2023年8月19日のハイパー縁側@天満橋は、原繭子さんをゲストにお迎えしました!
テーマは 「社会課題を解決する公認会計士の生き方」

公認会計士を本業とし、日本公認会計士協会近畿会の幹事・協会本部のSDGs推進委員会の委員などを担い、ボランティア活動にも力を注ぐ原さん。また、社会問題に取り組む日本人女性リーダー育成プログラム(JWLI)に参加し、日本の女性管理職の比率を上げたいと考え、様々な活動に取り組んでいます。

原さんは、大阪府ご出身。学生時代に大阪市中央公会堂を観て「いいなぁ」と感じてから、趣味は建築巡りや美術館巡りだそう。高校生の頃、将来の職業を考慮し、お母様と進路について相談していました。

医者も候補にあがりましたが、血が苦手なので医学部はなし。弁護士を目指し、法律を勉強するのもピンとこないので、法学部もパス。関心をもっているのは、アートや建築。美術系の大学は無理だけど建築なら面白そう、と消去法も取り入れながら、大学で建築を学ぶことにしました。

しかし、設計図を描く課題に取り組むと、「これ向いてないかも…」と、早々に気づいたと言います。建築を眺めたり、この建物に入ってみたい、という興味は湧くけれど、建築士になりたいわけではない。生き生きとしながら図面を描く、周りの学生と自分は違う。「図面を読める人間であれば、市場価値はあるだろう」と割り切って、別の道に進むことを決意します。

そんな原さんが大学時代に没頭したのは、アイスクリーム店のアルバイト。最初は販売の担当でしたが、店長とパートの間に入るマネージャー職に抜擢。仕入れ・発注・品質管理、さらに人事・教育など、店の運営を全て任されました。掲げられた売り上げ目標に対し、「何をすればいいのか?」をみんなで話し合い、リーダーシップをとって目標達成を目指す日々。

そして結果を出し、当時の店長と原さんは本部で表彰されるまでに。その実績をもって、そのままアイスクリーム店の本部に就職し、希望していた店舗開発にすぐに従事することができ、3年ほど働きます。その後、建築で学んだ事を活かせる商業施設の企画に興味をもち、企画を専門にする会社に転職。

そこでは、プロジェクトマネジメントやマーケティング調査の提案などをするB to Bの営業を担当。自分なりに、いい建物・いい店はこういうものだ、という考えはありましたが、なかなか契約が取れません。契約を取るには、お客様に「これをすれば、事業・会社が発展します」という提案ができないとだめ。事業採算性の必要性に気づいた26才の原さん。自分に欠けているものに向き合うことができた、と話します。

当時は転職が良しとされない時代で、「キャリアアップ」という言葉すらありません。ましてや、女性の転職のイメージは良くなく、難しいものでした。
そんな中、自分と仕事に向き合い、気づきを得てチャレンジを続けてきた原さん。店舗開発・営業の経験を通じて、仕事をする上で事業採算性の事をしっかり話せる事は強みになる、と確信します。また、長い人生で経済的基盤となり自分が関心がもてる資格をとろう、と公認会計士になる為の勉強を開始しました。

専門学校に通い、勉強に励む毎日。しかし、思うようにはいかず、6回試験に落ちてしまいます。30代になり、学生時代の同級生は社会で活躍している。一方、自分は家族に心配をかけながら、受かる保証もない試験の勉強を続けている。焦りと不安が押し寄せてきました。「自分で決めた事だけど、このままでいいのか?」と、葛藤しながら勉強をしていたと振り返ります。

5回目の受験の時、「本当に続けていいのか?今後の人生をどうするのか?」と自分自身の心のドアをノックし、問いかけた原さん。扉の奥の自分が、「諦めたらあかん!」と訴えてきたそう。ここまで来たら、回数で踏ん切りをつけるのではなく、合格するまで続けようと誓います。そして、ついに合格。「やったー!」というより、「やっとこの生活がやめられる、やめていいんだ…」という安堵の気持ちが大きかった、と笑います。

監査法人で9年勤めた後に、期間限定で大阪市役所に入庁。行政という世界を見て、理解・吸収したいという思いがありました。民間の価値観しか知らなかった原さんは、「別世界だった」と語ります。今までの仕事で培ったノウハウが役立たない。それは、前提・仕組み・価値観などが大きく違うから。そういう事を理解しながら、仕事を進めていかなければならない事はとてもいい経験だった、と感じています。

国や行政の仕組みに触れ、視野や奥行きが広がり、一市民の時には気づけなかった事を知る機会にもなったそう。また、退庁後の時間にMBAを学ぶ事もできた、と笑顔で話します。そして、公認会計士事務所を開業。公認会計士になってみると、この職業は意外と様々な事ができる事に気づいた、と言います。

“Connecting The Dots”

原さんは協会の活動やボランティアなど、積極的に取り組んでいます。本業以外の事に関わる事で、幅広い知見を得る事ができ、本業に取り組む際に、お客様に情報を噛み砕いてお伝えできたり、本業に活かす事ができています。本業ではない事をする事で、知識だけでなく人との繋がりも生まれ、結局、自分に戻ってくる。まるで、“ブーメランのように帰ってくる”と語ります。

現在、親御さんの介護を担っている原さん。本業以外での関心ごとがたくさんある中で、今チャレンジしたい事は、この介護の経験を誰かの役に立つ形にする事。
公務員時代、介護保険の監査の仕事に携わっていた経験があり、介護に直面していなくても早めに動かないといけない、と感じていました。そこで、介護関連の本を読んだり、知人に経験談を聞いて参考にしていました。

原さんの場合は、介護を身近に感じて動くきっかけがありましたが、一般的には介護が必要になった時に、すぐに情報を取り込めるものではない、と言います。
だから、高齢になった時の生き方・住まい方に関する情報に、当たり前に触れる事ができる環境を作りたい、と考えています。すると、介護や高齢者に対する心のハードルがじわじわ溶けていくのでは、と語ります。

原さんはご自身のキャリアの軌跡を振り返り、スティーブ・ジョブズの『Connecting The Dots』の思想に共感しているそう。ひとつひとつは点かもしれないけれど、後からすると全部が繋がっている。今している事が自分にとって必要と思う事であれば、信じてやってみる。そして、違うと思ったら変えればいい。

何が必要かどうかは、経験を積んでいく事で精度が高まるので、怖がらずに経験を積んで欲しい。また、うまくいかなかったという事も経験になる。色々な事に挑戦する姿勢の大切さを力強く語って下さいました!

気づきを得て新しい事に挑戦し、経験を積まれてきた原さん。自分のしたい事や挑戦を続けているうちに、自然と社会課題にも向き合い、豊富な経験をもって解決を目指し、生きやすい社会の構築に尽力されています。相談したくなる・教えてもらいたくなる包容力を持ち合わせ、「1人でも多くの方の力になれたら」と語る爽やかな笑顔が印象的でした。

原さんのキャリアに触れ、アドバイスを頂き、背中を押してもらえた気がします。公認会計士や介護のお話など、まだまだ聞き足りません!次回のご登壇を楽しみにしています!

【原 繭子】
公認会計士 / 原公認会計士事務所 代表
『これまでの私を振り返ってみると、
自分が取り組んできた社会課題は、「女性」、「働くこと」。
それに加えて、「介護」も年々とても重要な社会課題だと考えています。』