2021年2月5日のハイパー縁側@東本願寺は、真宗大谷派(東本願寺)宗務所の梯(かけはし)さんをゲストにお迎えしました。
テーマは「市民緑地に対する東本願寺の想い」。
梯さんはいわゆる“お坊さん”ですが、お坊さんと一言で言っても全員が修行しているわけではなく、普段は東本願寺の事務官の総務部として法規や警備防災、広報など、幅広い裏方のお仕事をされています。
広報としては、東本願寺と近隣の方々との関係の構築や、行政との交渉などのお仕事をしておられます。
東本願寺は、一般の皆様が建設費を寄進したり、建設時に無償で奉仕したりなど“庶民の力”で建てられた寺院で、落慶式の際には10万人を越す農民が集まったそうです。
今でも親鸞聖人の七百五十回忌などの節目の大きな法要の際には、多くの観光バスが東本願寺の前に停まり全国から多くの方がご参拝に来られます。
梯さんが印象的だったのは、「生きている間に来られるのはこれが最後」との思いで来られたおばあさんがお孫さんに仏具を買っていたこと。
その仏具はお孫さんにとってはスタートとなるはずで、このように法要や相続の節目ごとには門徒さんの思いが連綿と繋がってきたことを実感したのだそうです。
そのような歴史のあるこの地での市民緑地化が、新たなドラマのスタートになったらいいなと考えておられます。

“地域に開かれた門前”

子供の頃に遊んでいた風景はいつまでも記憶に残るものです。市民緑地が、荘厳な東本願寺を借景として、ほっとしたり、ご飯を食べたり、コミュニケーションをとったりと、ゆっくりとした時間を過ごせる空間になり、笑顔を想起する場所になればいいなとお話しされます。
梯さんは最近「東本願寺は入りにくい」と言われたことがショックだったそう。
しかし実は、東本願寺は「誰にでも教えを聞いてもらい、社会に戻って教えを確かめてほしい」との親鸞聖人の教えがあり、他の宗派よりも社会に開かれているのだそう。
例えば、ハイパー縁側の舞台となっている“大門(御影堂門)”の頭上には、実は“大経”という浄土真宗の最も重要なお経を唱えているお釈迦様が安置されており、お釈迦様の教えを聞きたい人は誰でも入れる、という意味があります。
また、お寺の門の中央には通常娑婆(シャバ)と儀礼的な空間を仕切る結界として段差がありますが、東本願寺の大門には他のお寺と違って段差がありません。
東本願寺の敷地から、このように社会に開かれた御影堂門を通って市民緑地までを開かれた空間にしていきたいとお話されます。
最後に、ご自身の職務を黒澤明監督「生きる」の主人公に準え、これから様々な方々と公園(市民緑地)を創り上げていく事の大切さをお話し下さいました。
市民緑地化を通して、東本願寺や地域の皆様、行政と「やりたいこと」のある市民が意見交換する場ができて実現されていく。それは、長年地域に根付いてきた土着の人々に新しい“風”が吹いて新たな“風土”になっていく、そんな歴史的な始まりなのかもしれませんね。
【梯 宗(かけはし あつむ)】
真宗大谷派(東本願寺)宗務所 総務部次長
1975年 福岡県八女郡出身
大谷大学を卒業後、1997年に真宗大谷派宗務所に入所。
2017年から周辺地域との交流や広報業務などを担当する総務部に転任し、京都市と共に東本願寺前の緑地帯の市民緑地整備に関わってきた。
東本願寺では、京都駅ビルと西本願寺と共催して「下京・京都駅前サマーフェスタ」を開催しているが、その一環として、緑地帯と門前の直線道路(市道:皆山経6号線)を活用し、「食」「アート」「防災」をテーマにした「京都 食とアートのマーケットin東本願寺」を開催しており、その担当者でもある。
東本願寺の門前が、全国からの参拝者をはじめ、地域住民や観光で訪れた方々にも身近で親しみやすい緑の空間として、新たな交流や賑わいが生まれることを願い、現在も取り組みを進めている。
真宗大谷派 東本願寺