2023年8月1日のハイパー縁側@淀屋橋は、吉住博樹さんをゲストにお迎えしました!
テーマは 「社会を育てる〜越境学習で広がる、社業と社会活動の交点〜」

生まれは兵庫で、育ちは奈良の吉住さん。ご両親は引っ越しが多く、転園・転校を繰り返す子ども時代を過ごしました。「長距離遠足に、何回も出かけているみたい」と、プラスに捉えていて、転校する度にチヤホヤされる「キラキラ期」を何度も経験できた、と笑います。
今回のテーマである「越境学習」の原点に、無意識になっているかもしれないと思う反面、そういう素地がない方が環境が変化した際、衝撃が大きく学びが多いのかもしれないとも感じる、と語ります。

そんな吉住さんは、高校生の頃からカロリーメイトが大好物。現在も常備するくらい大好きで、もちろん登壇前にもカロリーメイトで栄養補給済み。「カロリーメイトを超えるものを作りたい!」と、化学を学べる学部を希望し受験しますが、点数が足りず断念。物理系の工学部に進学することになりました。

進学した工学部では、建築・土木・造船の中から専攻を決めます。大阪大学の造船(船舶海洋工学)が日本一の看板を掲げていたのもあり、造船(船舶海洋工学)を選択した吉住さん。「ここでは、カロリーメイトは作れない…」と夢は諦める事になりましたが、造船(船舶海洋工学)に触れてみると思いのほか面白く、大学院にも進学して6年間学びました。

造船業の業界は、深刻な人手不足。3年生の頃から、インターシップで造船会社に2週間ほど丁稚奉公する事もあり、学外にでる機会が多かったと振り返ります。
そのまま造船業に携わると思いきや造船(船舶海洋工学)以外の学びも得た方が良い、という在籍していた大学の当時の考えの元、建築系の学問も副専攻的に学びます。そして、当時から話題になりつつあった、コミュニティ・デザインに興味をもちます。

工学の世界では、「いかに早く最適な答えを見つけるのか」に価値を見出します。しかし、コミュニティ・デザインでは、人と人とのコミュニケーションのあり方や人の死の受け止め方など、答えのない・科学技術では解決が難しい問題に触れる事になりました。効率化するのではなく、どう折り合いをつけるのか・どのように解釈するのか、という事を学んだと話します。

“まちをつくるのは人”

当初は、そのような感性や感覚がなかった吉住さん。持続可能なまちづくりがテーマのグループディスカッションの授業では、利便性・経済性を根拠にした、効率化を重視した意見を言い放ちます。すると、“まちをつくるのは人”なので、効率化だけでは持続可能ではない。持続可能の定義が違う、と反論を受けることに。そこで、とても失礼で勝手な考えを言ったことに気づき、改めて当事者の気持ちを想像し、考え直しました。これをきっかけに、この世界が面白い・もっと学びたいと感じるようになったそう。

吉住さんはコミュニティ・デザインを通じて、今までとは全く違う初めての価値観に触れ、スッと吸収できたと言います。冒頭で話していたように衝撃が大きかった分、もっと学びたいという欲が湧き、コミュニティ・デザインに関する本を読み、インターシップに参加したり積極的に学んできました。

そして、大阪ガスの先輩である山納さんがコミュ二ティ・デザインに取り組まれている事を知り、大阪ガスに入社を希望します。入社時には「私は、山納さんのようになりたいです!」と、猛アピール。「多様性枠の採用だったのではないか」、と笑います。

大阪ガス入社後、2年前からは「NPO法人 健康・生きがい就労ラボ」の理事としての役割も担っています。もともと、社会貢献活動のひとつとして会社が行っていたものですが、コロナ禍に突入し、対面が難しい状況で続けていく事できるのかどうかを検討していく事となりました。
その事務局をしていた吉住さん、「持続可能な形にするためには、法人化した方が良い」と決断した担当者と共にNPO法人の立ち上げに関わり、同時に理事に就任して活動してきました。

シニアの方の健康寿命を延ばす事をミッションとする「健康・生きがい就労ラボ」。働く環境が続くと、生活に張りが出て健康寿命が延びるという研究もあり、働く場を提供しています。また、スマホがないと孤立する可能性もある現代社会で、シニア世代がしっかり体得できるスマホ講座を開催。そこで使いこなせるようになったシニアの方が、次は講師となる事で就労の機会にもなっています。

