2023年4月26日のハイパー縁側@中津は、小島和人さんをゲストにお迎えしました!
テーマは 「ハモニズム“アーティスト起点で未来を創る”」

中津のまちについて、“いい匂いがする”と、表現する小島さん(ハモさん)。以前から、クリエイターやアーティストがそれぞれ活動していて、面白いな、と思っていたそう。改めて中津を訪れると、点と点が繋がりエリアとして言語化できない“何かいい気配”を感じ取った、と言います。

元々あるものを活用し、新しいものを作りすぎていない。道幅の狭さや建物の低さから、人との距離感が近い。そうやって、グランドレベルで人の活動や営みが育っている、と感じています。また、意外と起伏があるので歩いていてリズムができるのも面白い、と中津のまちを称賛します。

守口市ご出身のハモさん、学生の頃は建築について学び、現場施工管理の仕事に従事。建物よりも「人の活動」が気になり始め、ソフト面を考えたい、とデザインの方向へ。そこで、仕事としてのデザインとアート表現としてのデザイン、2軸での活動が始まったそう。現在は、クリエイティブサービスを提供するロフトワークでプロデューサーとして働き、2つの軸が交わってきた、と話します。

小さい頃から、「いらんとこが気になる」「人の言うことをきかない」と、自分の性格を分析するハモさん。クライアントの要望に対しても、「何でですか?」を繰り返し、「これいらないですよね、じゃあこれを作りましょう」と提案するそう。若い頃からそのようなアプローチでしたが、最近はクライアント自らが本質に気づけるよう導けるようになった、と言います。

それは、ライブパフォーマンスや演出など、表現者としての経験を積んできたことが大きく影響している、とハモさん。どういうタイミングで、どういう空気感で、どういう問いを投げかけたら、嫌にならずに自ら本質に気づいてもらえるか。“舞台セット”を作る感覚に似ている、と言います。

ハモさんの中で答えが出ていたとしても、歯を食いしばり、伝えない。ただ、コマだけは置いていくようにし、「例えば…」と近い事例をもちだすことも。そのために、意識的に浅く広く様々なことをインプットするようにしています。深く掘り下げると理解してしまい使いにくくなるので、要素だけを取り入れ、“繋がり”に着目して発言するようにしているそう。

アーティストの1番凄いところは、「こういうことをやったら、いいかもしれない」と感じたら、普通の人はやらなくてもアーティストは“やる”ということ。アーティストは“やる”を重ねてきているからこそ、やった時の効果を知っている。だから、「まず、やりませんか?」という考えを大事にしています。

以前、舞台演出に関わっていたハモさん。いつもと同じではダメだと感じ、今までやったことないことを、ダンサーやミュージシャンに要求しました。演者の方々は、本番直前、不安になりつつも舞台へ。

イチかバチかでやってみると、観客は「何か分からないけど、すごかった」と感じ、演者も「やってみて良かった、次にいける」と、秘めていた可能性を爆発させることができた、と言います。クライアントの1歩目を踏み出すサポート、領域を超えるサポートをすることが大好き、とハモさんは語ります。

ハモさんの好きな逸話を紹介。フィギュアスケートの有名な技・イナバウアーは、加点になる技ではありません。コーチが、なぜプログラムに組み込んだかきかれたときに、「彼女のイナバウアーが美しいから」と答えたそう。

「どんな効果があるのか」「どれくらい売り上げがたつのか」ではなく、「ただ、おもしろい」「ただ、かっこいい」それだけでいいのではないか。言語化するべきでもないし、分からないまま受け入れるべき。そこからパスが繋がったり、気づきが生まれることもある、と考えています。

“曖昧な領域”

ハモさんの作家名“ハモニズム”について。「イエス」か「ノー」か、「0」か「100」かではなく、人は“曖昧な領域”を考えることが大切。違う価値観を持つ人が「どこがいいの?」と話し合おう、考えていこう、という思想を作家名に込めたそう。ハイパー縁側もまさに、“曖昧な領域”。言語化、数値化することは難しい。ただ、この“曖昧な領域”に意味があると確信している、と語ります。

会場からの「ハモさんが考える、人がコミュニケーションをとりやすくなる空間とは?」という質問に対し、関西で言うと“余白手前”のようなものを活用し、みんなが同じ方向を向けるようにすることではないか、と答えます。

また、“ノイズ”を取り込んでいける空気を作ること。“ちゃんとすると、ちゃんとつまらなくなる”と考えているハモさん。関西人は良く分からないものを、良く分からないまま楽しむ力がとてつもなく高い。だからこそ、大阪はイノベーションが起き得る文化や思想・雰囲気に溢れている、と感じています。

ハモさんは、ネリ・オックスマン教授の『創造性のクレブスサイクル』という考えがしっくりきたと話します。サイエンス・エンジニアリング・デザイン・アートの4つの象限が連結していて、今まではひとつひとつの象限で事業や活動が成り立っていたものが、現代社会はそうではない。4つの事象を包括して、ぐるぐる回って考えていくべき。

アートは、崇高なものでも、絶対いらないものでもない。何かをやることで、「これってどうなんだろう」とみんなで考え、次に繋げていくものがアートの役割であってほしい。そして、文脈やロジックで突破できないことをつくっていくのは、アーティストであってほしい、と語ります。

アーティストがぶつけるメッセージを、世の中の人は傾聴するのではなく、対話することで自分自身を再認識できるのではないか。アーティスト側は、異常なる想いを込めて創ること。すると、世の中はもっと面白く、クレイジーになっていく、と考えています。ハモさん自身は、仕事を通じて普通のプロデューサーが言わないようなことを言ってみて、相手がどのような変化を起こすか、今後も実験を行っていきます。

最後に、世の中の人はもっとアーティストの力を頼ってほしい、と力強く語るハモさん。2つの軸で走り続けてきたハモさんだからこそ伝わる、説得力と熱量を感じました!

【小島 和人(ハモ)】
株式会社ロフトワーク プロデューサー / FabCafe Osaka(仮)準備室
アート作品を作らないアーティスト「ハモニズム(作家名)」。通称「ハモさん」 建築施工管理、デザイナー、プランナー、アーティストという経歴をたどり、多様なものから着想を得て繋げることで先入観を取り除き、変化するためのプロジェクト設計を得意とする。
デザイン経営、サーキュラーデザイン、新規事業支援など幅広くプロデュースを手掛けるが、共通して「なにか新しいことをしたい」時に駆り出されるプロデューサー。口癖は「人の欲望と向き合う」。
都市で暮らす事にこだわり、夏場は大阪市内の河川で40cmを超える黒鯛を数十匹釣り上げる。
株式会社ロフトワーク
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