2023年1月26日のハイパー縁側@天満橋は、末村巧さんをゲストにお迎えしました!
テーマは「天満橋2023〜水辺で暮らすということ〜」

天満橋の高校に通われていた末村さん。昔から馴染みのあるエリアの天満橋ですが、居住歴は10年だそう。20年前、仲間と「水辺のまち再生プロジェクト」を立ち上げ、水辺に特化した不動産情報を提供する「水辺不動産」など、水辺をフィールドに様々な活動を展開しています。

「外で野球してるか、家で間取り描いているか、という子どもでした」と、幼少期を振り返る末村さん。もともと間取りが好きだった、と話します。末村少年が描くのは、投球練習場があり、階段はなく登り棒で上り下りする家が定番。
また、間取りを描くだけでなく、その家に住む家族構成から名前も決め、どんな暮らしをしているか、ということまで想像して楽しんでいました。「変態」と言われがちですが、末村さんの周りには意外とこの遊びを経験済みの仲間も多いんだとか。

大学で機械工学を学んでいた末村さんは、就職期に子どもの頃から好きだった住宅関係に進むか車関係に進むかを迷い、車の会社を選択。内定していましたが、「想像以上にこまかすぎて、無理だ」と判断し、辞退。
1年大学に残った後に、結局リクルートに就職し、梅田の事務所に勤務しながら大阪のマンション建設などに携わり、11年間勤めます。この頃は、水辺には何ら関係なく過ごしていたそう。

勤めている中で「自分が住みたい家を作りたい」と思い、独立を決意します。思い通りの家を新築で作るとなると、かなり高い。そこで、中古の物件を改装し、理想の家を作ろうと考えます。そのとき、ひとつの部屋の暮らしにフォーカスをすると、見える範囲が狭くなり“まちが見えだした”と、語ります。
11年間、新築マンションに携わっていた経験があったからこそ、中古物件に目がいき、末村さんの原点に戻ってきたように理想の家や間取り・暮らしを追求していくことに。

川が身近にある大阪のまち。独立した事務所も、水辺にありました。不動産事業も軌道に乗り、まちや周りが見えてきたときに“水辺”に注目した末村さん。仲間たちと川で遊びだします。その当時の20年前の写真を用意して下さいました。

川沿いには、ブルーシートが多く並んでいて、表札もかかり、「ひとつのまちが出来上がっていた」と、話します。川のせせらぎで目覚め、心地よい川の風を感じる生活。「水辺の一等地の暮らしや」と横目に見ながら、ボートを浮かべていました。同じ世代のメンバーと川で遊びながら、「ビジネスに繋げられないか」と、考え始めます。デザインや建築など、他業種のメンバーが集まっているので、それぞれの職域の延長で新しいことをできないかを模索します。

もう1枚紹介して下さったのは、川沿いに躊躇なく朽ちた室外機が設置された、ビルの写真。住居人がいないこのような物件が当時は多かったそう。不動産屋の発想からすると、需要がある物件をお客様に勧めます。この川沿いのビルは、需要が顕在化していないので残されていく。

しかし、周りの仲間は「ここを貸せるようにしよう」と発案。室外機も取り外して改装し、不動産屋の本来の仕事をすると、借り手がつき、あかりが灯る。結果的に、“川沿いの景観を不動産屋が作っている”ということに末村さんは気づきます。そこで「水辺不動産」がスタート。自分1人では思いつかない、他業種の仲間の発想が合わさることで生まれました。

当時、水辺は治安も悪く近寄る人は多くありませんでした。末村さんも子どもの頃から、「川は危ないから近づくな」という教育を受けてきた、と言います。近年は整備が進み、水辺を取り巻く環境は大きく変貌を遂げました。整備されると、イベントや飲食店も増加し、水辺が賑わいを見せ始めます。その中で、末村さんたちの「水辺のまち再生プロジェクト」の活動のテーマも変化してきました。

活動当初は人が水辺に近づかなかったので、「きっと水辺が好きになる」をテーマに掲げます。一度来てみたら、気持ち良さを実感できると提案します。次に、日常的に人が水辺にいる風景を作りたい、という思いをもつように。さらに、様々な店が川沿いに並ぶようになると、人のサービスを享受するだけでは勿体無い。「ひとりひとりの水辺」をテーマに「みんな、やりたいことやろう」という発想で活動します。

“NO BORDER,BE WILD”

そして、現在は「NO BORDER,BE WILD」が合言葉。自分たちで勝手にボーダー作ってるんではないか。都市空間において、規制緩和しなくても、許可を得なくても、できることはもっともっとある、ワイルドにいこう、というメッセージが込められています。

公共空間には、使われていない勿体無い場所が多い、と末村さんは指摘します。それを有効活用するのが、「水辺ダイナー」。月に1度行われる公共空間で行う「水辺のまち再生プロジェクト」の水辺会議。テーブルクロスを用意し、グラスでワインを飲み、食事と会話・景色を楽しみます。様々な法律をチェックしており、法律上問題ない解釈だそう。
もちろん、独占排他的に空間を使うわけではありません。何かあれば5分で撤収できる設え、嫌悪感を抱かせない見た目など、配慮しながら行います。

勿体無い場所を活用することで、その場所の可能性に気づく人を増やしたい、と末村さんは話します。このような発想をもち、実践したり許容してくれる人が多くなれば、“寛容でおもしろいまち”ができていくと考えています。

公共空間にはルールがあるはずだと思い込み、何もかもしたらダメだという先入観が、子どもの頃から根付いている。だから、今の子どもたちにも「NO BORDER,BE WILD」の視点をもってもらいたい、と末村さん。身近な大人が楽しそうに遊んでいることが、1番の教材になる、と語ります。

最後に、活動するにあたって、お金がまわる持続可能なしくみが必要だ、と末村さんは続けます。エンジンは“最初の爆発”が重要。つまり、“人のエネルギー”。その後もガソリンを供給し続けないと、エンジンは回らない。と、後輩の廣瀬さんからのパスを受け、「持続可能なしくみ」を「エンジン」に例えて美しくまとめて下さいました!もっとお金の話を詳しく聞きたい方は、末村さんまで。

水辺をとりまく変化に反応しながら、時代を凌駕する水辺の新しい楽しみ方を柔軟に発信し続ける末村さん。日本の水辺の魅力、ワイルドな発想でチャレンジする勇気をいただきました!

【末村 巧(すえむら たくみ)】
合資会社マットシティ / みんなの不動産 水辺のまち再生プロジェクト / 水辺不動産・はちけんやはま植物園 / 北浜水辺協議会 / 北浜テラス / 一般社団法人リビングヘリテージデザイン
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