2023年9月17日のハイパー縁側@私市は、甲斐 健さんをゲストにお迎えしました!
テーマは 「コミュニティを醸造するクラフトビールの可能性について」

残暑が厳しい中、和気あいあいと行われたキサイチゲート2日目。「程よくゆるい空間で、来月・再来月と、ますます面白くなっていきそう」と、本日の感想を語る甲斐さん。キサイチゲートで提供しているクラフトビールを手がける「シビック&カンパニー」を昨年立ち上げました。

甲斐さんは交野市ご出身。関西の大学を卒業後、22才から東京の広告会社で働き始めます。ヒット商品の誕生にも携わり、多忙な日々を過ごしていました。

当時、南青山や代官山に住んでいた甲斐さん。地域活動とは無縁で、自分の仕事とプライベートのみの生活だった、と振り返ります。そんな中、ご両親の体調不良をきっかけに、22年間の東京生活に終止符をうち、44才で交野にUターンすることに。

交野に帰ったら、そんなに仕事はないだろうと予想していたので、空いた時間で作家活動をしようかと考えていた、と笑います。交野に戻ってから、同窓会が開かれ参加すると、「交野を盛り上げたい!」と考える同級生たちがいました。甲斐さんに「アイデアを考えて」と、声がかかります。

東京生活が長かった甲斐さん、最初は「めんどくさい」と感じましたが、今まで作ってきたヒット商品の交野版を作れば税収も上がり、まちの役に立てるかもしれない、と思い立ちます。

そして、交野をフィールドに動き出し、色々な人と出会っていくうちに「まちの為に汗を流している人々」の存在に気づきます。また、「まちの為に何かしたいけど、どこで何をしたらいいのか分からない」という人たちも多数いました。

そこで、そういう人が気軽にまちづくりに参加できる“場”を作った方が、長い目で見ると、まちの為になるのではと市民大学「交野おりひめ大学」を設立することを決意します。「おりひめ大学」を通じて、地域の人や役所の人と知り合い、活動していくのが1番いいと考えました。

当時の市長とも意気投合し、市の協働事業としてスタートした「おりひめ大学」。議会で予算も計上されていましたが、市長の交代により体制が代わり、2年目からは自分たちで運営していくことに。しかし、おりひめ大学は歩みを止めず、酒米を育てて交野の酒蔵とコラボレーションして造った日本酒を販売したり、交野の綺麗な水と空気を生かし、休耕地で蕎麦を栽培したりと活発に活動を続け、「おりひめ大学」は今年で10年目を迎えました。

そして、ビール好きの甲斐さんは今までの経験を生かしながら、さらに交野を盛り上げるべく、ホップを育て交野のビールを造りたいと考えます。きっかけは、大阪・中津でのハイパー縁側に登壇したことでした。

中津のハイパー縁側の開催場所に、車2台分ほどのスペースで運営するマイクロブルワリー「中津ブルワリー」があり、ホップを育て、地域の方々がビール造りやコミュニケーションを楽しんでいました。ビールを片手に、人々が笑顔で乾杯する風景。ビールが人と人を繋ぐ“潤滑油”の役割をするのではないか。

しかも、大手メーカのビールではなく、交野産のビールなら交野市民も喜んでくれるし、市外からもビールを目当てに人が訪れ、地域の人と外の人が繋がり、地域経済も循環させることができる。そんな想いをもち、2021年に「おりひめ大学」にクラフトビール部を設立し、ホップ栽培を開始します。

交野の名産である、いちごやぶどうを使ったビールを中津ブルワリーなどで醸造し、販売してきました。委託醸造は、手間もかからないしリスクは低い。しかし、「それじゃ、面白くないし、まちに変化は起こせない」と感じた甲斐さん。交野に醸造所を作り、交野で育てたホップで自分たちのビールを醸造したい。

そこから、共感する仲間が集まり、地域総合商社「シビック&カンパニー」を設立。醸造所のオープンに向けて奔走中です。メンバーは、一級建築士やデザイナー、研究者、府の職員など様々。それぞれがプロフェッショナルで、違う特技をもつ人が集まる事で面白い化学反応が起きている、と言います。その反面、個性の強い猛獣たちをまとめるのがかなり大変、と笑います。

