2023年6月20日のハイパー縁側@中津は、松尾政人さんをゲストにお迎えしました!
テーマは 「カタログの無いものづくり展“発起人が語るものづくりへの想い”」

中津在住歴7年。この辺りはよく自転車で通るという松尾さんですが、ご出身はJリーグ「サガン鳥栖」の本拠地である佐賀県鳥栖市。松尾さんもサッカー少年でした。ご実家は工務店を経営しており、工務店兼住居で育ちます。
あちこちに木材が転がっていて、遊び道具は端材と釘とトンカチだったそう。建設途中の現場に連れていかれることもあり、ものづくりを身近に感じていました。

中学生からは地元を離れ、大阪で寮生活を始めます。そのまま神戸の大学・大学院へと進学して建築を学び、大阪で就職。東京に行くと埋もれちゃう気がして、大阪で仕事する方が面白いと感じていた松尾さん。インテリアデザイナーとして、大阪で10年ほど勤務しました。

そして2020年、店舗デザインなどの空間デザインを軸に、『M8 design sutadio』を立ち上げ独立。 様々なジャンルのデザイナー・ものづくり企業・クライアントの方々と協業したい、という想いから「M8(mate)=仲間」と名付けました。

しかし、独立後すぐにコロナ禍となり、仕事がなくなってしまいます。仕事仲間である材木屋さんや建材メーカーの方々と話していても、「展示会もできないし、営業もかけられないし、なす術がない…」と、困り果てている様子。そこで、松尾さんが「合同展示会のようなものしませんか?」と提案して始まったのが、『カタログの無いものづくり展』。第1回目は、事務所を構える中崎町で開催しました。

中崎町のカフェやギャラリー、宿泊施設など6箇所を会場とした、まち回遊型の展示会。「小さい展示会が、同時に開催されているイメージ」と説明します。廃棄布をアップサイクルした建材や、廃蛍光灯を再利用したリサイクルガラスなど、こだわりの詰まった建材や素材を展示しました。

「カタログを持たずにものづくりをしている企業や、カタログでは伝えきれない、ものづくりの背景や物語を伝える展示会にしたい」という想いを込め、『カタログの無いものづくり展』と銘打ちます。
初回は3社から始まりましたが、地元の企業や賛同して下さった企業がどんどんと集まり、最終的には14社が参加することに。「会場を増やしたり、流動的な対応をした」と振り返ります。

100社集まるような大きな会場での合同展示会は、効率的な集客が見込めます。一方、『カタログの無い展示会』は非効率的かもしれない。ただ、各会場にいる滞在時間が長く、じっくりと見て頂ける。来場者の方に、それぞれの企業がどんなものづくりをしているのかを知ってもらえます。

また、松尾さんが仕掛けて出展企業同士が繋がったり、自然と横の繋がりができて、コラボするということも頻繁に起こっていて、そこも面白いと語ります。松尾さん自身も、『カタログの無いものづくり展』を開催してからより現場に出向きたくなり、製作現場の工場に通い、ものづくりを肌で感じているそう。

“人の想いと熱量”

その後、年に2回開催した年もあり、中崎町や大阪港を舞台に計4回開催しました。「続けていくのには、熱量がいる」と、松尾さんは言います。自分の気持ちだけでは出来ないし、時間もかかる。出展して下さる企業の想いや、一緒に取り組んでくれる人たちの想いがあるから続ける事が出来ている、と語ります。

そんな中尾さんは、「ずっと住んでいる中津でやりたいと思っていた」と、第5回目の開催地を中津に決定。中津は、住んでいて“まちが面白くなる感”がするし、愛着もある。
もともと、まちの人との付き合いが多い方ではなかったけれど、展示会をきっかけに知り合いも増えた、と話します。中崎町や大阪港で開催した時とは「またちょっと違うな」と感じだそうで、中津は“繋がりが深いまち”と表現します。

今回の中津での『カタログの無いものづくり展』では、7箇所が会場になっています。西田ビルの2階も展示会場で、縁側で出展企業のトークイベントも。他にも、中津商店街にある解体後の建物も会場になっています。土がそのまま見えて、スケルトン状態。
ここでは、「眺木展」という企画展示も開催。それぞれの会場自体も面白いので、そこでどう展示されるか、というのも見所の1つと、語ります。