コロナ禍で「死」は急にくることを実感せざるを得なくなり、遠いと思っていたシニア世代を以前より身近に感じるようになりました。また、「死」を課題として感じているシニアの先輩方に触れ合える事や、生き続ける苦しみのようなものも知ってみたい、という事も「健康・生きがい就労ラボ」に参加した理由だったと話します。

現在、吉住さんはその頃と部署も変わり、プライベートで関わっています。属する部署や組織が変わっても、自分のやりたい事ができる別の組織・場があると、心地よく自分の力を発揮できるのではないか、と考えています。
今日のテーマである「越境学習」とは、自分の組織とは違う組織に属して、そこで思い切りやりたい事をやってみる。そして元の組織に戻り、組織について考え直してみる。その往復活動だと吉住さんは捉えています。

“仲間はいる”

「越境学習」の良い点は“味方になってくれる人は、どこかにいる”という事に気づけること。誠意をもち、「これがやりたい!」と言い続け、手足を動かし続けていると誰かが見てくれている。そのことで根拠のない自信をもつ事ができる。根拠はないけれど、仲間がいる気がする。希望をもち、前に進んで行く事ができると力強く語ります。

憧れの山納さんが始めた「Talkin’ About」。まちづくりに関係する先駆けとなる人を話題提供者としてお招きし、それに興味をもつ参加者が集い語り合います。その「Talkin’ About」の若手版として、スピーカーも参加者も概ね35才以下である「Talkin’ About YOUTH」を立ち上げ、運営。
話を聞いて学ぶ事に加えて、“一緒に事を作り、始める”をコンセプトとして掲げています。小さくてもいい、合流イメージをもち、繋がりを持ち続けることを大切にしたいと話します。

また、「何か分からないけど、ワクワクしたい」「今のモヤモヤを、分かち合いたい」という方が集まる「Talkin’ About YOUTH LIGHT」と名付けた会を開催。堅苦しくない、ゆるい繋がりがあってもいいのでは、と吉住さんは考えています。
「GAS STAND」の夜営業が始まったので、集まったメンバーとこの場をどう盛り上げていこうか、と勝手に検討中だとか。参加資格は概ね35才なので、気持ちが35才の方も参加可能だそう。

コミュニティ・デザインを学び、越境学習を経験する事で、さらに豊かな人間力を身につけようとする吉住さん。ただ、社会課題に対して関心がない人への苛立ちも正直ある、と打ち明けます。課題の当事者ではない人が課題に気づかない事で、課題から抜け出せない人が大変な思いをしている事実、そんな社会に怒りや苛立ちの感情を抱き、それが原動力になっている部分もある。

吉住さんは、怒りの原動力では対立しか生まない事も理解しています。対立で終わらせるのではなく、対立を経て、そこから対話をして近くなるというやり方しか今は持ち得ない過渡期、と自身を分析。みんなが笑顔になる社会を目指すには、少しでも課題をシェアする事・関わる人を増やす事が必要だ、と考えています。

また、「会社からのタスクをこなすのは“会社人”。会社を通じて、自分がやりたい事を実現する。自分が成長する事は手段であり、その手段によって社会を良くしていくのが“社会人”。」そんな考えも取り入れ、自分と常に向き合い、自分や社会に足りない事を探求し、吸収しようとする姿勢をもち続けています。

今後の目標としては、3才のお子さんの親として、子どもと向き合う大人になる事。他の人のやりたい事の伴走をして、形を作っていく事。それも自己満足ではく、周りの人も共感できるようなものにする事。お金が廻る仕組み、新規事業を立ち上げる事。と、具体的な目標を教えて下さいました!
これからの吉住さんの活躍が、ますます楽しみです!

【吉住 博樹】
大阪ガス株式会社 エナジーソリューション事業部 事業推進部
2018年大阪ガス入社。現在は家庭向けのインターネットサービス事業(さすガねっと)や新規事業創出業務を担当。
本業の傍ら、2023年度から社内外の概ね35歳以下の社会課題や新規事業に関心のある若手がつながる場「Talkin’About YOUTH」を、大阪ガスネットワークと共に、自身を含めた若手有志で企画・運営。
会社や所属の枠を超えて、個々人のやりたいことの実現を支え合い、実際に形にしていく活動体、コミュニティになっていけばと思い、試行錯誤しながら運営している。
社会活動として、NPO法人 健康・生きがい就労ラボ 理事、認定NPO法人 Gift 正会員。
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