まずは、クラフトビール事業を成功させること。33才で痛風になったと打ち明ける甲斐さんは、「命がけで取り組んでいます!」と力強く語ります。そして、「地域商社」と名乗るからにはビールを主軸にしながら、地域のイノベーションや起業のサポート、新しい事業を起こしたりと、地域の発展に貢献したいと考えています。

また、市民大学がきっかけで会社を作ったという事も世の中に伝えたい。副業がしやすく、リタイア後も活動したいと考える人が多い時代。年齢も性別も職業も関係なく、仲間たちと会社を立ち上げる風習が広がれば、もっと地域が盛り上がる。交野のあちこちに伝播していって欲しい、と願います。

“人が出会う事こそが地域活性化”

甲斐さんは、「地域活性化」「地域創生」という言葉はまやかしでしかない、と言います。それらの最終目的は事業化すること、という訳でもないし、お金儲けがゴールでもない。誰も答えは分からない。だから、“まず、やってみる”ことが大事。やってみると、人との繋がりが生まれ、それが生きてくる。「人が出会う事が、地域活性化なのではないか」と、甲斐さんは捉えています。また、「周りの人が楽しくなる為にはどうしたらいいのか」を考えていくと、自然と輪が広がっていく。そして、繋がり・交わりから新しい“場”や“コンテンツ”は生まれていく、と語ります。

さらに、甲斐さんはしがらみや既成概念をぶった切る役割を担いたい、と言います。若い世代が、やりたい事に取り組みやすい環境を作っていきたい、と常に考えながら活動中です。実際に、交野のまちの風通しが良くなってきた感覚もあるそう。

「シビック&カンパニー」の共同代表の高橋さんは、交野育ちではなく四国育ち。しかし、甲斐さんの取り組みに共感し、交野のまちを盛り上げ、一緒に理想を実現したくなったと話します。また、キサイチゲートのロゴデザインやプロモーションを担当した浅野さんは、常に高めのボールを投げて来る甲斐さんの感覚はさすが。一緒に仕事する事で刺激をもらっている、と甲斐さんの魅力を語ります。

以前、登壇した中津のハイパー縁側で、交野でホップを育てる・醸造所を作る、とコミットメントした甲斐さん。今、まさにそれを実現しようとしています。今回は、次回のW杯までに小説を書き、本を出版すると約束。

支えてくれた人・応援してくれた人・妨害した人も含めて、交野での10年間、甲斐さんの周りで起きたドタバタ劇を1冊にまとめる構想なんだとか。「本屋大賞3位狙ってます!キサイチゲートでサイン会もします!」と、意気込みます。

終始、コミカルなトークで場を盛り上げながらも、「まちの為に」と何度も口にしていた甲斐さん。様々な経験をしてきた甲斐さんだからこその視点とアイデアで、まちへの想いを次々と形にしてきました。

キサイチゲートから徒歩15分ほどの場所にある、稼働直近の醸造所「シビックブルワーズ」。12月のキサイチゲートでは、自前のブルワリーで醸造したビールを提供したい。そして、市民の皆さんに一緒に大事に育ててもらいたい、と話します。

交野愛が詰まったビール、みんなで楽しめる日が待ち遠しいです!「シビックブルワーズ」ではビールだけでなく、まさにコミュニティが醸造中。交野の魅力が増し、人が繋がり、ここから新しい景色が広がっていきます!

【甲斐 健(かい たけし)】
クリエイティブディレクター / 株式会社シビック&カンパニー(CIVIC+BREWERS) 代表取締役社長 / 一般社団法人交野おりひめ未来研究所(交野おりひめ大学) 副代表理事(副学長)
大阪府交野市出身。
関西大学卒業後、第一企画株式会社(現在のADKホールディングス)入社、東京本社制作局勤務。
退社後、フリーランスのクリエイティブディレクターに。
44才の時、地元交野市へUターンし、交野おりひめ大学設立。
昨年8月、クラフトビールなどを手がける地域総合商社CIVIC&Co.設立。
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交野おりひめ大学 クラフトビール部