2023年8月19日のハイパー縁側@淀屋橋は、田村圭一郎さんをゲストにお迎えしました!
テーマは 「関西におけるアントレプレナー・エコシステム〜起業家の理想と現実への思い〜」

田村さんは、大学時代に起業を果たし、現在、3社目となる株式会社COOONの代表を務めています。小さい頃からビジネス思考だった田村さんは、「安く仕入れて、高く売る」というビジネスモデルを探す事が好きだったそう。起業した1・2社目は「THE・スタートアップ」のようなビジネス寄りの会社だった、と言います。

その頃は周りを見渡すと、後輩の学生たちが国内や海外支援をするボランティア活動に勤しんでいました。しかし、いざ就職するとなると4年間の活動が活かされないまま就職をし、今までの活動は全く続けていけない現実を目の当たりにします。
その活動を事業化できたら続けられるのではないか。「社会起業家の卵を支援したい」と感じたことが、COOONを立ち上げたきっかけだったと語ります。

社会起業家が生み出す、ソーシャルビジネスの種にしっかりとフォーカスを当て、事業化しているCOOON。ソーシャルビジネスに特化した事業会社として、ジャンル問わず様々な事業を立ち上げています。現在、7社のグループ会社があり、イメージは小さな会社が集まり、大きな1匹の魚に見える「スイミー」だそう。せっかくやるなら、社会課題も解決したい・面白い方がいい、と言いながらも「今が、1番追い込まれています」と笑います。

現在、取り組んでいる事業は、遊休不動産の利活用やプログラミングを教える教育事業など、多岐にわたります。その中でも、福祉の仕組みに囚われない、障害の有無に関わらず仕事に就ける“かっこいい仕事”の創出に力を入れている、と話します。

障害のある方にお任せする仕事は裏方で簡単な作業が多い、と田村さんは指摘します。基本的に、障害者就労支援は国の補助金でまわるビジネスモデルになっていて、補助金を集めることが目的になっている会社も往々にある、というのが現実。
当事者の就職やスキルアップ、物のクオリティが蔑ろになっているのではないか、と感じています。

田村さんたちは、“一貫して作り上げていく”ことを大事にし、きちんと学び、練習し、就労して、“かっこいい物”を作る、という仕組みを作っています。「障害者の方が作っているから売れる」ではなく、「物がいいから売れる」。さらに、背景を知ってもらいファンになってもらえるような、ものづくりの仕方に取り組んでいます。
運営しているカフェでは、障害者の方もバリスタやパティシエとして活躍しているそう。“根本を変えることで、可能性を高められる”と、考えています。

他にも、田村さん自身が繁殖引退犬を引き取ったことをきっかけに、ペット業界の課題にも向き合っています。ペットショップへ行くと可愛いワンちゃんやネコちゃんが並んでいますが、背景には繁殖の仕方など、とんでもない問題を抱えている、と言います。
田村さんらは、保護犬・保護猫に関する事業に取り組んでいて、動物たちの譲渡会ができるドッグランを備えたカフェをプロデュースし、オープン。収益を保護団体に寄付しています。

「大阪、むちゃ大好きです」と、笑顔で話す田村さん。関西は新しい事を始めるにも、人が優しく、応援してくれる人が大半。人と人との繋がりが強く、人情味溢れる会社作りをしている人が多いと感じています。一方、関東はシビアで成功体験を積み、資金調達をしっかりしてから起業する、というスタイルが目立ちます。関西は熱量とノリで何とかスタートをきれるという部分もあり、年代的にも大阪との相性がいい、と分析します。

ひと昔前より、社会課題を解決したいという考えの若者は増えた、と田村さんは言います。ただ、関西でも関東でも無理して社会起業家を目指す人が多い。社会的にいい事をしていることに満足して、稼ぐ事から目を背けているのではないか。そうすると、お金がない事で、十分な支援ができない、社会成長性としても伸びがない、という問題に陥ります。

“社会課題を解決しながら稼ぐ”

田村さんは、稼ぐ・儲けるというマインドをもちつつ、ソーシャルな事にお金を使う事が大切、と考えています。ちゃんと稼ぎ、生活と両立していてかつ、そこで働く人がかっこいい。そんな“社会課題を解決しながら稼ぐ”というロールモデルを目指したい、と語ります。

社会課題はコミュニティに根ざしたものが多く、最初からドカンと儲かるものではない。参入が少なく、社会課題が残り続けているという事は、儲かっていないからだと指摘します。通常のビジネスと違い、ソーシャルビジネスの特徴は応援者を集めて事業に取り込める事。

課題さえそこにあれば、当事者など、様々な形で参画できるのが良さ。短期的にお金を稼ぐのはとても難しく、5年10年かかってしまうかもしれない。それらを踏まえ、金銭面・人員面など必要な事を何とか確保し、耐え忍ぶ事ができれば、どんなソーシャルビジネスにも未来はあるのではないか、という展望を持っています。

田村さんは、普段からモチベーションの波を作らないように意識しているそう。上がる事も下がる事もない。誰かから言われてしている訳ではないので、ストレスもほぼ感じません。無理してもだめだし、さぼってもだめ。代表者として、マラソンのように淡々と、“ちゃんと続けていく事”が自分の役割だ、と語ります。

そんな田村さん、同世代の起業家仲間は少なく、情報元はTwitterと言います。「面白い」「トレンドが来てる」と、ピンと来たらすぐにDMを送ったり、会いに行ったりします。また、「関西に変な若いやついるぞ」と紹介され、異世代の起業家と出会うことも。

同世代同士の起業家が集まっても、お互いのリソースが乏しく、事業が生まれにくい。上の世代は、リソースは余っているが、アイデアがなかったり、実働不足だったりする。だから、異世代の起業家がマッチできる場がもっとあったら面白い、と提案します。

COOONを創業し2年半、会社を伸ばすことに注力してきました。半年前にお子さんが生まれ、自分自身や会社のメンバーなど、それぞれの時間は限られている中でも1日のほとんどをこの会社に費やしてくれているという事にようやく気づいた、と話します。「人生の大半を捧げてもいい!」と思ってもらえる組織・会社にしていきたい、と語って下さいました!

最近、1番嬉かった事は社内で交際をスタートとしたメンバーがいた事だそう。会社を作った事で、出会いも生み出せた事に喜びを感じています。広い視野と冷静さを持ちながら、会社や社員への愛情と、情熱も兼ね備える田村さん。今後も活躍が楽しみです!

【田村 圭一郎】
株式会社COOON ファウンダー / 代表取締役
「ソーシャルインパクトを与える社会の仕組みをつくる」
社会課題を解決しつつ、会社として収益をあげながら存続させていくいわゆるゼブラ企業を目指しています。ですが、我々がアプローチできている課題は氷山の一角です。 そのために知見をオープンに共有し、挑戦しやすい環境を整えることで多くの社内起業家を生み出します。
株式会社COOON