2023年5月30日のハイパー縁側は、山田摩利子さんをゲストにお迎えしました!
テーマは 「関係案内所から生まれる、これからの繋がり方」

ハイパー縁側に登壇されるゲストを何人もご紹介してきて下さった山田さんですが、実はご本人が中津で登壇するのは初めて。ポンポン持参の応援団を含め、山田さんファンがたくさん駆けつけ満員の縁側。恒例のクラフトビールが在庫切れをおこす中、賑やかにスタートです!

山田さんは、音楽大学を卒業後に商社に就職。出産を機に退職しますが、育児と家族の介護を同時に担うことに。そこで、地域の繋がりの大切さに気づいたという経験から、現在は中津のまちの福祉コーディネーターとして、子育て中の方から高齢者の方まで、様々なご相談の窓口を担っています。

2018年、中津の地主さんから築65年の2階建てアパートを「中津らしいテーマ性をもった、文化発信の場所にしたい」と、ご相談を受けました。福祉コーディネーターとして活動する山田さん。高齢者も多く住む地域なので、地主さんと地域の方とのコミュニケーションを取り持ちながら進めることができるのではないか、と依頼を受けます。
そのアパートはとても奥まった場所にあり、建物自体も老朽化していたので、初見は「これ、どないなんのかな?」と、不安がよぎったそう。

しっかりとした耐震改修工事・リノベーションが必要でしたがその後、テナントオフィスにする方向で工事が進み、2022年、アップサイクル文化の発信拠点として『UPCYCLE中津荘』が誕生しました。使われなくなった服や布を使ってエプロンを制作するアトリエや、古本私設図書館、量り売り食材店などが入居しています。
耐震用に部屋の中央に鎮座する柱も、それを活かしてテーブルを作ったり、商品をディスプレイする際にうまく活用しています。

そして、中津荘の1階に『関係案内所なかつもり』を開設した山田さん。関係案内所は市町村からの推薦をもらい、総務省に登録申請をして審査が下りたのち、登録されます。行政が出張所のように開設するところもあれば、『なかつもり』のような形態やカフェ・コワーキングを備える施設も増えています。

名前も「関係案内所」と掲げるところや、カフェ、スタジオなど様々。以前は、関係案内所と言えば移住・定住人口の促進を目的に、地方で開設される事が多かったそうですが、現在は地方だけでなく都市部にも開設されています。

山田さんは『ソトコト』に紹介されていた、「観光だけでなく、地域に住む人の関係も紹介する」という文言に惹かれたと言います。例えば、「家賃0円ですよ」と子育て世代を誘致したとしても、信頼関係ができていないと結局は長く住み続けることはできない。まずは、関係をつくることが重要。“関係を紡いでいく”という考えに共感した、と話します。

『なかつもり』では事業を展開し、キャッシュを生む仕組みができています。飲食店にチャレンジしたい方が集まり、日替わりでランチを提供するカフェを運営したり、ケータリング事業にも取り組んでいます。また、“関係人口を作っていこう”と旅行業の仲間と繋がり、ツーリズム事業も構想中。「関係している人がいるからこそ出来るツアー」や「関係の見える食事」などを盛り込むことを考えています。

福祉コーディネーターである山田さんのところへ相談に来る方は、「明日、介護に繋げられないと大変な状況になる」といった早急な対応が必要な方だったり、「ちょっと気になる人がいるから様子を見てきてもらいたい」と言われ訪問すると、もう扉を開けてくれない状態に陥っていたりと様々。

日々の仕事の中で、「もっと“予防福祉”に触れたい」と感じていた山田さん。その予防福祉への想いも、『なかつもり』を開いた動機のひとつと語ります。

“間(あわい)”

“普段のくらしの幸せ”である福祉を軸に『なかつもり』を開設した山田さんは、『なかつもり』でランチを食べている方に対しても、「お1人ですか?」と、自然に詮索が入ってしまうと笑います。福祉会館での福祉の相談が公的でフォーマルな場、『なかつもり』での会話がインフォーマルな場、しかしそれは両極端のものではなく、両者が交わる“ファジーな感じ”にしたいと考えています。

