2022年8月5日のハイパー縁側は、JRの駅や施設の設計業務に携わるジェイアール西日本コンサルタンツの設計士 武部俊寛さんをお迎えしました。
テーマは「さこすて~これからの駅を考える~」。

武部さんは大阪生まれ、大阪育ち。大学では建築や都市の設計について研究、大学院では都市計画系に進み、街と人々のくらしの関係性について研究しました。学生時代、愛知に出たことをきっかけに大阪の良さに改めて気がついたそうで、大阪検定3級も取得しています。

建築に足を踏み入れたのは、中学生の頃に街や建物、交通に興味をもったことがきっかけです。現在は駅や施設などの設計を本業としつつ、会社の新規事業のひとつとして「地域と共生した持続可能な駅の在り方」を検討する「さこすて」をご担当。
ローカル線の駅を舞台に、ただ駅をつくるだけではなく、誰がどのように使っていくのかを考えながら、提案や実証実験などの実践を行っています。

ひとくちに駅といっても、駅舎には地平駅・橋上駅・高架駅・地下駅など、いくつかの種類があり、JRは地方を中心に地平駅が多いという特徴があります。そういった地平駅のなかには利用者が減ってしまった場所も少なくないそう。
今後、日本の社会構造として人口が減少していくなかで、未来に向けてそういった駅をどうしていくのか、どのように賑わいを作り出すのか、その課題に取り組んでいるのが「さこすて」です。

“交通拠点から交流拠点へ”

これまで、駅は「交通拠点」として作られてきましたが、今後は人が結節する、地域を代表するような「交流拠点」として役割を転換していくことで、地域とともに持続する場所にしていきたい。Sustainable Community Station、略して「さこすて」。「さこすて」にはそうした想いが込められています。

電車に乗らないひとも駅に来る。人口が減っている地方において、駅は人が出入りする公共空間であり、そんな地方で路線を通じて地域を支えているのはJRならではの価値であるといえます。
JRが所有しているアセットを経済的に持続させていくための課題はまだまだ山積みですが、まずは人が来て下さるようになりつつあり、これがとても大事なことだと武部さんは言います。

未来に向けて、まずは下記の3つを軸に「さこすてプラットフォーム」の構築に取り組んでいます。
1.マッチング あの駅を活用してみたい!そんな人・企業と駅のマッチング。
2.事業コーディネート マッチングした人・駅と一緒になって持続的な事業をつくる。
3.調査・開発 調査・研究を通じて、沿線全体でさこすてを育てるノウハウを築く。

武部さんは実際にいくつかの駅で実証実験を繰り返すなかで、「駅の役割の読み替え」について手ごたえを感じています。たとえば、交通拠点から交流拠点に駅の役割を読み替えると、駅長さんの役割も変わってきます。もしかすると、「さこすて」の駅員さんの採用はいままでとまったく違うものになるのかもしれません。
そして、鉄道を運営しながらそれぞれの駅で駅員さんが地域に入って個性を出していくと、とても面白くなっていくのではないか、武部さんはそう語ります。

会場には、岡山県勝央町の勝間田駅が地元の方がいらっしゃいました。武部さんによると、勝間田駅は近年リニューアル工事を行って駅舎を新しくした結果、地域の方がベンチや座布団を持ち寄って集まるようになったそう。電車に乗らなくても人が集まる、地域の交流の場になっています。

参加者の方からは「地元として、もちろん駅がきれいになっていてびっくりした!地元の駅が新しくなってそれだけでも嬉しいけど、そこに人が集まって賑わっているとなんだかとても安心する。」というお話も。

これからの日本や鉄道が抱える課題に対して、ネガティブな縮小の方向ではない、ポジティブな攻めの価値創造に向けて、「さこすて」を通じた武部さんの挑戦は続きます。

【武部 俊寛】
ジェイアール西日本コンサルタンツ株式会社 建築設計本部 企画開発部 開発設計G / 一級建築士 / 大阪検定3級
1993年大阪生まれ。大阪大好き、夜景大好き、まち歩き大好き。
建築に足を踏み入れたのは、中学生の頃に街や建物、交通に興味をもったことがきっかけでした。
大学では建築や都市の設計について研究、大学院では計画系に進み街と人々のくらしの関係性について研究してきました。
現在は駅や施設などの設計を本業としつつ、会社の新規事業のひとつとして「地域と共生した持続可能な駅の在り方」を検討する「さこすて」も担当しています。
特にローカル線の駅を舞台に、ただ駅をつくるだけでなく、誰がどのように使っていくかを考えながら、提案や実証実験などの実践を行っています。
ジェイアール西日本コンサルタンツ株式会社
さこすて-Sustainable Community Station-