2023年6月16日のハイパー縁側@中津は、石原侑美さんをゲストにお迎えしました!
テーマは 「Elämä〜フィンランドから学ぶ豊かで幸せな生き方〜」

「kippis(キッピス)!」フィンランド語で賑やかに乾杯!フィンランドの湖や森を連想させる、鮮やかなグリーンのワンピースがお似合いの石原さん。日本未発売のものだそう。本日の縁側は、フィンランドの空気感が漂います。

大阪の豊中市出身の石原さんは、大学卒業後に東京で起業。10年ほど東京に住んでいましたが、コロナ禍での閉鎖的な暮らしに嫌気がさし、結婚を機に旦那様の実家の飛騨高山に移住することを決断。以前、フィンランドに滞在した際、1日単位で森や湖に差す陽の雰囲気が変わる事、寒さや暗さが変化する事を実感していた石原さん。フィンランドの自然に触れた事で「田舎に移住したい」という思いをもつようになり、飛騨高山にたどり着いた、と話します。

「昨日まで、田んぼの水はってたのになぁ」「カエルの鳴く声が、少なくなったなぁ」と、飛騨高山の暮らしでも、日々の変化を肌で感じる毎日。少しずつ自然は移ろい、季節は4つではなく24くらいあるのではないか、という感覚をもっています。

フィンランド生涯教育研究家として活動して7年。「単純に、オタク気質なんです」と笑います。中・高生のときは、アニメやお笑いにどっぷりハマっていたそう。今は、その対象がフィンランド、と話します。もともと石原さんが取り組んでいたのは、台湾と韓国の比較研究。韓国や台湾に滞在し、日本の文化がどのくらい浸透しているのかを調べていました。

あるきっかけで、フィンランドを訪れることがあり、本場のサウナを体験します。日本のサウナとは違い、ロッジなど外のサウナは男女共に真っ裸でOK。サウナに入った後は、裸のまま透明度の高い美しい湖へ。暖かいところから冷たいところに入り、そこからあがると血が全身に通って、身体中が赤くなり温まります。サウナが得意ではなかった石原さんですが、フィンランドのサウナでは、「たまらなく気持ちいい!」と感じました。

その事をフィンランド人に話すと、ドヤ顔をすることもなく、当たり前かのように「ね、生まれ変わった感覚になるでしょ」と答えたそう。この反応にとても衝撃を受け、「フィンランドという国は、小さな幸せを普通に話せる空間なんだ、おもしろい!」と、研究を始めることに。

それまでは沖縄のような暖かい地域で暮らしたいと思っていましたが、やっぱり寒いところがいい、と思うようになり、確実に自分の細胞が変わったと言う石原さん。「サウナが、人生を変えた」と、語ります。

日本のサウナは、90度ほどの高温でドライサウナなのに対し、フィンランドは70度くらい。温度は低めで、湿度が高いので全くの別物、と説明します。サウナ発祥の地フィンランドでは、昔はサウナで出産したり、遺体を洗ったり、“生命の入り口と出口”だったそう。“生きる場所を感じるところ”であり、日本とは意味合いが違う、と言います。

日本ではサウナの入り方においても、道や型を作り、それを順に行う事で結果的に「整う」と表現します。これは、とても日本的だと石原さんは指摘します。一方、フィンランドは「整う」ことは強制されず、整っても整わなくてもいい、平等な空間である事も大きな違い、と話します。

“豊かな習慣”

“人生の入り口と出口”であるフィンランドのサウナでは、お互い腹を割って話す習慣があります。そこでは、人生を振り返り、語り合います。自分の人生を穏やかに振り返る事が、生活の中で日常的に当たり前にあるフィンランド。興味深く感じ、日本にもこのような豊かな習慣や時間があっていいのではないか、と考えた石原さんは、『Elämä』プロジェクトを始動。『Elämä』は、「人生・生き方・命」というフィンランド語の言葉です。

『Elämä』プロジェクトでは、講座やワークショップを通して自分の生き方を見つめることができます。その入り口として、フィンランドの文化などを紹介。飛騨高山でフィンランド的な生活を体験しながら自分を見つめるプログラムや、旅行業の資格をとった石原さんによるフィンランドツアーも開催予定です。

