2024年8月19日のハイパー縁側@中津は大内 翔平さんをゲストにお迎えしました!
テーマは 「Town Hall〜まちにひらく工務店〜」

京都市伏見区で育った大内さん。阪急中津駅を降りた時点で、ホームの狭さや、駅前の居酒屋のユニークさに触れ、中津の魅力の虜になったそう。京都にはないディープな面白さがある中津のファンだ、と笑顔で語ります。

大内さんは、地域密着型の工務店オーワンコーポレーションで、建築士として働いています。もともと不動産の会社に勤めていたお父様が、40才の時に伏見で創業しました。その頃、学生だった大内さんは、お父様の背中を見ていて自然と興味が湧き、建築関係の専門学校に進学。将来的には、お父様の会社で働くイメージを持っていた、と言います。卒業してから5年間、設計事務所で勤務した後に入社し、現在は取締役を務めています。

オーワンコーポレーションは、設計建築・建売住宅販売・リフォーム・不動産売買など、幅広い事業を展開しています。当初は、滋賀県の湖北まで営業エリアを広げていましたが、現在では、ほとんどの案件が地元の伏見だそう。「ここの会社よかったよ」「次は、うちの実家のリフォームもお願い」と、お客様の紹介や口コミで広がり、気づいたら会社のある伏見エリアに集中していた、と言います。

大内さんが入社した当時、営業をしていると、ハウスメーカーと同じ仕様を低価格で求められる事の連続だった、と言います。大内さんは、「差別化を図りたい」と強く感じるように。そんな中、広い土地が確保できない京都市内でも庭のスペースを楽しめる、屋上庭園付き住宅と出会います。そこから、建売住宅に関しては基本的に全件屋上庭園付き住宅を提案。今では、伏見エリアで四角い屋上付きの家を見かけると、「オーワンさんの家」と言われるくらいの認知度だそう。

会社を構えてから、8年・9年と経ち、お客様は増え続けてきました。しかし、仕事を通じてまちづくりをしているはずなのに、地域に溶け込めていないし、地域の人との交流もない、と大内さんは感じていました。雨漏りなど、本当に困った時にしか地元の工務店に声がかからない。小さいリフォームや水栓交換などの、ちょっとした困り事でも声をかけてもらえる存在でありたい、と大内さんは常々考えていたと言います。

交流が生まれない原因は、工務店を訪ねたら「土地を買わされるかもしれない」「しつこい営業をされるかも」と、不安に感じている人が多いからではないか。不動産や工務店に対する敷居が高い、と大内さんは気づきます。そんな状況で、工務店がイベントを開いたところで「裏がある」と感じられてしまう。

また、工務店の1階にカフェのようなものを開いても同じ。「おしゃれな工務店やなぁ」と、地域の人に言われるだけで、本当の意味ではまちにひらけない。だから、まちにひらくなら完全に事業を分けるべきだ、と大内さんは考えていました。

そんな大内さんが去年の9月末にオープンしたのが、『Town Holl Cafe OS’』。会社の近くにありますが全くの別建てにし、カフェというツールを用いて、地域の困り事の解決を目指しています。この辺りは、若い方から高齢の方まで広い年齢層が住んでいる地域。「誰も手伝ってくれへん」「町役場行っても、助けてくれない」という声を、よく耳にしていた大内さんは「町役場」のような「カフェ」にしたい、と「Town Holl Cafe」と名付けました。

役所ができない事は、営利的な事。民間ができない事は、非営利な事。その“官民の間をつなぐ”ような役割を果たしたい、と考えています。最初から、お兄様と2人で中心となり、カフェ運営を進める計画をしていたので、店名の「OS’」は、大内の複数形「大内(O)ブラザーズ(S)」。響きもいいし、皆さんに呼んでもらいやすい、と微笑みます。

9月にオープンした『Town Holl Cafe OS’』のカフェ経営で「利益は求めていない」と、大内さんは言い切ります。だから、「面白い事をめっちゃ思いついて、何でもできる」と、爽やかな笑顔で話します。月に1回イベントをしたり、地域の方の手作り雑貨や野菜などを販売するスペースを作ったりする事で、地域コミュニティの輪が広がっています。

