2023年3月9日のハイパー縁側@天満橋は、村木真紀さんをゲストにお迎えしました!
テーマは 「天満橋・虹色計画〜LGBTQセンターの1年〜」
昨年、天満橋にオープンした「プライドセンター大阪」を運営している村木さん。眺めが良く、京阪シティモール8階からも見える気持ちのいい場所に開設しました。常設LGBTQセンターとして相談したい人や学びたい人など、どなたでも気軽に訪れることができる場所です。
茨城県のトマト農家を営む家に生まれた村木さんは、子どもの頃から『シンデレラ』などのお姫様の話を読んでも、王子様や綺麗なドレスにときめかなかったそう。自分の感受性が間違っているのか、共感できないことが辛かったと振り返ります。
18才の頃、自分はレズビアンだと意識します。当時は、今よりも情報が格段に少なく、特に地方ではカミングアウトしている人もいません。「自分だけかな…」と、感じていた村木さんは「この地域では生きていけない」と、関西の大学に進学します。
大学卒業後、ビール会社の大阪支店で勤務。そこから転職を繰り返します。LGBTとして特有の働きづらさがあったからだ、と言います。そんな村木さんのライフヒストリーが、著書『虹色チェンジメーカー』にも詳しく描かれています。
LGBTQ当事者は、生涯を通じて様々な困難にぶつかります。例えば、学校でイジメやからかいを受けたり、親の理解を得ることができず、学校・家庭で居づらくなることも。また、職場で働きづらさを感じ、職を転々とすることが多いそう。すると、安定的な収入がなくなり、貧困に繋がっていく可能性もあります。
昨今、LGBTQという言葉をよく耳にするようになりました。大阪の学術調査では、日本のLGBT人口は3〜8%。マイノリティと言いながら案外多い、と村木さんは言います。歴史上にも数多く存在していて、左利きの人がいるのと同じようにLGBTQの人がいるのが当たり前。ただ、偏見や差別があることが問題だ、と村木さんは考えます。
2015年、渋谷区から始まった「パートナーシップ制度」。証明書が発行され、様々なサービスや社会的配慮を受けやすくなる制度です。大阪は、先進的で全域に広がっていますが、日本全体の人口普及率は65%ほど。「パートナーシップ制度」は、ないよりはある方がいいけれど、戸籍や相続についての法的な効力はなく、パートナーの子どもの親権者になることもできないので、十分な制度とは言えません。
村木さんが18才の頃と比較すると、「パートナーシップ制度」ができたり、社会の理解は進み、良くなっていることもありますが、未だ同性婚が認められていない事は大きな問題です。村木さん自身も、16年間連れ添うパートナーと結婚することができません。30年経っても、法律が変わっていないのは、悲しいしさみしい、と訴えます。
村木さんが茨城から大阪へ移住したように、若者世代では同性婚が認められている、南米やヨーロッパなどの海外に流出する人も多い、と言います。LGBTQを取り巻く環境は、コロナ禍でさらに悪化してしまいました。もともと、非正規雇用が多いので真っ先に契約を解除されてしまい、失業に追い込まれることに。
また、コロナウィルスが流行し始めた頃、感染源を追求する風潮がありました。カミングアウトしていない方や、ゲイバーに通っていることを知られたくない方も多かった為、ゲイバーなどはすぐに閉店。そうすると、居場所がなくなり孤独を抱えることになってしまいました。
村木さんは、コロナウィルスが流行する前に、ウィーンへ視察に訪れていました。大阪と同じ人口規模にも関わらず、歴史センターやユース支援センターなど、4つのセンターがあったそう。「すごい!だったら、大阪にも作ろう!」と、決意します。「コロナ禍で傷ついたり、孤立した人は、とにかく癒されたいはず」と、開設場所は大川に臨み、緑が見えて明るい場所を選びました。また、天満橋は神戸や京都からもアクセスがよく、さらにNPO支援機関や行政機関も近く、繋げやすいのも魅力だったと言います。
“Remedy for all”
ここ天満橋で地元に根付いたセンターを目指し、挑戦中だという村木さん。センターのミッションは、“Remedy for all”。レメディーは、「治療薬・癒し」という意味。みんなが自分でいられ、必要なときに助けを求めることができる場所、それをまち全体に広げたい、と語ります。
センターには当事者だけでなく、先生や親御さんが来るケースも多いそう。誰にでも開かれた場所でLGBTQ図書を備えており、絵本や情報が多数あります。相談することが目的でなくても、ふらっと本を読みに来たり仕事をしに来てもいい。着替えのできる広いトイレも用意されています。
ここでは自分の好きな格好で過ごして欲しい、というメッセージだと言います。センターがオープンしてから、0才〜70才代まで1千人以上の方が利用し、「このセンターでLGBTを題材にした絵本を読むと、心のしみかたが違う。安心する。」という感想も寄せられました。
センターの認知を広げる為に、“ええんちゃう”の気持ちで気軽に聴いてもらえる「ええんちゃうラジオ」を開設したり、虹色を背負って大阪マラソンにも出場。また、「どこでもプライムセンター」と題して虹色の車にLGBT書籍などを積み込み、大学などで出張センターも実施しています。
しんどい時に、元気や情報をチャージできるセンターのような場所がもっと必要だ、と村木さんは考えています。ただ、それぞれが職場や学校・家庭に帰っていくので、このような場所があるだけでもダメ。まち全体に広げていくことが大切だ、と村木さんは力強く語ります。
そこで、「天満橋・虹色計画」を進行中。家庭や学校・職場に居場所がないということは、もうやめたい。“どこにいても嫌な思いをしない”、ということが、村木さんたちの野望です。
まちなかで、LGBTQ支援のシンボルである虹色の旗を見ることが当たり前になる。虹色の旗を掲げ、それを見ることで安心する人がいる。“ここで生きていけない”のではなく、“ここでみんなと繋がって、楽しく生きていく”と思えるようなまちづくり。「面白い人が多く、柔軟な考えをもつ天満橋のまちなら、きっとできる」と、村木さんは語ります。
雨上がりの空に虹を見つけるように、視線を上に向けることも大切なのでは、と村木さん。「いい加減、パートナーと結婚したい」と訴え、地域に根ざし、このまちを虹色に変え、そして国を変えていきたい、と熱く明るく語って下さいました!
認定NPO法人虹色ダイバーシティ 理事長
1974年茨城県生まれ。社会保険労務士。京都大学総合人間学部卒業。
LGBTQ当事者としての実感とコンサルタントとしての経験を活かして、LGBTQに関する調査研究、社会教育を行う。
新型コロナウイルスの感染拡大によって、LGBTQの社会的孤立が深まったことを受け、2022年4月に天満橋に「プライドセンター大阪」を設立。
LGBTQ支援のシンボルである虹色を一帯に広めるべく活動中。
認定NPO法人 虹色ダイバーシティ
プライドセンター大阪
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