2023年8月3日のハイパー縁側@淀屋橋は、三宝由香さんをゲストにお迎えしました!
テーマは 「Sustainability Challenge〜イベントを、持能可能なものにしたい〜」

エクスペリエンスマーケティングカンパニー・株式会社博展にお勤めの三宝さん。人の記憶に残る体験という手法を使い、ブランドコミュニケーションや販売促進のサポートをしている会社で、三宝さんはマーケティング部とサステナビリティ推進部を兼部。4月に東京から大阪に異動して来て3ヶ月が経つ中、同社の認知度を広め、接点を作る活動に取り組んでいます。

「大阪はご飯も美味しいし、物価も東京に比べ安い。そして、人がフレンドリーであったかい」と、大阪の印象を話します。淀屋橋のまちは、老舗の企業や歴史的な建物が多く、人との交流が生まれる街というイメージがなかったけれど、「GAS STAND」を訪れるようになり、イメージが変わったそう。

高麗橋にある大阪の事業所は、今年で9年目。これまで、社員が地域の方とコミュニケーションをとる機会や、地域との結びつきはあまりありませんでした。「このような場はありがたい」と、笑顔の三宝さん。これから活用して繋がりを作っていきたい、と考えています。

三宝さんは転勤族の家庭で金沢に生まれ、東京・福井・新潟で育ちます。性格はおとなしめでしたが、自分の意志をしっかりもっていた三宝少女。雪遊びをしたり、外で元気いっぱいに遊ぶ子供時代でした。中・高校生を新潟で過ごした後、社会学を学びたい、と東京の大学に進学し上京。気づいたら、イベントの学生団体に所属し、のめり込んでいたと振り返ります。

学生団体では年に2回、名だたるアーティストを呼ぶ音楽イベントを開催していました。協賛も集客も広報も自分たちで担い、全てを作り上げるイベント。しかし、そのイベントが大失敗。赤字を叩き出し、様々なバッシングを受けてしまいます。「団体をたたむか?」という程のダメージでした。

そんな中、三宝さんは“逆にイベントって面白い”、と感じたと言います。オンライン上での文字媒体では、何かを発信するパワーにはなかなかならない。一方、人々が一同に集まり同じ時間を一緒に体験するイベントは、「媒体としての威力が、ものすごくある!」と、イベントの可能性を感じたと語ります。

そんな経験を経て、博展に入社した三宝さん。プロデューサーとして、展示会のブースや出版社のイベントなどに3年ほど関わります。しかし、そこで衝撃的な様子を目の当たりにします。あるイベントで、設営に時間がかかり、会場に延長使用料を支払ってまで高いクォリティの完成を求め、みんなで造作物を作り上げていました。

しかし、イベントが終了し撤去するとなった途端、ハンマーを持って壊していきます。そこには、分別もされていない、大きなゴミの山が出来上がっていました。「イベントが好きで、この会社に入ったのに…」と、イベントがもたらす環境負荷の大きさを、実感せざるを得ませんでした。

“現状を変えたい”

イベント自体は、“社会や経済にプラスの影響を与えるもの”と考えていましたが、環境面でみると大きな負荷がかかっているという現実。当初、イベントで廃棄物が出る現状について、「しょうがないのかな…」という気持ちもあったと打ち明けます。しかし、「この現状を変えたい!」と、社内で活動する先人がいて刺激を受けた三宝さん。昨年から、現状を打破していく活動に参加し始めました。

数年前から、会社自体も持続可能な社会の実現に向けて、取り組みを開始。博展は、アメリカで生まれたサステナビリティを推進するグローバルコミュニティ(サステナブル・ブランド)の、日本での運営を担っています。事業の中にサステビリティを取り入れ、ブランドの価値を高め推進していく活動だそう。

運営している身として、自分たちが提供しているイベント自体も環境低減を目指すべきという考えから、ゼロ・エミッション型イベントの実現に向け、排出物とCO2の実質的排出ゼロに取り組んでいます。

具体的には、まずはクライアントとサステナブル方針へのコミットメントについて検討。現時点のCO2排出量を計測します。イベントの制作図面からCO2排出量を算出し、そこからどのように減らす努力をしていくのかを考えます。

例えば、1回の使用で廃棄する素材についてはファブリックで代用したり、接着剤を使わずにマテリアルリサイクルに回せる工法を採用したり、様々な工夫を凝らします。その上で、最終的に出てしまう廃棄物に対してはカーボン・オフセットを適用し、これらをどんどん繰り返していく事で、実質的な排出をゼロにしていく、と三宝さんは説明します。

また、「使った後の処理の部分まで考えたものづくり」が大切、と力強く語ります。最近では、展示会のブースでよく利用されるパンチカーペットを、最初から敷かないという選択をし、「そもそも捨てるものは使わない」と判断する時もあるそう。

ただ、見栄えがしなかったり質素に見えてしまうという難点も。そこで、見た目の装飾の派手さを求めずとも、環境音楽などで五感にうったえる体験を提供する、という別の角度から空間の価値を高める方法も。

また、パンチカーペットを粉砕して押し固め、パネル材のようなものに作り変えたり、廃棄物を別の建材に変えよみがえらせるというチャレンジにも挑戦しています。このチャレンジは、エキスパートを育てる事を目的に社内で始まった「サステナビリティ・アンバサダー制度」のメンバーのアイデアだそう。

営業・制作・クリエイティブなど、様々な職種のZ世代の若手社員が集い、サステナブルなイベントの為に何ができるのかを考えアクションを起こす活動。ワークショップなどを行い、様々なアイデアが生まれる場となっています。

イベントをサステナブルにするという事は、想像しにくく、ある意味矛盾している事。だからこそ、時間もかかることだし自分がどれだけ意志をもって続けられるか、という事が大事、と三宝さんは言います。

会社の売上げがどうこう以前に、会社の考えに賛同し、“自分ごと”として動いていき、そのモチベーションを保っていきたい。その為にもやはり仲間は必要。地域の方や企業の方との繋がりを増やし、協業していきたい、と考えています。サステナビリティ活動も、業界全体で取り組む事が重要なので、同業者との輪も広げていきたい、と語って下さいました!

“イベントを、持続可能なものにしたい”、落ち着いて話す中に、強い意志を感じます。そんな三宝さんに、先輩・後輩・同世代・あらゆる世代が刺激を受けている姿が印象的でした。
環境負荷のないイベントが当たり前となり、胸を張ってイベントに取り組める世の中に向けて、イベントの持つ力を信じ、走り続けている三宝さん、応援したいですね!

【三宝 由香】
株式会社博展 マーケティング部 兼 サステナビリティ推進部
リアル・デジタルの領域を問わず、より良い“体験”の場を創り、企業や社会の課題解決のためのコミュニケーションをデザインする株式会社博展に、2019年に入社。企業の展示会を中心としたマーケティング施策の支援に携わり、様々な業界のクライアントを担当する中で、イベントにおける産業廃棄課題を目の当たりにする。
現在、イベントや空間づくりにおけるサステナビリティの推進をミッションに、持続可能なイベントのあり方を模索しつつ、社内外の接点づくりに取組む。
株式会社博展