2021年11月16日のゲストは、橋田裕司さんをゲストにお迎えしました。
テーマは、『人の心を癒す「あかり」の力』。
手作りの照明を持って登場した橋田さん。なかに入っているのは電球ひとつ、なのにぼんやりとしたあたたかい光が会場を明るく照らします。焚火とよく似て人をひきつける、灯りの不思議な力を感じます。

照明は心理学である、橋田さんはそう語ります。
私たちは普段の生活の中で照明の影響を無意識のうちに受けているというのです。例えば、LED灯は青白くて明るい光を出します。これを「色温度が高い」といい、こうした光は人に緊張を与えるそうです。

一方で、豆電球のような色温度が低い灯りに当たると、心は和み、体はリラックスします。明るさが減ったとしても暖かい感触がとてもよくのこり、暗い印象は受けません。
逆に、夜の病院では照明が青白いため、暗くなると怖い印象になってしまうのだといいます。

照明は心理学である、橋田さんはそう語ります。私たちは普段の生活の中で照明の影響を無意識のうちに受けているというのです。例えば、LED灯は青白くて明るい光を出します。これを「色温度が高い」といい、こうした光は人に緊張を与えるそうです。

一方で、豆電球のような色温度が低い灯りに当たると、心は和み、体はリラックスします。明るさが減ったとしても暖かい感触がとてもよくのこり、暗い印象は受けません。逆に、夜の病院では照明が青白いため、暗くなると怖い印象になってしまうのだといいます。

また、灯りは体の調子にも影響を及ぼします。昼と夜では必要な光の質も変わりますが、一日中照明にさらされている現代人は体のリズムを整えることができません。
あなたが感じる体調の不良は、実は照明が原因かもしれません。

 

“灯りを通じた心のケア”

橋田さんがクラフトの照明を始めた原点は「照明塾」です。照明教室の立ち上げ当初は苦しい時期もありましたが、自分では「絶対にいける!」と信じて続けました。そして、次第に人が集まるようになり、照明を起点に様々な交流が生まれるようになりました。その経験から、橋田さんの活動は光の活かし方や灯りを通じた医療・介護などの心のケアに繋がっていきます。

“癒し”は何も考えない時間から生まれます。ただ、何も考えない状態は意図的には作ることは出来ません。副交感神経に作用するのは環境、身を置く場所です。つまり、癒しのためには「考えない環境」をつくらなくてはなりません。そのひとつの手段として、照明を用いることで神経や姿勢が変わってくるといいます。

例えば、ハイパー縁側のこの場所は暗い暖かい照明に包まれています。すると、話し手の声のトーンは低くなり、聞き手は集中して耳を傾ける姿勢になるそうです。
光の設え次第で、場の空気はコントロールできます。手作り照明は色や形、そして質感に揺らぎがあり、光がとても柔らかくなっています。人に癒しとやすらぎを与える、ずっと見ていられるような光です。

橋田さんはこうした手作りの照明を子供ホスピスなどにも設置しています。毎日つらい思いで過ごすのは患者本人だけではなく、ご家族の心にも傷を残します。最期のひとときをどう過ごすのか、その空間自体は現在の医療ではあまり考えられていないと橋田さんはいいます。

一方で、表情があるものは見ていて安心します。クラフトの照明に照らされて、人生の最後にこんな天国みたいなところに来られて幸せ、といった言葉も患者さんから聞かれたそうです。

いま、病院ではお花や食べ物などを持ち込めないケースもあります。そこで、灯りを持っていく事で何かできないか、と橋田さんは考えます。

通常、介護や終末医療は大変で厳しい仕事と捉えられ、そのマイナスを減らしていこうとします。橋田さんは違っていて、大変さを減らすのではなく大変さを幸せで明るくなるような大変さに変える、その価値の転換をやっていきたいのだと言います。

「灯りを楽しむ場」と「灯りがある空間を楽しむ場」、同じように見えて実は少し異なります。灯りがある空間づくりは、単に灯りを作る事よりももっと複雑になります。

医療的な観点で灯りと空間をデザインしようという活動も、まだまだ少ないのが現状。灯りを通して人の心に安らぎを灯す、照明デザイナーの挑戦はまだまだこれからです。

【橋田 裕司(はしだ ひろし)】
照明塾 塾長 / あかりバンク代表 / 有限会社プロト商品計画 代表取締役 / 照明デザイナー
照明デザイナー橋田裕司が「照明を考える・作る・楽しむ」をテーマに、1992年より照明塾の活動を開始。
1996年からは「手づくり照明教室」を開催。
そして、心癒すあかり「ライトテラピー」の提唱やあかり作りの本の出版、展覧会やイベントの開催などを通して、全国であかりの啓蒙活動を行っている。
2005年からは、手作りのあかりを病院や老人施設に寄贈する「あかりバンク」活動を展開。
2012年には、全国初の「こどもホスピス」へ100点以上のあかりを提供し注目を集める。(2021年には、横浜にできる「こどもホスピス」へ寄贈予定)
2006年からは、有馬温泉で「工作バー」を運営。他、大津など各地で手づくりのあかりによる「まちづくり」にも取り組んでいる。
2020年には、あかりアートの作り方と手作りのあかりを医療・介護・災害に活かすことをテーマに「あかりの学校」(マール社)を上梓。
2021年、入浴とあかり浴を楽しむ介護施設「ハチドリのゆ」を開設。
※照明塾の作品が中学美術の教科書(光村図書)に掲載。
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