秋には、地元の農家さんの規格外のさつまいもを買い取り、カフェの屋上で焼き芋イベントを開催。たくさんの地域の人々が集まったそう。お孫さん連れの方もいたり、家族で気軽に出かけるきっかけになっている事を実感しています。本日も、カフェで防災食に関するワークショップを開き、今まで出会えなかった地場の地主さんともつながり、新たなコミュニティが広がる手応えがあった、と言います。

“1対1の関係性”

あくまで、地域の方との「1対1の関係性」を築きたいと考えている大内さん。カフェを運営するスタッフの人数は限られていて、工務店業務との兼業スタイル。だから、周りのスタッフからは、コーヒーマシーンを導入し、できるだけ手間を省くように勧められたそう。しかし、大内さんはあえてドリップで淹れる方を選択。5分ほど、コーヒーをドリップする時間に、お客様との会話ができる。コーヒーを売りたいわけでない。コーヒー1杯で寄ってもらえたり、店頭の雑貨や野菜を目当てにちょっと覗いてもらえるような、敷居の低い店にする事で、“地域コミュニティの創生”を進めています。

カフェの営業時間は短く、低価格で提供しているので、地域の方から「大丈夫?」と運営について心配される事も。大内さんは、本業がある事をしっかり伝えています。そして、培った関係性をもって、何か困った時に兄弟に相談してもらえたら、と考えています。

代表のお父様には「この事業は、10年後に花開くから」と、お願いして事業を推進してきました。ただ、大内さんの予想以上のスピードでつながりが広がり、事業に還元されているそう。地域内でも、また地域の枠も超え、“化学反応”が起こっている事を肌で感じている、と語ります。

と、ここで、カフェ事業の中核を担うお兄様の勇人(ユウト)さんがご登壇。車関係の営業をしていましたが退職し、去年から翔平さんと働き始めたそう。前職は、商品ありきの仕事だったのに対し、今回は自分自身を売り込む事が必要。「未だに、難しさを感じている」と、打ち明けます。現在、弟の翔平さんがイベントなどの企画をし、兄の勇人さんが、その企画を形にし、実現するという役割分担。翔平さんは、兄弟だからゆえの無茶ぶりにも応えてくれ、収めてくれる。今まで、自分の妄想だけで終わっていた事を具現化してくれるパートナーの存在を、ありがたく感じていると言います。

勇人さんは、年子で上下関係がほぼない状態で育ってきたけれど、ここは兄として弟の無茶ぶりに、広く大きな心で受け止めるようにしているそう。そんなお2人は、家族・兄弟経営だと内向きになりがちだけれど、社内で背比べをする事には興味はない、と言います。地域の中で、もっと広く深い事をしていこう、と常に外を向いています。

勇人さんは、これからも地域密着でアナログな部分も大切にしながら、楽しいまちにしていきたい。翔平さんも、駅も近くないし利便性は低いけれど、面白いまち・地域の子たちが住みたくなるようなまちにしたい、と意気込みます。また、「町役場」のようなカフェを目指して営業している中で、地元の中学校に「働く」をテーマに講演してほしい、と言う依頼も。

楽しく働く姿を見せ、中学生に「働くって楽しいかも」と感じてもらいたいし、「地元で面白い事ができる」という可能性も伝えていきたい、と考えています。地元に魅力を感じて残る子たちが増え、同級生カップルがたくさん生まれたら嬉しい、と夢を語って下さいました。

得意分野も経歴も性格も違うお2人。兄弟という強みを生かし、会社の未来・まちの未来を楽しく創造していく姿が印象的でした!柔軟なパートナーシップで、これからも安心感とワクワクを、まちにもたらしてくれそうですね!

【大内 翔平】
株式会社オーワンコーポレーション 取締役 / Town Hall cafe OS’
京都府長岡京市生まれ。京都市伏見区育ち。
オーワンコーポレーションとTown Hall Cafe OS’の最寄りの学校、神川小学校・神川中学校出身。
父(弊社代表)の影響で建築に興味を持ち、建築士になり設計事務所で約5年勤務し現在のオーワンコーポレーションへ就職。
建築士として住宅や非住宅の設計・建築・監理をメインに不動産売買や仲介業務も行う。
地域企業の今後の役割は『地域のコミュニティ』の創生だと感じ、2023年9月末よりコミュニティスペース Town Hall Cafe OS’をオープン。
地域内の交流、官と民をつなぐ、そんな場となるカフェを目指し活動しております。
株式会社オーワンコーポレーション
Instagram
Town Hall Cafe OS’
@ouchi_shohei