2023年4月28日のハイパー縁側は、徳永祐巳子さんをゲストにお迎えしました!
テーマは 「amu〜まちを編む、人を編む、ことを編む〜」

奈良県奈良市(旧都祁村)ご出身の徳永さん。中津に来るのは初めてだそう。「早く着いたので、歩いてみました。というか、歩いてしまった。」と笑います。「何だこの道は?何だこの店は?」と歩き廻り、吸い込まれるように商店街へ。中津は“いっぱい特集できるまち”と、編集者の徳永さんならではの感想を聞かせて下さいました。

徳永さんは奈良の高校・大学を卒業後、当時奈良で唯一のタウン情報誌を作る会社で、編集の仕事に17年間携わります。「奈良には情報がない」と言われた時代。「ないなら作ろう!」と、初期メンバーが集まった会社に徳永さんは新卒で入社。奈良県全域39市町村を巡り、情報を拾い集め、発信し続けてきました。

当初は編集が得意ではなく、「楽しいことを伝えたい!」というテンションのみでの仕事ぶりで、20代は色々とやらかした、と苦笑い。怒られ、謝って…を繰り返して今がある、「育ててもらいました」と、語ります。

紙媒体中心から、ウェブに移行する過渡期を経験した徳永さん。ウェブは寄ってきてくれるし、与えてくれる。だた、“ときめき”や“出会い”を感じるのは紙。情報誌をパラパラめくり、知らない情報に出会う楽しさがある、と言います。

情報誌を作っていた頃、情報誌を片手に奈良のまちを巡ってくれる人がいたり、特集した店の方が「さらにいい店にしよう」と、やる気のきっかけを作ることができた事はすごく楽しかった、と振り返ります。それは、もちろんウェブでも可能なことですが、“情報を手に取る感覚”は紙ならではないか、と感じています。

また、徳永さんはキャッチコピーに困ったら、本屋を訪れるそう。背表紙を永遠と眺めながら刺激を受け、参考にします。本屋さんは“出会い”や”発見”があり、嬉しいし楽しい。ウェブの便利さは認めつつ、紙は紙の良さがあるので「紙はやっぱり好き」と、笑顔で話します。

目まぐるしく情報が変化する現代。情報のキャッチアップの仕方は、歩きや車で通った時に目にしたり情報通の方に教えてもらったり、インターネットも活用します。しかし、SNSで情報はいくらでもキャッチできますが、徳永さんは“実際に自分の目で見ること”を大事にしています。編集やライターをしている人がいたら、ネットに頼るだけでなく「見ろ、自分の目で!」と、声を大にして伝えたいと言います。

40才を目前に、「私の人生このままいくのか?」と考え退職を決断し、フリーの編集者として活動を始めます。屋号は、悩んだ末に『amu』にしました。『まちを編む・ひとを編む・ことを編む』がコンセプト。「どんな人と、どういうものを、どう作っていくか」を大切にしています。

「集めて編む」と書いて「編集」。広い視野でみてから、最終的に何を伝えたいかを絞り、まとめていく。それをいかに届けやすくするか。紙がいいのか、ウェブがいいのか、はたまたイベントなのか。徳永さんは、伝え方を選択することが重要だ、と話します。

それから、例えば紙媒体ならこのデザイナーさん、このテーマならこのカメラマンさん、と向き不向きを考えながら、チームを作っていきます。編集者は、オールマイティにみんなの特徴を把握して、“段取り”をすることが必要。自分にできない事を助けてもらいながら、みんなで向かうゴールを目指し、編んで行く。

そして、最終的に形作るというイメージ。徳永さんは、監督のような役割のときもあるし、記事を書いたりするときは、一部になることもあります。

編集する時、「絶対に、これを感じとってほしい!」と書いていた時期もあった、と言います。今は、受け取る方の“何か考えるきっかけ”になってくれたら嬉しい。自分のフィルターを通して、「これは、すごく良かった」という事だけは伝えるようにして、あとは様々な捉え方があっていい、と考えています。

“感度を高めておく”

徳永さんが取材で大事にする事は、まず取材する相手に興味をもつこと。興味をもたないと書けないし、面白くない。そして、こちら側の“感度”が低すぎると提供できるものの質が低くなってしまいます。だから、“感度”を高めておくことが必須。そうでないと、本当に良いと思うものを伝えられない、届けられない、と話します。

知らない分野の方へのインタビュー時には、「知りません、教えて下さい」という姿勢の徳永さん。「どのような人生を歩んで来たのか?」という掘り起こしから始め、「だから、こんな考えになったんだ!」と、発見できることが面白いと話します。インタビューする事で、その方の人生を一緒に振り返り、並んで同じ世界を共有し、楽しませてもらう事ができる。

