1月14日のハイパー縁側@天満橋は、佃梓央さんをゲストにお迎えしました!
テーマは「大川はうむ。天満橋あたりの人々の文化」

突然、背比べから始まったハイパー縁側。本日のゲスト佃さんの身長は186cm。千利休も180cmあったと言う説もあり、それに比べ秀吉は150cm程だったそう。
「利休、完全に上から目線ですね」と佃さん。歴史上の人物を身長から捉えてみると面白いかも!」と、身長の話でひと盛り上がりした後、ハイパー縁側がスタートします。

佃さんは「煎茶家」として、煎茶のお稽古やお茶会の開催や、煎茶に関わる書物や美術品の研究をしています。また、大学の学芸員養成講座では煎茶関連の美術品の扱い方や考え方のレクチャーをしています。

佃さんが煎茶の道に進んだのは、20歳を超えてからだそう。以前から和洋・東西・現代古典を問わず美術が好きだったという佃さんは、作法や礼儀・飲料としてのお茶にはさほど興味がなかったと言います。
お稽古やお茶会で、お茶を飲みながらアートや文学作品に出会う事が面白いと語ります。

江戸時代、天満橋より少し西側の船場エリアは超お金持ちの大商人が集まる場所でした。現在、その商人たちがどのように煎茶を楽しんでいたのかを紐解こう、と船場を舞台にお茶会を開いています。

船場の商人たちは川を通じて全国各地から集まってきた米を換金し、その財を以ってお茶や器を買っていました。川があることで流通が活発になり、様々な物が揃う船場。
商人たちは高級品であるお茶を高級な器で飲み、楽しんでいたそう。

酒屋さんやお茶屋さんに否定されるかもしれないけれど、“器によって味は変わる”と断言する佃さん。中身は一緒でも、口あたりから何から何まで変わってくると話します。
真っ白い器に入った黄色く透明なお茶を飲むのと、真っ黒い器でそれを飲むのでは、視覚で捉えているものが異なるのでその感じ方も全く異なると話します。

器の力でお茶の味を引き出す事ができ、逆にお茶の力で器やアートの力を引き出す事ができる。
例えば、みんなで美味しいお茶を飲みながら見ると「なんて面白い絵だろう!」と感じる絵も、1人で美術館で見ると「あれ、同じ絵かな?」と感じる事もあるそう。

このように、どういったストーリーでお茶を飲むのか・周りに何があるのか・何が置かれているのか、といった雰囲気で感じ方が変わってくると話します。
そのため、佃さんは「この掛け軸をより面白く見せる為には掛け軸の前にどのような花を活けるのか」「どのような器でお茶を飲むのか」などの空間全体の構成を考えています。

昨今、イノベーションという言葉が飛び交っていますが、新しい物は異なる物同士を組み合わせる事によって生まれます。それは、お茶の設えにも言えるそう。普通なら結びつかない物同士をポンと結びつけ、面白い見え方にすることができる。
本来の良さを引き出すと同時に、全く異なる価値観が生まれることが一番面白い、と佃さん。逆にお互いの悪さ同士が引き立ち、マイナスとマイナスが掛け合わされて、また面白い物が生まれるという“奇跡”が起きることもあるそう。

江戸時代に続いて、明治の頃も財閥のお金持ちの人々がお茶を趣味としていました。彼らはお作法やお手前を楽しむだけではなく、美術作品を自分なりに組み合わせ、どれだけ面白い空間が演出できるかを楽しんでいたそう。

さらに大阪商人は財を成していたので、それまで日本にはなかった掛け軸や茶器を中国から輸入する事もでき、新しい掛け算の面白さに浸っていました。そして、それはよそ者だからこそできたと佃さんは指摘します。

“化学変化を起こしていく”

これは美術や料理に関しても同様で、伝統を守りながらも外から入って来た物を吸収できた人がまた新たな伝統を創ります。新しく入って来た、新しい人の、新しい発想で元々の流れに化学変化を起こしていく。大阪は川の流れがあり物や情報が次々と運ばれてくるため、一見すると“むちゃくちゃな”掛け合わせが起こしやすかったのではないか、と佃さんは考えます。

佃さんは、2年ほど前から「超茶会」を開催しています。
プロジェクターと白い壁があればどこでも開催できるという「超茶会」は、デジタル映像で美術作品を共有し、オンラインで語り合う茶会で海外からのアクセスもあるそう。
お作法や礼儀ではなく、アートを見て自由に語り合う事を1番のベースにしていると話します。専門・非専門は関係なく、アートを前にして素直に話し、コミュニケーションをとる、そこにたまたまお茶がある、という茶会の在り方を提案しています。

ただ、「お手前やお作法ではない」と言うと、お茶関係の方に対し攻撃的に捉えられてしまうことも。
しかし、佃さんは今までのものを否定している訳ではなく、培われてきたものがあるからこそ今が成り立っていて、さらにそこに外からの力を混ぜていきたいと考えています。

「“ハイパー縁側”は縁側愛好家に対しても批判的に映ることがなく、いいネーミングだ。」と佃さん。縁側から連想する、ゆるっと人が集まる環境でゆるい会話を繰り広げ、そこには何か意味があったり引っかかるものがある可能性を秘めている場、と佃さんは分析。
ゆるやかな融合の場で、人と人との繋がりを見出す事ができるハイパー縁側の本質や良さを語って下さいました。

このようなゆるさは、お茶会で出されるお料理にも通じると佃さんは言います。
料理人が悩んで悩んで創り上げたお料理はもちろん美味しいのですが、ゆる〜い空気でふわっと出てきたアイデアのお料理が、バシッとその場を整えることがあるそう。

最後に、「天満橋はかっちりとした文化や建物が色濃く残っている訳ではなく、時代の流れの中で浮き沈みもありながら、流動性があるまち。だからこそ、新しい事をしたい人が入ってきやすく、深掘っていくとしっかりとした芯がある。」と天満橋の魅力で締めくくられました。

そんな天満橋で、ゆるくも新しい発想で煎茶家として活動される佃さんのますますのご活躍が楽しみです!自己紹介の途中で終わった今回のハイパー縁側の続きは、乞うご期待!

【佃 梓央(つくだ しおう)】
一茶庵宗家嫡承 煎茶家
慶應義塾大学文学部卒業。東京藝術大学大学院美術研究科中退。父佃一輝に師事。号は如翺(じょこう)。
関西大学非常勤講師や朝日カルチャーセンター講師を務めています。
2016年夏から2017年新春まで5回「大阪日日新聞コラム『澪標』」にコラムを掲載しました。
2018年にはグランフロント大阪北館ナレッジキャピタル「超学校」にて、レクチャーシリーズ「MOU-ICHIDO大阪文化」と「『集まり』と『交わり』の文化論」をコーディネートし、現代・未来社会における古典文化の学びを提案しました。
また2018年から、さまざまな芸術作品のデジタル画像を使いながら、お客様と数人の専門家の対話形式で行う茶会「超茶会」を、グランフロント大阪北館シマノスクエア、和泉市久保惣記念美術館、泉屋博古館等でスタートさせました。
G20大阪サミット2019では「配偶者プログラム」1日目に茶事を担当し、江戸時代・明治時代に大阪で盛んに行われ、今なお続く煎茶や文学や美術を介した人と人との交遊を、各国首脳のパートナーの方々とご一緒しました。
2020年より、ミヅマアートギャラリー、繭山龍泉堂と共同し、現代アートと中国古美術とが煎茶を介して出会う新感覚のサロン「ART GATHRING」を立ち上げ、新たな美的価値を模索しています。
一茶庵宗家
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