10月9日のハイパー縁側@天満橋は、増田 德兵衞さん・大国 桜さん・田澤 萌奈さんをゲストにお迎えしました!
テーマは「世界から注目されている日本酒の魅力」

京都市伏見区で、1675年創業の酒蔵『増田德兵衞商店』の増田さんは、1991年に14代目「德兵衞」を襲名。英語で書くと、「TOKUBEE」と表記され、「トクベエ」ではなく、「トクビー」と呼ばれるんだとか。ユニークな話で笑いを誘う德兵衞さんは、伏見酒造組合理事長や、日本食に関する委員などを兼任しています。

鮮やかな着物姿でご登壇の、2022年「Miss SAKE京都」の大国さんと、「Miss SAKE大阪」の田澤さん、御三方で日本酒の魅力を語っていただきます。本日は特別に、德兵衞さんに日本酒をご用意いただき、会場の皆さまとお酒を飲みながらのトークセッションです!

「弥栄(いやさか)〜!」京都流のかけ声で乾杯!用意して下さったのは、「月の桂」のひやおろし。通常は2回火入れをするところ、ひやおろしは、春先に1回だけ行います。まろやかな味わいが特徴です。9月9日の重陽の節句は、「ひやおろしの日」とも言われ、ひやおろしが出回り始める日。秋口から暮れにかけての風物詩です。この時期が旬の子持ち鮎のような和食にも合いますが、チーズにも合うそうです。

ワインを飲む場合は、食べ物を全て飲み込んだ後に、グラスを口にしますが、日本酒の場合は、口に食べ物が残ってもぐもぐしている状態で飲み、日本酒と食べ物のミックスを楽しむことができます。これは、日本独特の作法だと德兵衞さん。日本酒は、生臭みを消してくれるので、何にでも合う“オールラウンドプレイヤー”と、称賛します。

京都市では9年前に、「京都市清酒の普及促進に関する条例(乾杯条例)」が施行されました。「とりあえずビール」ではなく、伝統産業である清酒で乾杯することで、日本文化の理解、日本酒の普及や促進を目指すものです。德兵衞さんらが発起人となり、実現した「乾杯条例」ですが、条例化するまでの道は険しく苦労した、と振り返ります。

「日本酒は20才以上しか飲めないから、条例にするのはどうなんだ?」「伝統産業で言えば、着物に関する条例を制定するのはどうだ?」などの反対意見が上がり、一度は条例化の話が無くなってしまいます。

しかし、德兵衞さんは諦めず、議員1人1人に承認を得るため、熱意をもって動き続けました。熱い想いが届き、2013年1月15日の施行に漕ぎ着きます。
現在、京都市の「乾杯条例」の影響は全国に波及し、144の自治体で「乾杯条例」が施行されています。日本酒だけでなく、帯広では牛乳、甲州ではワインの乾杯条例も。また、愛知県常滑市では、常滑焼に注いだ地酒で乾杯するという条例もあるそうです。

2023年に10周年を迎える「乾杯条例」ですが、最近は少し薄れてきていると感じている德兵衞さん。条例制定10周年と万博をきっかけに、今一度思い起こしてほしい、と願っています。

「乾杯条例」が施行された年と同時期に始まった「Miss SAKE」は、日本酒のアンバサダーとして、国内外に向けて、日本の伝統文化や日本酒の魅力を広める活動です。

「Miss SAKE」に選考されると、4ヶ月間の「ナデシコプログラム」という特別講義を受けます。日本酒の基礎知識から茶道・華道・英語・着付けなど、多領域にわたり様々なことを学びます。また、知識や技術習得だけでなく、しなやかな立ち振る舞いや、周りへの気遣いなども必要、と德兵衞さんは話します。

その「Miss SAKE」に今年選ばれた大国さんは、東京ご出身。京都に引っ越してきてから、日本酒文化の奥深さに気づき、若者にその魅力を伝えたいという想いを持ち、応募しました。

同じく田澤さんは、外国と日本にルーツをもち、国内外で活動したいと考えていた時にたまたま「Miss SAKE」の存在を知ったことがきっかけでした。「英語でスピーチしてほしい」という無茶ぶりにも応え、英語で日本酒についてスピーチも披露して下さいました。
ただ、ここ3年間は、コロナウイルスの影響で海外での活動はされていません。国内でイベントに出演したり、個人的に動画配信などのSNSで日本酒の魅力を発信しているそうです。

“日本の文化を世界へ!”

今後、海外で活動をしていく上で、積極的にお酒の勉強に励み、飲み手の気持ちを組みながら、お酒の説明ができるようにすること。また、お酒の味だけでなく食事との楽しみ方や、どのような土地の酒蔵で作られたかなどの、周辺文化も含め魅力を伝えていくと納得してもらえる、と德兵衞さんはアドバイスします。

数年前に、京都ではバレンタインに「マイ猪口(チョコ)を贈ろう」キャンペーンが実施されました。また、杯をチョコで作ってみたこともあり、「酒を注ぐと溶けました」と笑います。
他にも「マイ枡」をもって居酒屋に行き熱燗を飲むと、樽酒の味わいになるんだとか。このようにアイデアを出し合えば、日本酒は幅広い楽しみ方ができる、と德兵衞さんは語ります。

日本酒の種類は多く、女性でも飲みやすいものがたくさんある、と田澤さん。また、温度帯によっても味に変化が生まれるのでおもしろい。日本酒の価値や魅力をもっと広げたい、と力強く語っていただきました。

大国さんは、“人の思いがのっていること”が、日本酒の最大の魅力だと言います。作られた土地の歴史や背景を語り合い、仲良くなることができる。そして、難しいことを言わずともただただ美味しいことも魅力、と笑顔で語ります。

1964年の東京オリンピックの年に、13代目が日本で初めて発明したのが、「スパークリングにごり酒」。『増田德兵衞商店』は、伝統を守りながらも、新しいジャンルを確立し、進化を続けています。14代目の德兵衞さんも、柔軟なアイデアと熱意で、日本酒の世界を多角的に色々な人が楽しめるものにされています。

最後に、空間に間があったり本の行間を読むように、季節感や個性を思いながら日本酒を楽しんでほしい、と語って下さいました!

【増田 德兵衞】
株式会社増田德兵衞商店 代表取締役会長 /「月の桂」蔵元14代目当主
1955年 京都市伏見区に生まれる。
1991年 株式会社増田德兵衞商店代表取締役社長就任(十四代目襲名)
伏見酒造組合理事長、京都府酒造組合副理事長、前日本酒造組合中央会理事・海外戦略委員長。
同志社大学事業継承学会理事、桃山学院大学エンターテイメント講座講師。
農林水産省和食ユネスコ無形登録委員、全日本食学会理事、和食文化国民会議理事。
日本酒造組合中央会乾杯推進委員会委員。
ミス日本酒顧問。 文化庁諮問委員会委員。
「月の桂」株式会社増田德兵衞商店
【大国 桜】
2022 Miss SAKE 京都
2022 Miss SAKE 京都 大国桜 / Ohkuni Sakura

【田澤 萌奈】
2022 Miss SAKE 大阪
2022 Miss SAKE 大阪 田澤 萌奈 / Tazawa Mona