2023年1月20日のハイパー縁側@中津は、親泊孝治さんをゲストにお迎えしました!
テーマは「鞄職人 ぱくさんの生き方〜Made In Japanの品質〜」

親泊さん(パク兄)は、祖父の代から始まった鞄工場を父から受け継ぐ3代目の鞄職人。飲食店のアルバイトを経て、20才で鞄職人の道へと進みます。

パク兄の会社は、長年に渡り株式会社の形態で大手鞄メーカー専属工場としての役割を担っていました。株式会社は大手と取引しやすいというメリットがありますが、「自分の鞄を売っていきたい」という思いから、4年前に個人事業主となりました。

「うちのは、アート作品ではなく商品」と語ります。珍しいデザインではなく、実用的で使いやすく、丈夫で長期間使い続けることができないとダメ。また、「何も入っていないのに重いと嫌でしょ?」と、笑います。強度の部分や内装などは、少しずつ改良しながらも、“軽くて、シンプル”という軸は、ぶれずに作り続けています。

いいスーツを着ていていも、安いナイロンリュックを背負っているのでは勿体無い、と考えるパク兄。「そんな高いわけでもないので、ちょっと背負ってくれたら嬉しい」と、スーツ姿に似合うシンプルなリュックスタイルも提案しています。

パク兄が鞄に携わり出した頃、縫製の仕事は安い労働力を求めて海外に流れていました。現在は以前と比較してレベルは上がっていますが、昔は流れ作業。パク兄はその頃から、Made In Japanの丁寧で高い品質の商品作りにこだわってきました。実際にお客さんがどこまで気づくかは分からないけれど、「僕ら、めちゃくちゃ丁寧に作っています」と、力強く語ります。

パク兄は鞄教室を開催し、自分で鞄を縫い、鞄作りの工程や丁寧な仕事に触れてもらう機会も作っています。最後に生地をひっくり返して鞄が出来上がる時、生徒の皆さんはとてもいい笑顔を見せてくれるそう。しかも、その鞄を愛着を持って使ってくれることが、「めちゃくちゃ嬉しい」と笑顔で話します。

個人事業主になってから自らデザインをして、自ら作り、自ら売り始めたパク兄。しかし、自分のベストを尽くして商品を作り上げ、いざ売ろうとなったときに、「どこで売るねん」という壁にぶちあたりました。

ネットショップを開設しますが、「星の数ほどあるサイトの中で、どうしたら自分の鞄にたどり着いてくれるのか?」と、悩みます。未だに正解は分からないけれど、自分の商品を見てもらい、知ってもらうしかない。ショップカードを渡し、地道にやっていくしかないと考えています。

その成果も出始め、地元で少しずつ知名度が上がってきた「ぱくさんの鞄」。今後は大阪を飛び出し、他地域のイベントにも積極的に参加していきたい、と話します。

昨年から、弟子であるなかのさんと一緒に皮小物の商品も作っています。7年前にミナミで鞄教室を開催した時に、生徒として訪れたのが写真家のなかのさんでした。

お2人はそこから飲み友達になり、パク兄はなかのさんにネットショップ用の写真を撮ってもらうようにお願いしました。さらに、ショップページやホームページの作成も。気づけば鞄作りのお手伝いを週5で頼むようになり、パク兄の弟子となったなかのさん。現在は、共に商品作りに尽力しています。

本日は、いつも仕入れる原皮を持って来て下さいました。一頭分の大きな皮を広げ、「ここが首で、こっちが前足」と説明するパク兄。動物の皮には生きていた時にできた傷やシミがあります。OEMで作っていた時は、そこを避けて綺麗な部分だけで作っていたそう。現在はその傷なども生かしながら作りますが、それでも端材がでてきます。

以前は処分していた端材ですが、なかのさんは有効利用をパク兄にもちかけます。端材を廃棄するにも費用がかかってしまうこと。1代目の頃からミシンを使いこなす80代の神職人がいること。

「ここには物もある、技術もあるのにも勿体ない!」と、強く感じます。そこで、猫好きのなかのさんが発案したのが、猫をデザインに取り入れたスマホショルダーや財布などの皮小物。「最初は写真だけ撮っていたのに・・・めっちゃくちゃ風吹かせました」と、笑います。

“ぱくさんの鞄”

原皮が届くとまず広げて、パク兄は「どこで鞄を作ろうか」と考え、なかのさんは端のギザギザの部分などを見て「ワクワクする」そう。現在は一頭分を丸々使い、廃棄するところがない、と言います。皮小物は原価ゼロで作ることができ、しかも小物を入り口に「ぱくさんの鞄」を知ってもらうきっかけにもなっています。

中津のまちとの出会いは、一昨年の中津アートフェスティバル。なかのさんが写真を展示するときに、当時は飲み友達だったパク兄に「捨てる皮を使って、写真の枠を作ってくれませんか?」と、声をかけました。すると、パク兄は皮の額装と写真をミシンで一緒に縫い始めたそう。とても驚いた、となかのさんは振り返ります。

4年前に個人事業主になりましたが、実際に変化を感じたのは、このアートフェスで端材を利用して額装を作ってから、とパク兄は言います。「何でも色々してもいいんやな」と、いう気持ちになり、端材を生かした小物も作り始め、挑戦が始まっています。

OEMで鞄を作っているときは、街中で自分たちが縫製した鞄を見かけることがよくありましたが、「今、僕の鞄を使っている人はぜんぜん見かけない」と、笑います。しかし、中津の飲食店でショップカード見せたら、「知ってる!」と言ってくれた方がいたそう。会ったことない方が知ってくれている事は、とても嬉しいし、もっと知ってもらいたい、話します。

鞄について語るとき、物腰がとても優しくなるパク兄。普段のパク兄とのギャップが魅力的です。なかのさんや中津のまちとの出会いで、新たな試みが始まりました。進化していく素敵なコンビが生み出す商品にも注目です!

「今年は、知名度を上げる!」と抱負も語って下さり、こだわりの商品と想いが世の中に広がっていく1年になりそうです!

【親泊 孝治(しんぱく こうじ)】
鞄職人 / パク兄
1970年生まれ。大阪出身。職人歴32年。
沖縄から大阪に出てきた祖父が1937年に創業した鞄工場の三代目。
コツコツとOEMメインで頑張ってきましたが父の他界をきっかけに株式会社親和を解散。
事業継承という形で個人事業として鞄工房親和を2020年に開業。現在、オリジナルブランド「ぱくさんの鞄」をネットショップ・イベント出店等で販売中。
鞄の弟子でもある写真家“なかのかよこ”とユニット「写革人」でアート作品も作ってみたり、youtube「ぱくさんの鞄チャンネル」を開設したりと今までやってなかった事にも挑戦中です。
これからもワークショップなど色々と楽しいことを企み中です。
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