2021年7月28日のハイバー縁側のゲストは、NPO法人BRAH=art.の岩原勇気さん。
障害福祉施設はじめ福祉に携わる中で様々なまちづくり活動を行っている岩原さん。どんなお話が展開するのか楽しみです。

テーマは「いそがばまわれ~社会を楽しくするのが福祉のミッションだろ?~」

岩原さんは現在、大津で障がい者福祉施設の運営をしていらっしゃいます。
その原点にあるのが最初に就職した障害福祉施設「琵琶湖学園」での経験。

琵琶湖学園では「施設の子どもたちを世の光に」という理念が掲げられており、そこで様々な事を考えるきっかけを得たと言います。

その一つとして、障がい者福祉施設では利用者のためにと尽くしすぎて、かえって支援者の負担が大きくなってしまう問題があります。

本来、利用者・支援者は垣根なく全員が対等に光り輝く存在であり、これをどう実現するかが現在の取り組みの軸になっています。

自分を差し置いて世のため人のために頑張る、という姿勢はどこかで無理を生じさせてしまう。

利用者が輝き、そして支援者自身も輝くことを目指しているからこそ、施設の利用者をお客様として扱うのではなく、ときには利用者のことを「あいつ」と呼んだり、一般の福祉施設のイメージとは違った空気感を生み出しています。

岩原さんが開業した施設 唐橋逢(からはしえ)。ここはガソリンスタンドをリノベーションして作られた場所で、内部が透けて見える構造になっています。中は生活介護事業所「office-cosiki」というオフィススペースになっています。

「こしき」とは車輪をつなぎとめる部品の事であり、自分たちは目標に向かって人と人とをつなげる役割を担うというメッセージが込められています。

施設で制作した商品を、「障がい者がつくった」「障がい者アート」のように特別視するのではなく、地域に広がる活動として行う事が重要であるといいます。

また、岩原さんたちは「唐橋しじみ市 with 勢多市」という活動の事務局もされていて、地元の商工会と相談しながらNPOとしての活動をうまく成立できるよう取り組んでいらっしゃいます。

いまはビジネスとして成立しなくても10年後にはビジネスになっているかもしれない、そこを模索しながら地域に貢献していく事がNPOとして重要な役割になっていると言います。

このように多様な活動を展開される、岩原さん率いるBRAH=art.さん。
利用者となる障がい者の方だけでなく、“誰もがやりたいことをやる”という事をコンセプトに、スタッフの皆様もやりたい事をやっているそうです。

“施設は地域の宝であれ”

岩原さんが「琵琶湖学園」に勤めていた時、上司から『施設は地域の宝であれ』という言葉を授かりました。本来、社会福祉施設は地域そのものであるべきであり、地域の宝となるような施設を目指し、岩原さんは福祉・まちづくり活動を進めています。

これから先の福祉につながる「まちづくり活動」として、瀬田の地域循環事業に取り組んでいます。現在、瀬田地域では人口流入により子供の数が増加している一方で、進学や就職によって地域を離れる人も多く、昔と比べ地域福祉に携わりたいという若者が減っているそうです。

一時的に地域を離れたとしても、いつかまた戻ってきたいと思えるように、地域の産業や生活を子供達に知ってもらう活動を行っています。“子供づくりから地域づくり” が今までの枠をこえた福祉の活動になっています。

地域の人達の行動であったり生き方に触れる事で、お互いを深く知り、それが地域での信頼となってゆるく繋がっていく。その結果、お互いにサポートしあう環境が整い、地域に助け合いの輪が出来上がるといいます。

いそばがまわれ、地域に根差したまちづくり活動が巡り巡って地域の福祉全体につながっていく。
岩原さんたちBRAH=art.は地域の輪の「こしき」になって地域づくりから福祉に取り組んでいます。

【岩原勇気】
NPO法人BRAH=art. 理事長 / 一般社団法人とこ 理事
兵庫県出身。(社福)びわこ学園に入職、発達障害や重度の重複障害がある人たちと関わる仕事に10年以上携わる。
2014年「障がいがあろうとなかろうと好きなこと得意なことを仕事にして精一杯生きる」をテーマに、NPO法人BRAH=art.設立。隠れ家的おしゃれ居酒屋跡テナントを居抜きのままデイサービスにしたり、ガソリンスタンド跡地をリノベーションし、カフェギャラリー「spoons」と生活介護事業所「cosiki」を開設。地域団体や、企業、住民と共に、地元の朝市や、子ども食堂の運営に携わったり、法人としてこどもの学習支援やまちづくりに参画。
2019年に開設した「atelier ikkai-sankai」は、廃屋での展覧会や、銭湯でのLivePaintingなどを通じてまちを元気にする取り組みを始めた。
従来の福祉イメージではなく、常に開かれていて、おしゃれで、ここで働きたい!と思えるような場所。cosiki(コシキ)は自分たちが中心ではなく、軸と周りをつなぐ存在。障がいがあるひとが支援される側ではなく、地域を支援する側にまわることを大切にしながら、人と人とのつながりをコーディネートできるよう事業を展開している。
NPO法人BRAH=art.