム 次長
大阪府堺市出身→福岡市→茨木市→藤井寺市
1987年、辰野株式会社入社。入社後、自社所有の不動産の多くの開発計画にかかわりながら2000年頃から船場のまちづくりに参加。
2001年の都市整備公団(現UR都市機構)の「船場げんき提案」をキッカケに、2003年〜2004年に久宝公園と隣接する自社の駐車場で開催した「せんばGNEKIまつり」の実行委員会事務局、2004年に設立した「せんばGENKIの会」事務局長、「三休橋筋発展会」幹事、2005年設立の「三休橋筋商業協同組合」事務局、「船場地区HOPEゾーン協議会」理事(2008年~2018年)「船場博覧会」(2011〜)「堺筋を考える会」(2023〜)など船場のまちづくりにかかわり続けています。
現在は、(一社)船場倶楽部に属しながら、自社が所有するTパーク久太郎町と久宝公園を中心に中船場界隈(南北は本町通り北側から博労町まで、東西は東横堀川から旧西横堀川まで)の新たな賑わいづくりを進めています。
2021年から開催している「せんばパーク花火」は2019年の船場倶楽部主催の「船場2030-ワクワクする船場のこれから-」提案コンペから生まれた船場に住む親子のママさんのアイデアを若手グループ“チームcobon”と実現しつつ、愛日地域活動協議会と連携して本年9月30に日に第3回を開催予定です。
昨年より地域の共創の場として、解体予定のビルの1階を活用した「ナカセンバカフェ」の営業や現代アートのイベント、駐車場の一部を利用した「オーガニックや無農薬野菜のマルシェ」を開催しています。
2025年の大阪・関西万博に向け「EXPO酒場 中船場店」を(一社)demo!expo さんと2回目9月15日、3回目は10月20日に開催を予定しています。
また、2014年頃から大阪スパイスカレーに目覚め、以後週4-5日はカレーを食べています。ここ2-3年はインドにも興味が出てきて、インド関連のイベントにも参加中。
辰野株式会社 TATSUNO CORPORATION
船場2030〜ワクワクする船場のこれから〜
ナカセンバカフェ
せんばパーク花火2021
船場倶楽部
汎愛地域活動協議会 / 三休橋筋商業協同組合
EXPO酒場 中船場店#2