うめきた2期暫定利用に関わったのも、「都市開発」と「地域の暮らし」は切り離せないものだと感じているから。なのに、開発側と地域の人が繋がっていない。役所の人でさえ、「こっちは国家プロジェクトの仕事で、あなたたちはボランティアでしょ?」という態度で、すごく違和感を感じたと話します。

「お金が発生するか・しないか」ではなく、「価値があるか・ないか」という視点で活動する山田さん。海外では、ボランティアはかっこよくて認められる存在なのに、日本ではそうでない。「質を上げていかなあかん!」と、熱く語ります。山田さんは、せっかくここで生きているんだったら楽しもう、せっかく何かするんだったら主体的に関わろう、という姿勢を崩しません。

『なかつもり』の山田さんの元には、地域のお困りごとから大企業のお困りごとまで、幅広い相談が持ち込まれます。忖度なく、キーワードを伝えながら「この場合ならこの選択肢があります」と、提案するそう。そんな山田さんが最近気づいたのは、自分は「課題」が好きということ。

「課題」って聞いたらピクッとなる、と笑います。どうやったら解決できるのか、方法論を一緒に考えたい性分。それには、マーケティングが必要なので色々と動き廻ります。そして、「これ」って決めるのには5年かかる、と言います。

福祉コーディネーターの仕事も今年で5年目。福祉って何か分からなかったけど、世の中が「ウェルフェア」から「ウェルビーイング」という流れになってきて、じゃあその中で自分たちに何ができるかを探ります。そして、このまちに必要な目標を3つあげ、するべきタスクをたくさん作り、1つずつ潰していく作業。

「目標がないと、進めないんです!」と、語る山田さん。その原点は、幼稚園の頃に音楽の道に進むことを決めて、何事にも目標をもって突き進んできたからと振り返ります。

「関係案内所を作りたい」という相談も受ける山田さん。案内だけではなく、カフェやコワーキングなどの事業を展開する案内所も多いですが、そこで大切なことは、地域性をみて「ここに何が必要なのか」を考慮してビジネスをすること。田舎の地域で、中津と同じようなビジネスをしても意味がないと言います。

また、「とりあえず名前をつける」「とりあえず繋がっておく」という考えは違う、と言い切ります。ビジネスや移住でも何でも、人の相談を受けることは中途半端にはできない。その人の一生を左右するかもしれない。気持ちをしっかり汲み取り、信頼できるところに慎重に繋げるようにしています。

最近、「地域のために何かしたい、地域と連携したい」という会社や団体が多いそう。一通り話をきいた後に、「そんで、本音はどこや?」と山田さんはズバリ核心に迫ります。そうしないとお互いにwin winの関係はできないし、長く続かないと語ります。

今後は中津と他の地域を繋ぐ旅行業に力を入れたい、との理由から早速、添乗員免許を取得した山田さん。実際に添乗員としての経験を積み、構想中のことを実現する為に動き出しています!そして、これからも『なかつもり』を新しい発見や化学反応が起きる拠点にしたい、と力強く語って下さいました!

「あかん、ぜんぜん時間が足らん…」と呟く山田さんに、会場から「分かってたー!」とテンポよくツッコミが。ハイパー縁側終了後は、西田ビル3階の「ヒロセバー」に上がり、山田さんとの楽しいトークは続きます!

【山田 摩利子】
一般社団法人うめらく 代表理事 / 関係案内所なかつもり オーナー
1974 年 3 月生まれ、大阪音楽大学卒業後、一般企業(商社)に就職。
移動体通信事業の営業部に配属。退職するまでの 12 年間、東京本社ではコンテンツ事業部 関西支社ではマーケティングおよび販売促進のチームリーダーとして経営戦略に従事。
出産を機に退職後、主婦の立場で再就職を希望していた折、家族の介護と育児のWケアを経 験。これを機に、地域でのつながりの大切さに気付き、いざという時のつながり、地域の情 報発信・収集について関心を持つ。
2012 年より「主婦が再就職したのは自分の住む町」を キャッチフレーズに地域での活動を開始し、一般社団法人うめらくを設立。
2022 年 4 月に、 自分の住む町大阪・中津に「関係案内所なかつもり」をオープン。
Instagram
Facebook
大阪中津「関係案内所」なかつもり
総務省:全国各地の関係案内所情報