2022年10月19日のハイパー縁側は、松本豊さんをゲストにお迎えしました!
テーマは「まちの銭湯のような居場所を作る」。

中津ブルワリーのクラフトビール醸造の見学に来たはずが、醸造メンバーに巻き込まれ、その流れで本日の登壇が決まりました。持ち前の人懐っこさでさまざまなコミュニティに出没しています。

松本さんは高槻生まれ、高槻育ちの団地っ子。昔ながらの5階建てのエレベーターなし、100棟以上のマンモス団地だったそうです。この団地育ちが後の「銭湯のような居場所づくり」につながっていきます。まずは、2021年の春に障害者就労支援B型事業所(以下、B型事業所)の立ち上げに携わった松本さんにその経緯を伺いました。

現在もシステムエンジニアとしてフォントの配信サービス会社の保守もしている松本さん。26、27歳の時に一度東京に出たものの任せられたベトナム人スタッフの指導係が上手く行かず、人生最初の挫折を経験することになりました。

このままあきらめたくない、ということで大阪に戻って改めてシステムエンジニアとして就職。そこで出会った現在の上司と会社を立ち上げることに。しかし、そこで同じく立ち上げ時に誘った同僚がメンタル的に不調になってしまい仕事ができなくなる、ということが起こりました。

専門学校からの同級生で、誘った手前、責任も感じ、何かしてあげられないかといろいろ声もかけてみましたが、結局、力になることができずその同僚は退職してしまいました。当時は良かれと思っていたとは言え、自分の考えの押しつけとも言えるような言葉をかけてしまったな、と今でも反省することがあるそうです。

ちょうど、その同僚が辞めてしまったタイミングで、B型事業所を立ち上げたいという相談があり、手を挙げて参加することに。そこには「頑張っていたのに働けなくなってしまった、そんな人の受け皿必要だ」という想いがありました。

ここで、そもそも障害者就労支援B型事業所とは何でしょうか?答えは「雇用せず、働く場所を提供する所」。好きなタイミングで、好きな日数だけ働けるのが特徴です。対してA型事業所は雇用するタイプ。

B型事業所は、体調や通院などさまざまな事情で毎日安定して働くことができない人の受け皿となっています。具体的に言うと、障害者手帳を持っている方が受けられるサービス。能力の高い低いは関係なく、一般的なルールに合わせて働くことが難しい人もいるそうです。

システムエンジニアとしての仕事もしながら、B型事業所の運営も行う松本さんの1日はこちら。
9時に出勤、スタッフと1日の流れを共有。
10時~10時半に利用者の方が来て14時半ごろまで働き、15時半に送り出し。
その後、プログラミングのお仕事。
(大変そうに見えますが…)どちらの仕事も楽しくて辞められないそうです。

B型事業所での仕事は、パズルのようなもの。利用者によって得意分野や可能な範囲が違うので、組み合わせを考えて仕事のクオリティを担保する、言わば、利用者にあわせたオーダーメイドの仕事づくりです。
そして、こういった仕事に加えて松本さんが「銭湯のような居場所」を作りたい、と思ったのは何故でしょうか?

“銭湯のような居場所を作りたい。”

その根底にあるのは団地時代の、家族の枠を超えてご近所さんに可愛がられていた心地のいい居場所の記憶です。そして、銭湯はプライベートとパブリックが入り混じった場所であり、「裸の付き合い」と言う言葉にもあるように、知らない人同士が仲良くなれるフラットで不思議な場所。

松本さんが働くB型事業所は住宅街にあります。事情を知らない近隣の住民さんにとっては、見慣れない人たちが出入りする、不安を感じるような場所になってしまう可能性も。

だからこそ、ご近所さんに元気に挨拶するようにしているそうです。そうすることで関係性が生まれて、事業所とまちが入り混じって安心感につながってきていると感じるそうです。最近ではご近所さんが事業所を訪ねて来てくれることも。「どんどん地域に開いた事業所にしていきたい。」と、話す松本さん。

話はさらに、居場所づくりで世の中から「障害」をなくせるのでは?という展開に。松本さんによると、行政によって障害者と健常者が同じ学校で学べる場合と、小学校から分かれている場合があるそうです。松本さんが育った高槻市では分かれていませんでしたが、大阪市内では分かれているので「相手を知らない」ことによる偏見につながっているように感じています。

だから、事業所や利用者が孤立するのではなく、まちと混じりあえるようにしていきたいのだとか。実はご自身のお母様も手足に障害を抱えているそうです。でも、現在は松本さんが左右どちらが悪かったか忘れるほど。要は、それによって困っているかいないかが障害になるかどうかを左右するのでは?と気づきました。

そこから、本人も周りの人もお互いに助け合える場が作れれば「障害」がなくなるのでは?と考えるようになったそうです。「コロナ禍を経て働き方も多様になった今の世の中なら、実現できるのではないか?そんな場づくりを各地で作ることができれば、活かせる労働力も増える、活躍の場も広がる」そんな風に考えているそうです。

この日は、登壇のきっかけになったビールの醸造を一緒に体験した方(なんと会社を早退して!)、尼崎の商店街で地域に根ざした場を作ろうとしている方が観覧に来られていました。
「自分自身もまともに働けないんです(笑)」と話す松本さんだからこそできる、ゆるやかな働く場、社会とつながる場づくりが少しづつ広がっていきそうです!

【松本 豊】
城東フレンドシップ 管理者
1989年 大阪府高槻市生まれ。
男3兄弟の末っ子。人見知り。
就労継続支援B型事業所で働きながら、株式会社weboarでシステム開発にも関わっている。
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