2023年9月8日のハイパー縁側@淀屋橋は、舟本 恵さんをゲストにお迎えしました!
テーマは 「“語れるお肉”で、関係するすべての方々の日々をより豊かにしたい」

「GAS STAND」から見える平野町4丁目に、「黒毛和牛精肉店29.central」を今年7月に開業した舟本さん。舟本さんは淀屋橋でハイパー縁側が開催されると聞いて、「淀屋橋エリア」と「お肉」に対する熱い想いをぜひ伝えたい!と意気込み、登壇して下さいました。

舟本さんは京都市北区のご出身。幼少期にテニスを始め、京都の大学に進学し、3年間は坊主頭でテニスに明け暮れます。勉強は全くしていませんでした、と笑います。卒業後、JR西日本に入社。鉄道業務の部門と、商業施設などに関わる鉄道以外の部門での入社があり、舟本さんは、後者を選択。

1年間、滋賀県での鉄道駅員研修の後、2年目からは商業施設の開発・運営に従事します。「ルクアイーレ」のプロジェクトリーダー、「バルチカ」や「ルクアフードホール」のヒットを生み、現在は西日本の新規商業施設の責任者を務めています。

そんな舟本さんが突然、淀屋橋に精肉店を開業したきっかけは2つある、と言います。1つ目は、「本当のお肉の美味しさ」が分かった事。2014年、ルクア大阪の地下2階に様々な種類の飲食店が軒を連ねる「バルチカ」の構想を練り、翌年2015年にオープンしました。
「バルチカ」は、大好評につき2018年には増床するまでに。日本で1番売り上げ効率が高いと言われているそう。

その「バルチカ」をオープンする為に、年間400店舗のリサーチをした舟本さん。リサーチを通じて、個人的にお肉の素晴らしさを知り、お肉が大好きになったと笑顔で話します。その影響は、舟本さんが携わった「ルクアイーレ」の10階にも。ステーキ、焼肉、もつ鍋、ハンバーガーなど、お肉料理を楽しめる店舗ばかりが並んでいます。

お肉好きになった舟本さんは、「美味しいお肉と、そうでないお肉があるのは、何でだろう」と考えながら、ほぼ毎日お肉を食べて生活していました。そんな中、「黒毛和牛精肉店29.central」の共同創業者となる谷本さんと出会います。谷本さんは、以前から「29.central」という肉割烹を営んでいました。

そこで、谷本さんの提供するお肉を食べた時に大きな衝撃を受けた、と言います。谷本さんの話を色々と聞いていくうちに、「美味しいお肉とは何か」が明らかになったそう。もう1つのきっかけは、淀屋橋エリアの素晴らしさに触れた事。来年、大阪駅西側に建つビルの3〜5階に「バルチカ03」を開業する予定です。

現在の「バルチカ」は、お酒好き女子がターゲットなのに対し、「バルチカ03」は「おっさん」の憩いの場を作ることが目的。その為に、梅田で働くおじさま方のマーケット調査を開始し、クラスター分析を行いました。オフィスビルの中層階の「わざわざ立地」に来てくれるおっさんとは、どんなおっさんなのか。

13分類したおっさんの中で、「自分の好きなお店があれば、どこでも行く」という考えをもつ、いわゆる「グルメおっさん」が集まる4つのクラスターにグループインタビューを実施。彼らがどのエリアの店を訪れるかを調査すると、北浜から肥後橋の横のラインだったそう。その中心が淀屋橋だったので、舟本さんのリーサーチエリアは必然的に淀屋橋界隈になり、この辺りの飲食店はほぼ制覇した、と言います。

“美味しいお肉の発信拠点”

昔からオフィス街である淀屋橋。収入もあり感度も高く、情報量も豊かなイケてるオフィスワーカーが多い、と舟本さんは指摘します。一方、御堂筋から少し入ると「縁側」のような雰囲気が滲み出て、オフィス立地でありながら生活立地でもある。ここに、“親しみ”と“ビジネスの可能性”の両面を感じたと言います。「本当に美味しいお肉とは、どのようなものなのか」を、生涯をかけて全国・全世界に伝える発信拠点にするには最適の場所だ、と確信しました。

という時に、肉割烹を営む谷本さんが「肉割烹をしながら、精肉店をしたい」と、提案します。「国産牛」でも「黒毛和牛」でもなく、「どこの牧場で、誰が、どんな餌で育てた、月齢はいくつの牛」という牛を仕入れている谷本さん。

経営するレストランでは席数も限られているし、情報発信が少ない。もっと広げていくには、リテールビジネスとして精肉店でお肉を販売しながら伝えていく事が必要だ、と考えます。

そこに12年間、牛を育てていた山本さんとの繋がりがあり、店長として加入。山本店長は競り落とし、解体・販売を担い、牧場の方と牛についてしっかりと話し込むことができます。最強のシェフと最強の牛買いが揃い、「自身はただの肉好きです」と笑います。
そう言いながら、ライン会員システムを導入してCRMを行い、ゴリゴリの分析をする舟本さん。3人で、まさに“肉アベンジャーズ”結成です。