また、高山市の施設を借りて、フィンランドの図書館を再現した図書ギャラリーを運営。他にも、幸せな生き方のヒントになる『よむエラマ』というWebメディアを毎週更新しています。

また、フィンランドと日本との類似点に言及し、日本の和文化の発信もしています。『Elämä』プロジェクトは、フィンランドが素晴らしいという事を伝えたいのではなく、日本でも私でもできるんじゃないか、と希望をもてる事を目的としたプロジェクトだと話します。

それぞれの人に、「〇〇会社の部長」「〇〇ちゃんのママ」「〇〇大学卒業」など、様々な肩書きがありますが、“肩書きを置いていい場所”を意識することが大切、と石原さんは話します。肩書きがつくことで、「こういう人間だ」「こうあるべきだ」という事に、自分自身が囚われてしまう。

季節や気候と同じように、1日1日、自分の気分や思考も変わるのに、それに肩書きや枠を当てはめると、しんどくなってしまう。すると、「少し立ち止まりたいな」という思いが芽生える。そういう方々が『Elämä』に参加し、立ち止まって、心地よい時間を過ごしてくれたり親和性を感じてくれているのかもしれない、と話します。

身ぐるみが剥がされ肩書きがない状態、自分自身の枠が取れるという事が、“平等・対等”の原点なのではないか。そういう状態の人たちが集まらないと、“平等・対等”は実現しないと考えています。

実は、10代の頃にすでにその感覚を持ち合わせていた石原さん。しかし、その時は言語化する術もなく、言語化できたとしても説得力のあるものではなかった、と言います。

そんな石原さんが“平等・対等”が実現されているフィンランドと出会い、そこで見た光景やエピソードを紹介する事で、表現のツールが増え、説得力のあるものになっていると実感しています。すると、「フィンランド生涯教育研究家」という肩書きを自分にはめこむ事が、今はとても心地いいと笑顔で語ります。

「話が通じる人がいる」「共通認識をもつ仲間がいる」ということは、とてもホッとできること。転職や移住のような、人生の大きな分岐点だけではなく、悩みがあり殻を破りたい方・世間とずれているかなぁと感じる方・学生からお年寄りなど、どなたでも『Elämä』プロジェクトにぜひ参加して欲しいと話します。

会場からは、フィンランドに関する質問が途切れることなく飛び交いました。司会やナレーション業もされており、マイク通りの良い声で軽やかに楽しく答えて下さった石原さん。今後は、個性的な顔ぶれが揃う『Elämä』のチームメンバーで、和文化の切り口から海外に発信していく事が野望だと語って下さいました!

【石原 侑美】
フィンランド生涯教育研究家 / エラマ合同会社 代表
大阪府豊中市出身、岐阜・飛騨高山在住。
大学卒業後、フリーター、大学院生を経て、ブランド・コンサルタントとして東京で起業。
20代での起業は前途多難で、競争意識も強く、常に仕事脳で頭も心も体もパンク寸前でした。
そんな私が、フィンランドと出会いハマってしまったのが2016年の春でした。
私がハマったフィンランドは、褒めると耳が真っ赤になるシャイな国民性と、フィンランド特有の「根性論」で耐える人柄のギャップ。
私にとって衝撃的だったのは、ドヤ顔もせず恥ずかしがりもせず「僕の幸せはここでコーヒーを飲むことだ」「私の幸せは海外の人をフィンランドをガイドすることだ」と、フィンランドの誰に聞いても、あっさりと自分の幸せを言えてしまうことでした。
オタク気質が強い私は、「フィンランドの人たちの幸せな生き方を描く文化習慣」を突き詰めたくなって、会社や事業まで立ち上げて研究活動を7年続けています。
自然が多く、人の少ないフィンランドの環境が刺激となり、結婚を機に飛騨高山に移住しました。
現在はフィンランドの研究の傍ら、自治体のブランディングおよび街づくりコミュニティの構築に携わりつつ、人生初めての田舎暮らしを堪能しています。
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