2023年7月21日のハイパー縁側@淀屋橋は、白木美由紀さんをゲストにお迎えしました!
テーマは 「HD4プロジェクト〜ガスビルから、次の100年を創る〜」

「まち行く人から、異様な目で見られるのがいいですね」と笑う白木さん。大阪ガスの本社ビル、通称“ガスビル”のリノベーションとその西側の社有地に高層ビルを建設する「HD4プロジェクト」を担当していて、本日のハイパー縁側の舞台「GAS STAND」を企画・運営しています。
Hは南側の平野町、Dは北側の道修町を表し、4丁目に位置することから「HD4プロジェクト」と呼ばれ、白木さんは2019年から関わっています。

ビルが着工するまでの期間、西側のビル建設予定地の一角を「GAS STAND」と名付け、ワークショップ形式でベンチに色を塗ったり、キッチンカーを呼んだり、様々な活用をしている真っ最中。御堂筋から1本入り、程よく裏側なので色々とチャレンジできる可能性がある場所、と白木さんは話します。

時間もお金も限られた中で、そこにあるものを有効活用しながら日々変化している「GAS STAND」。白木さんは、みなさんの意見を聴き、試行錯誤しながら何でもチャレンジしたい、と意気込みます。そして、心地よい空間をつくり、関わる人や仲間を増やし、これからのまちづくりに繋げていきたいと考えています。

歴史あるガスビルを今後どうしていくかという事は、全社をあげてライフワークのように常々議論してきたそう。白木さんが担当する2019年より前から既に「HD4プロジェクト」は始動していた、と言います。

老朽化したビルは、取り壊して新しく建て替える事が少なくないですが、ガスビルに関しては情緒的な側面もありつつ、何がベストかを考えぬき、きちんと評価したと話します。そして、西側に高層ビルを建てる事でバランスをとりながら、やはり残した方が将来にとって良い、という結論に至りました。

白木さんは、京都府長岡京市ご出身。関西の大学に進学し、建築を学びます。設計や施工をするよりも、長く建物やまちと関わりたい、とデベロッパーを志望し、2010年に大阪ガス都市開発へ入社。分譲マンションの企画・設計・施工などの技術部門を経て、「HD4プロジェクト」の担当となりました。
学生時代に近代の建築や、都市の歴史研究を専攻していた白木さん。近代建築を代表する建物の開発に携われることに喜びを感じています。

1933年に南館が竣工したガスビルは、1966年に北館を増築。そして、今回が初めての大規模改修となります。開館から100年近くが経ち、次の100年を創るタイミングでこのプロジェクトに関わることができ、奇跡だと笑顔で語ります。

ガスビルができた当時は、家庭にガスはまだまだ普及していませんでした。都市ガスを使った暮らしの提案・近代文化の殿堂を目指し、当時はまだ珍しい西洋料理を提供するレストランや講演場・美容院・料理教室などもあり、おしゃれをして出かけるデパートのような存在だったそう。時代が流れ、高度経済成長期に入り北館が建つと、ガスビルはオフィスビルの役割を果たすようになり、以前のように一般の方々が頻繁に出入りする機会は無くなっていきました。

開館から90年を迎え、御堂筋のシンボルとなっているガスビル。白木さんは、ガスビルができた当初のように、みなさんに体感して使って頂ける空間になればと考えています。現在もレストランと料理教室は引き継がれており、先人の想いや精神が繋がっています。今後も、責任感をもち、どこまでも暮らしに身近な存在として寄り添っていきたい。そして、さらに地域やまちに開いていく。

白木さんはその為に、建物の完成まで何もせずに待っているのではなく動きながら考えたい、と「GAS STAND」を企画し、様々な活動に取り組んでいます。その中で白木さんが大切にする事は、“やりっぱなしにせず、次に繋げること”。イベントなどは往々にして、開催した事自体が成果になりがち。やったらやりっぱなしになってしまう、それでは意味がないと話します。

“繋ぐ”

白木さんは、“どのように次に繋げていくのか”を常に意識するようにしています。「ここでやり始めた事が100年先に繋がっている。ここで始めた事で人脈が広がり、ここでの場づくりの経験が開発の際に種火として残り、大きなネットワークとなってビルやエリア全体に広がっていけば良い」と考えています。

白木さんの好きなまちである淀屋橋。昨今は梅田に移転する会社も多いそうですが、現在もビジネス街としての用地が大半を占めます。御堂筋は昔から老舗企業や大企業が軒を連ね、敷居が高くなっていて、まちとして新陳代謝が行われていない。
白木さんはこのままではまずいと感じ、未来を担う企業やスタートアップが交じる事ができるような場所を創っていきたい、と考えています。

また、このエリアに元々ないボリュームの高層ビルが建ちます。そうなると、ジェントリフィケーションが起こり、綺麗すぎるまちになるのではという懸念も。御堂筋から1本入るとガラッと雰囲気が変わり、個性的な面白いお店も多いため、昔からある雑多な感じをどうにかして残していきたい、と話します。

1年後の「GAS STAND」は、「いい感じに、ごちゃっとしていて欲しい」と白木さんは言います。イベントがあるから人が来るのではなく、何もない時に人が来るような場所。仕事帰りにちょっと休憩して帰る、知り合いがいればちょっと雑談して帰る、そんな立ち寄りたくなる場所にしたいと話します。

ちょうど、白木さんの座る位置から夕陽に照らされるガスビルを眺めることができます。昼間の暑さは落ち着き、風に吹かれ、ビールを呑む。「マニアにはたまらなくいい感じ」と、笑顔の白木さん。
「1人の時間が心地よければ、みんなにとっても心地よい空間なのではないか。色々と試してみて、失敗したらやり直して、“何もない時に人が来るような空間”を創っていきたい」と語ります。

会場からは、「この場所に、この時間帯に、こんなに人が集まる事に驚いた」という感想も。40年お勤めの方も、「ここにこんな長時間いるのは初めて」と話されます。また、空間がだんだん変わっていくのが面白い、と変化を実感されています。
私有地とパブリックの間であり、喧騒ではない「GAS STAND」。まさに縁側のような場所に感じられます。

そして、HD4プロジェクト完成後は本当にたくさんの人に来て欲しい。訪れる人々が思い思いの自由な過ごし方をして、活気のある風景を創りたい、と話します。

ただ、場所を作れば人が勝手に集まるものでもありません。「GAS STAND」を通じて、仲間を増やしながらみんなで考えていきたい、力を貸して欲しい、と語ります。淀屋橋界隈でお店をしている方の話もきいてみたいし、アナログ的な「やってみたいこと募集箱」を置いても面白い、と盛り上がりました。

最後に、「みどりを神格化しているかもしれない…」と呟く白木さん。やっぱりこの空間にグリーンを増やして心地いい空間を創りたい、と直近の目標を教えて下さいました!

ますます進化していく「GAS STAND」。“この空間が、今後の100年に繋がっていく”、壮大なビジョンをもちながら、着実に一歩一歩、前に進む白木さんの姿が印象的でした!

【白木 美由紀】
大阪ガス都市開発株式会社 アセット事業部 第1開発部
2010年大阪ガス都市開発入社、分譲マンションの企画・設計から竣工までの技術部門を担当。2019年より現在の部署へ異動し、大阪ガスビルのリノベーションと西側に隣接する複合ビルの開発を担当している。2023年5月からは大規模開発に向けた準備運動として、工事着手までの期間限定のトライアルの場としてGAS STANDを企画、試行錯誤しながら運営している。
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大阪ガス都市開発株式会社
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