1階は精肉店、2階は居酒屋でカウンター10席の「黒毛和牛精肉店29.central」。ここを「美味しいお肉とは何なのか」を伝える情報発信基地と位置づけます。そして、社会貢献に対する想いや感度の高い人々に、SNSや口コミで伝えて欲しいと考えています。

舟本さんは、本当のお肉の美味しさは「赤身の美味しさ」「融点の低さ」だ、と断言します。巷では、A5ランク黒毛和牛がもてはやされていますが、A5という記号は肉の旨さではなく、A〜Cは牛の大きさ、1〜5は脂の入り方を表している、と説明します。つまり、A5の牛は、大きくて脂がたくさん入った牛。それが美味しいかどうかは別だ、と舟本さんは言います。

農家の方も「A5至上主義」の世の中では、ハイカロリーな餌や抗生物質・添加物を与え、牛を大きくします。そうなると、脂の融点が高く、胃で消化できない、胃もたれする肉が出来上がります。お肉本来の美味しさを味わうには、脂でごまかすのではなく、赤身を味わうべき。

添加物の入っていないオーガニックな餌で育った牛は、肉本来の旨味がある、と言います。元来、和牛とは大きくならない品種であって、もちろん、血統などでA5になるお肉はありますが、基本的には、無理に大きくする育て方をしないと、A5にはなりません。脂が多くなく、サイズも大きくない、本来の旨味を感じられるいい牛ほど、売価が高くなっていないのが現状です。

舟本さんは、世の中の“ゲームチェンジ”が必要だと言います。A5のお肉を育てる農家さんが真面目でない、と責めているわけではなく、消費者の選択が大切。そこで、淀屋橋のみなさんに、お肉を語って欲しい。

まずは、入り口として千円で提供しているランチ「黒毛和牛ホルモン焼肉定食・豚汁付・ご飯大盛り無料」を食べてもらい、伝道師になって欲しい。お肉を語る事は、コミュニケーションのコンテンツになるし、社会貢献になり、将来的には“ゲームチェンジ”に繋がる、と力強く語ります。

山本店長も、「いいお肉とは…」と、何時間でも語れるそう。その話を聞きに精肉店に来店する方も。そんな「黒毛和牛精肉店29.central」のコンセプトは、“語れるお肉で、関係するすべての方々の日々をより豊かにしたい”。

関わる人々というのは、消費者・生産者ですが、生産者である牧場従事者の数は、大幅に減少しています。待遇も厳しく、年収は120万円というレポートもあります。「牧場に、フェラーリに乗って通えるようにしたい」と、舟本さんは言います。まずは、農家さんの所得を引き上げることが使命だ、と感じています。

“人生を賭した 生き様”

マスマーケティングが通用していた承認欲求時代から、自己実現欲求時代へと発展し、「ライフスタイル」という言葉が誕生しました。近年はもう1歩先に進み、各自の「ライフスタンス」の時代になっています。自分は人生を賭して、何を実現していくのか。「飲食業の社会的地位の向上を実現したい」のような「スタイル」というより、「スタンス」や「生き様」。

価値を共創する中で、どうマネタイズしていくのか。購買行動が投票行為・寄付行為であり、自分のスタンスに沿ったものに投資し、自分のスタンスに沿った社会実現をする。そして、その際の協力者は誰なのか。
舟本さんの場合は、谷本オーナーであり、山本店長であり、「一緒にあるべき社会を作っていきたい」と語ります。

牛を育てる農家の方が、持続可能な産業になっていく。「今のルールってちょっとおかしくない?」と、“ゲームチェンジ”が起きるべき。牛肉業界における、「本当の意味での持続可能な社会とは何か」ということを平野町の「29.central」から実現していきたい、と野望を語って下さいました!

終始、お肉への愛が溢れ、楽しそうに話す舟本さん。「今度は、3時間お肉の話しますね」と、まだまだ熱いお肉の話は尽きません。まずは、「29.central」のお肉を味わいに行きましょう!

【舟本 恵(ふなもと けい)】
黒毛和牛精肉店29.central Co-Founder / JR西日本SC開発株式会社 カンパニー統括本部 開発戦略部 部長 兼 コンサルティング部 部長
神戸大学MBAフェロー、阪南大学非常勤講師、SC経営士、大阪府飲食業経営審議会 部門長。
2023年7月、「“語れるお肉”で、関係するすべての方々の日々をより豊かにしたい」をコンセプトに、平野町4丁目に「黒毛和牛精肉店29.central」を開業。
2000 年JR西日本入社。2015 年プロジェクトリーダーとしてルクア イーレを開発。バルチカ、ルクア フードホール等のヒットを生み、2022年7月から現職。JR西日本グループの商業開発、国内コンサルティング事業、ルクア大阪テナントリーシング部門を管轄。中国SC開発株式会社社外取締役。2024年夏には「バルチカ03」を開業予定。
@29.central
JR西日本SC開発株式会社