また、インタビューした方に自分の考えをまとめる時間にしてもらい、「いっぱい話せて気持ちよかった」と思ってもらいたい。そして、その情報を読んでもらう方に届ける。「こういうお仕事って、ほんとに面白いですよね!」と、仕事の魅力を生き生きと語ります。

情報誌を作っている時は、何万人に向けて情報を発信していました。しかし、退社してから「果たして、何人に届いていたのか?」と、自問自答したそう。何万部も発行していたら、たくさんの人の目に入る。また、ウェブの情報は広く多くの人に届き得る。でも、「今は1人だけでも、深く感動してもらえたらそれでいい」と語る徳永さん。広く浅くではなく、深く狭く。多くを望まなくなった、と話します。

徳永さんは、ライター講座も開催しています。誰に向けて書くか「1人」をイメージして絞ることがポイントだそう。どう書くのか、どう届くのかというのも、まずやってみて、だめなら変える。その切り替えをいかにへこまず続けるか。最終的には、「何事も場数を踏むこと!」と、言い切ります。

現在、奈良を中心に活動していますが、九州や沖縄・関東の方に取材に行くこともある徳永さん。奈良で情報の段取りを覚えてきたので、地域が変わると対応の仕方が変わり、戸惑いもあるそう。「あれ?このジョーク通じひんな」という経験も。その違いも面白いと捉え、どうすれば事がうまく運ぶか、どう対応すればいいのか、日々実験していると笑います。

この夏、奈良を愛する仲間たちと奈良の良いものを販売し、奈良を旅するきっかけにしてもらう『奈良のトビラ』を、阿倍野をスタートに開催予定。何度も訪れることで、じわじわと良さが伝わるところが奈良の魅力と、言います。

編集に長年関わり続け、場数を踏んで来た徳永さん。伝え方・届け方のスタイルや考えも変化しながら、編集に向き合ってきました。「できる事が増えるから、年をとるのって楽しい!」と、軽やかに語る笑顔が印象的でした。編集の力は、徳永さんの人生を豊かに、そして奈良のまちを、ますます元気にしていきます!

今後は、これから何かをしようとしている方、1人で小さく活動しているけど、もっと知って欲しいと思っている方を応援していけたら幸せ、と語って下さいました!

【徳永 祐巳子(とくなが ゆみこ)】
編集者 / amu
1977年3月14日、奈良市(旧都祁村)生まれ。
中学3年生男子、小学5年生男子の母。
1999年4月に、新卒で奈良の活性化を目指す総合コミュニケーション企業であった(株)エヌ・アイ・プランニングへ入社。奈良に情報がないと言われていた時代に、奈良のタウン情報誌「ぱーぷる」、ゆとりを楽しむ大人のためのマガジン「naranto(ナラント)」を通して情報を発信すべく、全力で奈良県全域を東奔西走!副編集長を務めつつ、自治体の観光パンフレットやイベント企画など委託業務も請負ながら、とことん奈良密着型の仕事に明け暮れた17年間(2016年退職)。2018年7月〜はフリー編集者として再始動。屋号「amu」(アム)は、「まちを編む、ひとを編む、ことを編む」をコンセプトに、誰と、何を、どのように編み伝えるのかを大切にする。2020年3月〜 奈良市三条通に事務所「amu base」を構える。2021年〜「奈良の今を届けるメルマガ」毎日無料配信。一般社団法人com 所属。2022年〜奈良地域デザイン研究所 研究員となる。奈良を愛し奈良を伝える人として、奈良ファンを増やす活動や地域の課題解決に、長年培った「編集力」を活かす。

主な仕事は、取材・記事作成、書籍・冊子ディレクション、ときに動画編集や撮影、イベント企画運営、地域・企業コンテンツづくりなど多種多様。今や「何でも屋さん」(笑)。つまり、「編集力」はこれからの時代を「楽しく生きる」に必要な力と感じている。

自己分析としては・・・
●星座:魚座/常にワクワクする方へ泳ぐ習性があり、群れることに執着しない。
●動物占い:チーター/冒険心旺盛。夢を実現する実行力No.1。ちょっと頑固だけど、繊細で正直者。

「楽しむ」をモットーとするチャレンジャー。飽き性。「歩く広告塔」と言われることも。
フリーランス5周年を迎える今年も、新しいことへの挑戦が始まる!
amu ときを編む
Instagram
Facebook
一般社団法人com