2021年12月8日のハイパー縁側は、井上彩子さんをゲストにお迎えしました!
テーマは「東西福祉物語~これからの地域のあり方を考えよう~」

社会福祉士・精神保健福祉士の2つの国家資格を取得している井上彩子さん。縁あって、東京・大阪・名古屋の三大都市で、様々な方々と関わり合ってきました。今夏は、ここ数年のコロナ禍で体感した福祉現場の最前線のお話を含め、人や地域との向き合い方についてお話をしてくださいました!

井上さんは幼い頃から、ご両親のお仕事の都合や進学のタイミングで引っ越しをする事が多々ありました。生まれは愛知県名古屋市でしたが、その後東京に移り20年ほど住んでいたそうです。大阪へ引っ越してきたのは2021年。まだ越してきて1年も経っていません。

そんな井上さんが福祉の世界へ飛び込む事になったきっかけは、ご家族の事情やご自身の苦悩が元となっていました。井上さんはご家族に障がいのある方がいるため、その当事者の家族として生活をしてきました。そのため、自分と他人には違いがあり、人それぞれ個性があるのが当たり前という状況だったと話します。

そして大人になってから、井上さんご自身が悩んで苦しかった時に、困っている人を助ける方と出会いました。その出会いから、当事者の家族や当事者という立場から枠を広げて、当事者を助ける人になりたいという想いが芽生えたと話します。人はいくらでもつまずきうる、だからこそ、その時にサポートができる人になりたい、と。

支援職を志したのは大人になってからですが、幼い頃からその息吹は芽生えていました。悩みの多い子ども時代を送ったため、寂しい想いをしている友人の姿が目に止まることが多かったと話す井上さん。学校になかなか来る事ができない友人がいると、誰に言われずとも自分からお手紙を書き、友人へ送っていました。

お節介ともいえるこの行動に友人の心は動き、学校へ来るようになった子もいたそう。小学~高校時代は引っ越しをして他の地域へ行っても、同じく寂しそうにしている友人に声をかけ、寄り添って来ました。

“待っているよ。”

一度コミュニティから離れてしまった人がまた元へ戻っていく、という過程には多大な労力が必要です。人が何かにつまずいた時に、「待っているよ。」と声をかけ寄り添い続けることが大事だと話します。

2019年12月から始まった新型コロナウイルス流行の渦中、井上さんは東京から大阪への移住が決まり、2つの大都市でのコロナ禍を経験することになります。生活困窮者は困難な時にどんなことに苦しんでいるのか、どうやって支援できるのか?に直面したと話します。

感染が拡大し始めた当初、井上さんは東京の新宿区にて支援を行っていました。新宿区には日本最大の歓楽街、歌舞伎町があります。歌舞伎町という華やかな街での成功を夢見て、腕一本で生きてきた人たちは、休業という壁にぶつかります。華やかな生活をしてきた人たちが支援の手を必要とし、生活そのものを変えざるを得ない状況にどれだけ応えられるのか、悩む日々は続いたと話します。

外的要因・内的要因に問わず、個人や社会全体が思うようにならなかった時、手を差し伸べられる社会福祉であるために、現状の体制や規則の再構築をしなければならないと強く思っているそうです。

東京・大阪・名古屋の三大都市で生活経験のある井上さんは、東海道新幹線のぞみの沿線上で「助けて」という声があればすぐに駆けつけたい!と話します。守備範囲は広く、人々の孤立を防ぐための準備はいつでもできています。
どこにいても、“おせっかい”の心を大切にする井上さんのあたたかさと優しさに包まれた1時間でした。これからも人を想い、寄り添いつづける井上さんのご活躍を心より応援しています!

【井上 彩子】
社会福祉士 / 精神保健福祉士
障がいのある兄弟と育つ。大学では戦争体験者の恩師から戦争と人権の歴史を学ぶ。
その後も勉強を続けながら、病気や障がいのある人、引きこもりの人、ホームレスの人、LGBTQの人、在日韓国朝鮮籍の人などマイノリティ支援を続ける。
やがて自らもうつ病を患うが、周りの人々や医療保健福祉職の人々に助けてもらいながら、福祉の資格をとり援助職につく。
その後、コロナ禍の東京と大阪にて相談支援に従事。そこで感じたさまざまなこと、人と人とのつながり、地域社会の在り方などを皆さんと語り合いたい。