3月25日のハイパー縁側@天満橋は 岩田雅希さんをゲストにお迎えしました!
テーマは「BMC(ビルマニアカフェ)からみる天満橋周辺のビルの魅力」

週3回、京阪シティモールに通うシティモ・ヘビーユーザーの岩田さん。シティモから徒歩3分の場所にお住まいです。岩田さんはリノベーション会社アートアンドクラフトで設計の仕事に従事した後、現在は北浜で旦那さんと共に工務店を営んでいます。岩田さんが設計して、ご主人が施工する形態で、住まい・店舗・オフィスなどのリノベーションをされています。

そんな岩田さんは、2008年に趣味でBMC(ビルマニアカフェ)というユニットを結成。戦前に建てられたビルはレトロで人気があるのに対し、戦後1950〜70年代に建てられたビルは、そこまで人気がないと岩田さんは言います。

BMCのメンバーは、この戦後のビルに魅力を感じて集まり、「ピンと来ていない人に教えないと!」とイベントを開催したり、写真集や本を出版したりしています。結成当初は、精力的に活動をしていたBMC。次第にメンバーそれぞれの仕事が忙しくなり、現在は細々と活動を続けていると話します。

昨年も、1冊につき1ビルを特集するという『月刊ビル』を発刊。10年間で、8冊目の発刊だそうで「全然、月刊じゃないんです。」と、笑います。BMC結成のきっかけは、2000年代の前半。戦前の建物が次々と壊され、減少していた時期でした。それに気づいた岩田さんは、2~30人のグループでイベントを行います。

そこで、ビル好きの高岡さんに出会います。戦前のビルに関するイベントをするグループでしたが、「実は、戦後のビルの方がかっこいい!」と意気投合した2人は、戦後のビルの魅力を発信していきたいと考えます。しかし、イベントに集まった人達は、戦前のビルの良さは分かるけれど、戦後のビルの良さには惹かれていませんでした。

そんな時、岩田さんの会社に後の旦那さんが入社。話をきくと、戦後のビルに魅力を感じていたので、すぐにメンバーへ。3人で集まり、好きなビルの写真を持ち寄り、見せ合って大いに盛り上がっていたそうです。

その当時、戦後のビルもどんどん壊され減少していました。「早く発信しないと、全部無くなってしまう!」と、使命感を持った岩田さんは、イベントを開催。同じ会社で、古いビルが好きそうな人に声をかけたりするうちに、現在のメンバー5人になったと言います。

岩田さんは“良い”と思うビルがあると、飛び込みで潜入するスタイル。メンバーの高岡さんが大学教授をされていて、研究を名目に取材させてもらうことができるんだとか。

築50年〜70年のビルで暮らした経験もあるという岩田さん。耐震について、不安がある方も多いと思いますが、今までの地震を超えてきた実績があるので、耐震については心配ないビルも多いそう。ただ、断熱材が無いので冬の寒さは想像以上。「冷蔵庫にいるみたいで、越冬していました。」と、笑います。

オーナーさんもただの古いビルという認識の方が多く、断熱や設備を全て更新するならば、建て替えようと考える人がほとんど。しかし、オーナーさんにこの時代のビルの魅力を熱く語ると、その価値や良さを感じ取ってくれるオーナーさんも稀にいる、と岩田さんは話します。

“古さの中にある良さ”

B M C(ビルマニアカフェ)のメンバーは、この年代のビルの古さの中にある良さを、取材やイベント・本で伝え続けています。

今回は、岩田さんが選りすぐりのビルの写真も披露して下さいました。シティモールの川向こうの小ぶりで可愛いビル。戦後のビルの標準である、端から端まで続く横長の窓が特徴だそう。
このビルの2階が使われていないことを察した岩田さんは、2階を借りることにし、自分たちでリノベーションをして、2009年からコワーキングスペースのような使い方を始めます。また、スタジオやギャラリーとしても使用していました。

さらに、夜になると階段室をバーとして利用し、「バー階段室」を催すと、たくさんの人が集まり、とても賑わったと話します。その他にも、OMMビルや隣の京阪天満橋ビルの魅力についても力説。
川側から見えるモスグリーンのタイルがお気に入りで、窓の組み合わせに魅力を感じていると言います。ビルを、“着物を着た女性”と例える岩田さん。「なかなか伝わらないけど、いいバランスなんです!」と語ります。

この年代のビルは、塔屋部分の衣装も凝っていると指摘。現在では時間やお金をかけないような部分に、工夫が見られるそう。当時は既製品が世の中に出回り始めたけれど、普及はしていない時代でひとつひとつ違うところが面白い、と話します。

シティモールについてはデパートとして建設され、入り口や通路などが広々としているところが魅力的だと岩田さん。特に階段はゆとりがあり、手すりもなめらかで美しいと絶賛しています。建築で直接触れるのは手すりくらいなので、ぜひみんなに実感してほしい!と語ります。

以前、岩田さんが取材した国立京都国際会館も、“大事な話は会議場ではなくロビーでされる”という考えで設計され、共用部に重点が置かれています。このように、階段やロビーなどの共用部を充実させる考えが、現在の建築では少ないのでは、と岩田さんは感じています。

また、土佐堀通りには、“天満橋の宝”と岩田さんが評するビルも。階段を下から見上げると“段裏”(階段の裏側)が綺麗に見えて、写真を撮らずにはいられない!と岩田さん。当時は、図面も手書きの時代。職人さんに伝えたいことは、設計士さんが濃淡で表し、職人さんがそれに応えるという流れ。人間の手で作っていたということを感じ取ることができると話します。

お気に入りの戦後のビルが、次々と壊されている今、大事に使われているビルを見ると嬉しい、と笑顔の岩田さん。ただ風景として見るのではなく、意識的にビルを見ることで、古いビルを大切にし、新しいビルを考えて建設することに繋がると言います。

生き生きと戦後のビルの魅力を語る岩田さんに引き込まれた1時間でした。また、ビルの装飾や外観だけではなく、どんな現場だったのだろう、設計者も施工者も夢がいっぱいだったんだろうな、とビルに関わる人に想いを馳せる岩田さんの姿が印象的でした!

古いビルの魅力に触れることができ、どんなまちの風景を残したいかを考えるきっかけになりました!

【岩田 雅希(いわた まさき)】
株式会社サカグチワークス 設計担当 / 一級建築士 / B M C(ビルマニアカフェ)
大阪市生まれ。天満橋在住。
リノベーション会社の老舗であるアートアンドクラフトに在籍(2001~2018年)したあと、パートナーが施工を担当する小さな工務店㈱サカグチワークスに合流。
リノベーション設計歴は20年になります。
2008年に『ビルマニアカフェ2008』というイベントを(1950-70年代のビルがどれほどカッコいいかを伝える目的で)開催し、その後はBMC(ビルマニアカフェ)をユニット名とした5人のメンバーで
小冊子の発行や、写真集の出版、千日前味園ビルの元キャバレーを使った「トロピカルビルパラダイス」
をはじめとするビルを活用するイベントの主催など、
戦後にできた“いいビル”に関する発信を細々と続けています。
ビルに住む、多目的なスペースとして運営する、リノベーションするなど、
様々な立場でビルに関わりながら、たくさんの“いいビル”が失われていくことを嘆く日々。
サカグチワークス
B M C(ビルマニアカフェ)