素材・建材だけでなく、輸入壁紙施工会社の現場で出た廃壁紙を使い、皮職人がブックカバーを作成するコラボレーション商品も展示。また、木のスツールの座面の素材を変えるプロダクトや、テーブルの足をアクリル・天板を木という異素材を組み合わせた家具も。
素材を変えるとイメージがガラッと変わる、と松尾さん。そのものを作っている方は、もっていない視点での組み合わせなので、「お互いが面白い」と、話します。

このようなコラボレーションが、松尾さんが空間デザインをする時にも生きています。以前、中崎町で会場として利用させてもらったカフェが移転する際に、内装デザインの依頼を受け、出展企業の素材を使ったそう。

“素材との出会い” “人との出会い”は、松尾さんの中でモチベーションの1つになっていて、とても楽しいと語ります。また、来場して下さる方にとっても、新しい素材との出会いや、ものづくり企業との出会いが何かの刺激になってくれたら、と考えています。

最近、マテリアルデザインが生まれている国・オランダに興味があるという松尾さん。インテリアデザイン・建築デザインなどありますが、そこに行き着く前の、プロダクトになる前の素材。それをデザインする事に面白みを感じています。

今後は、そんなオランダや海外で展示会をしたい。それも自分だけではなく、『カタログの無いものづくり展』に出展して下さっている企業や、デザイナーのみんなとチームとして参加したい、と目標を教えて下さいました!

常に仲間を大切に、人と人との関係を繋ぎ、新しいものを生み出してこられた松尾さん。デザイナーでありながらも、身近にものづくりを感じていた幼少期が原点となり、松尾さんならではの感性で『カタログの無いものづくり展』を開催されてきました。落ち着いて淡々と話される中に、仲間愛・中津愛・素材愛など、熱いものを感じます。

最後は、展示会も中津のまちも楽しんで欲しい、と爽やかに語って下さいました!
これから、仲間たちと海外進出される日が待ち遠しいです!

【松尾 政人】
M8 design studio(メイトデザインスタジオ) / デザイナー / カタログの無いものづくり展 発起人
佐賀県出身、中津在住。1986 年生まれ、寅年。
実家が工務店で木材と戯れる幼少期を過ごし、中高と大阪の学校で寮生活をしたのち、大学、大学院で建築を学ぶ。
その後、大阪で商業空間の設計施工の会社に入社。
インテリアデザイナーとして10 年ほど働いたのち、2020 年にM8 design studio として独立。
独立後すぐにコロナ禍になり商空間の仕事がなくなったこともあり、仕事仲間の材木屋、建材、素材メーカーの方などを巻き込んで「カタログの無いものづくり展」というものづくり企業を紹介する展示会を始める。
店舗設計やオフィス空間の設計などの空間デザインを軸にしながら、ものづくり企業やクリエイターを応援する取り組みを行う。
カタログの無いものづくり展は独自のものづくりを行うメーカーやサプライヤーなど、ものづくりや空間づくりに関わる企業を集めた編集型の展示会です。独創的なものづくり企業や、こだわりの詰まった素材や建材をもっと多くのものづくりや空間づくりに関わる人達に知って欲しい。という思いから2020 年より始動しました。
デザイナー個人としても大事にしているのは『カタログには載ってない』対話を通して共に作り上げるものづくり。
デザイナー・クリエイターと、ものづくり企業がパートナーとして一緒に作り上げるオリジナリティのある取り組みのきっかけを増やしていきたいと思っています。垣根を超えたリアルな繋がりを大事にし、じわりじわりと輪が広がるそんなコミュニティを作りたいのです。
『カタログの無いものづくり展 vol.5』は中津のまちに散らばる展示会場を歩いて回る、まち回遊型の展示会として6/23,24 の二日間で中津で開催予定です。
ものづくりやデザインに興味がある方も、中津というまちに興味がある方も、是非この機会にご来場ください。
カタログの無いものづくり
Instagram:@creative_without_catalogue
Instagram:@m8matsuo