2022年9月24日のハイパー縁側@天満橋は、マツモト タクジさんをゲストにお迎えしました!
テーマは、「スパイスと音の二刀流」

ハイパー縁側@天満橋の開催場所、京阪シティモールから歩いて約7分のところに、タクジさんが営む『和出汁咖哩 あきない』があります。シティモールの屋上から見えそうで見えないというお店は、今年6月にオープンしました。

「うどん屋並みに出汁をとっています!」と話すタクジさん。鰹・布・煮干し・椎茸を使った和出汁ベースで「シャバカレー」とも言われているそう。本日は、特別に店の定番であるチキンカレーを持って来て下さったので、ハイパー縁側史上初のカレーを食べながらのトークセッションがスタートします!

大阪の旭区ご出身で、今年41才になるタクジさん。音響の専門学校を卒業後、37才までは音楽一筋。ライブハウスやスタジオで音響の仕事をしていました。3年ほど前、10年来の知り合いで本町のカレー屋の店主に「店長を探してほしい」と言われます。「知り合いでやりたそうな人いたら、声かけとくわ」と探しているうちに、「やってみない?」と、タクジさんにオファーが来たそう。

とりあえず、そのカレー屋さんでバイトすることになりましたが、飲食店での勤務は未経験のタクジさん。野菜の切り方も何も分からないまま、初めての皿洗い・初めての接客に挑戦。初めてだらけが楽しかった、と振り返ります。

そこで、バイトをしているうちにタクジさんは「スパイスカレー作り」と「音作り」が似ていると気づきます。カレーは少しのスパイスの加減で、ガラッと味が変わります。一方、音楽も音を少し足すだけで全く違うものになります。ワクワクしてきたタクジさんは、だんだんその気になり、「自分のものにしたい!」と、スパイスカレーにのめり込んでいったそう。

同じレシピで、同じ鍋を使い、同じスパイスの分量で作っても、師匠と同じ味にはならないスパイスカレーの世界。音楽も、同じ楽譜で、同じ楽器を使っても、演奏する人が違えば、全く別の音が奏でられます。また、同じ人が演奏しても、その日のモチベーションで音が変わることも。

火の入れ具合や、スパイスを入れるタイミングで味が変わることに、「おもしろい!」と感じたタクジさんは、店で働きながら、動画で勉強したり、3年間必死に修行に励みます。大阪発祥と言われているスパイスカレー。
大阪では、タクジさんのようにミュージシャンがカレー屋を営んでいるというケースが多いと言います。ひとつの要因として、ライブなどを開催する時にカレー屋がよく出店していて、音楽人に広がったのでは、とタクジさんは考えます。

そして、やはりスパイスカレーと音楽は、「作業的」にも「思考的」にも似ています。どんな味になるか、どんな音になるか、「ああでもない、こうでもない」と言いながらはまっていき、楽しんでいるミュージシャンが多い、と感じていて、タクジさん自身もその1人だと言います。

“何事も楽しむ!”

カレーも音楽も、作り手や表現している人がワクワクした気持ちで楽しまないと伝わらない。「一緒に楽しんでください!」という思いで作り、提供している。そして、受け手が自由に楽しんで欲しい。そういった気持ちの部分も含めて、「ほんまに全部一緒なんですよ」と、笑顔で話します。

そんなタクジさんの1日は、夜行性だった音楽活動一筋の時とは一転、カレーを作り出してからは健康的です。7時頃に起床し、犬のお世話をした後に買い出しへ。そのまま店に向かいます。前日に仕込んでいたものの仕上げをし、11時半の開店に間に合うように全力で準備。
そのまま通しで、21時まで店を開け続けます。閉店後は、翌日の仕込みに取り掛かり、帰ってから楽器の練習をしたりする日も。そうすると、自ずと寝る時間が遅くなってしまいます。

「ずっと眠たいんです、いつでもどこでも寝れます」と、笑います。しかし、カレーも音楽もやりたいこと。しかも、どちらも相手がいて初めて成り立つこと。「絶対に両方とも疎かにはできない」と、力強く語ります。どちらも、ライブ感を大事にしながら楽しんでいるタクジさん。そして、自分次第でもっともっと楽しめる、と考えています。

自分を“もったいないがり”と称するタクジさんは、できる限り楽しんで、1分1秒を大切にしたいと言います。
例えば、やらなければならない単純作業があったとしても、“楽しんでやらないともったいない”と、感じるそう。だから、その作業の中に楽しみを見つけ、飽きずに取り組むことができます。誰かの為にもなっているし、大切な作業と捉えています。

人が好きで、明るくお話して下さるタクジさんですが、幼少期から照れ屋さんだと言います。「先、行って」と滑り台を1番に滑らないタイプ。そのせいで損をしたり、もったいない思いをした経験も。

音楽活動を始めてからも、根っこは照れ屋で恥ずかしがり屋のまま。ライブでも、ステージに立つまでは、とてもドキドキすると言います。しかし、ステージに立ってしまうと、むちゃくちゃ楽しいとタクジさん。変換の仕方を見つけたら、楽しめるようになったそう。「結局やったら楽しいことも多いので、最初から楽しんじゃった方がいい」と、実感をこめて話します。

店に来てくれるお客さん、ライブを見に来てくれるお客さん。毎日、様々な人に出会うことができる環境のタクジさん。また、店の周りには、理念やこだわりをもって店を構えたり、活動している方々が多いので、それも刺激になるそう。「この場所で開業できてよかった」と、話します。

常に、人から刺激をもらうというタクジさんが意識するのは、“まず自分が人のことを好きになる”こと。自分が好きにならないと好きになってもらえない。そして、自分に振り向いてもらって、関係を深めていくと言います。ここ数年はコロナ禍で、喋るというコミュニケーションが取りづらいこともありますが、タクジさんは、「せっかく喋ってコミュニケーションをとれる生き物なんだから、たわいもないことを喋っていきたいですね」と明るく提案して下さいました。

音を楽しむように、ワクワクして作られたタクジさんのカレー。前向きで純粋なタクジさんの人間力が最高のスパイスとなっています!“何事も楽しむ”ことを実践しているタクジさんのカレーは、優しい出汁の中にスパイスが効いていて、副菜や「追いスパ」として、数種類のスパイスと一緒にいただくと味わいが変わり、最後まで楽しむ事が出来、心もお腹も満たされます。
ぜひ、『あきない』で体感して下さい!

【マツモト タクジ】
カレー屋 兼 ミュージシャン
創作カレーツキノワにて修行の後、
食堂チリン〜かれー処わかつきの店長を経て
現、和出汁咖哩 あきないをオープン。
同時に勢力的に音楽活動も。
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