2023年4月21日のハイパー縁側は、本多健一さんをゲストにお迎えしました!
テーマは 「大和郡山でのシビックテック的活動期」

長崎県ご出身で、現在は奈良県大和郡山市在住の本多さん。技術コンサルティング会社で働きながら、大和郡山をフィールドにサークル的に活動する任意団体『CODE for YAMATOKORIYAMA』を立ち上げ、個人活動を精力的に行っています。「今回は会社の事にはほぼ触れず、個人活動を紹介しにきました」と、語り始めます。

本多さんは、建築土木構造系の学科の大学を卒業し、建設会社に就職。社会人5年目で働きながら大学院に通い、データサイエンスについて学びます。本多さんが通った兵庫県立大学大学院シミュレーション学研究科は当時、新設された学科で先輩もいない1期生だったそう。今思えば、豪華な顔ぶれの教授陣だった、と振り返ります。

教授から、「今までやってきた事もあると思うけど、一旦忘れてこれからの研究を考えよう」と、提案されます。その言葉に触発された本多さんは、ゼロベースでやりたいことを見つけるため、「自分は何者なのか?」とルーツを探す旅を始めました。「家紋なんかも調べてみました」と、笑います。自分のルーツや原点を突き詰める事でブレない軸ができ、受け入れる幅が変化した、と本多さんは感じています。

研究科のコンセプトは、数値計算をいかに速くするのかを目指すのではなく、世の中に気づきを与えるためにシミュレーションや計算を使えないか、ということ。そこで、本多さんは修士研究で「ふるさとがむやみやたらに変わるのは嫌だ」、という動機からまちの変化・景観の変化がなぜ起きるのかを考え、まち並みの移り変わりをコンピューター上でシミュレーションしました。

その際、研究のために大和郡山のフィールドに飛び出した本多さん。色々な考えをもつ地域の方や団体と出会います。機械が導き出したデータに基づく事柄に対してなので、地域の方々も意見や文句が言いやすかったそう。本多さんの元に、様々な意見が集まりました。それぞれ思いは食い違っているようだけど、目指している方向は同じ。アプローチの仕方が違うだけ、ということを目の当たりにしたと言います。

修士研究では正解を出すのではなく、「まちが、どういう将来を目指すのか?」という議論の足しになるものにしたかった、と語ります。具体的な取り決めを嫌がる人もいるので、あえて抽象的に、“市民みんなで、継続的な取り組みが必要”という研究の結論を出しました。

修士論文の研究中に空き家を利活用する芸術祭があり、学生サポーターとして参加。研究後も、空き家のオーナーと空き家を利用したい人をマッチングする活動に加わり、大和郡山で活動する、多種多様な職種の人々との交流が深まっていきました。

大学院で学んでいる中で「自分の世界が狭い」、と感じた本多さん。研究を通して、自分の住んでいるところや周りをもっと楽しくしたい。それが自分の真のやりたいことだ、と気づきます。そして研究や活動、様々な人との関わりを経て、“シビックテック”と出会います。

“シビックテック”は、「市民」と「テクノロジー」を掛け合わせ、市民自らがテクノロジーを活用して、地域の課題を解決していく活動のこと。関西ネットワークシステム(KNS)をきっかけに『CODE for IKOMA』の存在を知り、“シビックテック”に触れた本多さん。まさに、自分のやりたい事そのものだったそう。

そして2017年、ITなどのテクノロジーを活用して大和郡山の魅力の再発見や、地域の課題解決に取り組む『CODE for YAMATOKORIYAMA』を立ち上げます。
当初、他の『CODE for』 の団体が取り組んでいるような、保育園マップ作りやゴミの日を分かりやすくするアプリ開発などを真似しようと思ったそうですが、大和郡山は何と言っても金魚推し。本多さんは、金魚をからめて何かをしたい、と考えます。

そこで、本多さんは金魚の水槽に360度カメラを入れ動画を撮り、VRカメラで見ると水槽の中にいるような感覚を味わえるものだったり、金魚の品種を判定できるAIを開発しました。コロナ禍では金魚すくいは密になるということで、アームを使いリモートで金魚すくいをするイベントも開催。子どもたちに大盛況だったそう。「まさに、テクノロジーの無駄遣いです」と、笑います。

ただ、子どもたちが「何やってるのー?」とやって来て、360度カメラというものを初めて知ったり、AIってこんなデータがあると学習するという事に気づいたり。金魚を通じて、生活に近い身近なところで気づきを得たり、技術に触れる機会になっているのではないか、と感じています。

“テクノロジーの無駄遣い”

本多さんはプロデューサーのような役割で、研究開発するのではなく「企画」を投げかけます。すると、エンジニアの方々が手をあげて、取り組んでくれるそう。エンジニア側としても、本業としてはできないけれど技術を試す場として活用できるのが利点。本多さん自身も勉強をしてある程度を把握し、エンジニア心をくすぐるような企画の提案を心がけている、と言います。

開発した技術をもって外部のコンテストで賞を獲得すると、他地域の『CODE for』から連絡がきて、繋がりもできることも。また、地元でも金魚の飼育・文化を伝承したい高齢の団体から声がかかったので、アプリを作ることを提案。データを集めないといけないので、デジタルツールを使いこなすことを条件にすると、使いこなせるようになったそう。

次はそのおじいちゃんたちが、近い世代の方々にさらに広げていけるように画策中だとか。市内・市外で繋がりができ、活動が展開されています。

「これから、大和郡山をどうしていきたいか?」という質問に対しては、「“まちを良くしたい”とは言わないようにしている」と、答えます。身の周りの課題を解決するとか、あなたが楽しいかどうか、という観点でしか活動しない。「まちをこうしたい」と語り出したら、固くなり義務感が発生して、行政や政治がからんでくる。楽しく活動していたら、みんなが参加し始めて…というアプローチの仕方、スタンスで続けたい、と語ります。

ただ、「まちをこうしたい、良くしたい」と、考える人ももちろんいる。それぞれの考えを持ちつつ、ちゃんと議論をして、結局は同じところを目指しているという事を確認できるような話し合いは必要だ、と本多さんは考えています。

最後に、「そもそも、なぜ大和郡山は金魚推しなのか?」という質問も。戦国時代に武士の副業として栄え、今に続いているという説があるそう。大和郡山ならではの一面に広がる金魚池の写真も披露し、「すいません、金魚についてみなさん知っている前提で喋ってました」と、金魚愛が滲み出る笑顔を見せて下さいました。

今後、現在の仕事と『CODE for』の活動を合流させたいと考えている本多さん。また、40才の節目とのことで、学び直しもしたいと話します。
学びを止めず、着実に丁寧に知識と経験を積み、そして何よりも楽しみながら仲間を増やして歩み続ける本多さんの姿が印象的でした!

【本多 健一】
CODE for YAMATOKORIYAMA 発起人 / 金魚マイスター(大和郡山市認定制度)
兵庫県立大学大学シミュレーション学研究科修了後、コミュニティ活動に興味を持ち、居住地である奈良県大和郡山市にて、空き家の利活用を団体の立ち上げに参画。
地域で活動を進める中で、「もっと分野が違う人が交わると、新しい楽しみが見えてくるのでは?」と考え、2017年にCODE for YAMATOKORIYAMAを立ち上げ、現在も活動中。
普段は、技術コンサルティング会社の建設業向けマーケティング・営業担当。
CODE for YAMATOKORIYAMA
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