2024年9月3日のハイパー縁側@淀屋橋は、塗野直透さんをゲストにお迎えしました!
テーマは 「エシカルで若者にモテる企業になれるのか」
大学在学中、20才の時に株式会社ラントレを設立した塗野さん。大学時代に出会った友人ら4名をコアメンバーとし、約50名のインターン生が在籍。現在、企業の組織コンサルティングや、採用ブランディング・マーケティングなどに取り組んでいます。また、日本最大級のエシカルの祭典『エシカルエキスポ』の開催にも力を注いでいます。

塗野さんが起業するきっかけは、幼少期の環境にある、と言います。母子家庭で、0才から6才まで、広島の施設で育ちました。小学校入学前に、大阪の祖父母の家に引越し、7才からは大阪で暮らします。広島での生活は、良い記憶も悪い記憶もあったと振り返り、子供心に良くしてもらった、という思い出の地と語ります。
そんな体験から、社会的立場の弱い人に、社会全体として目を向けられるような、想いを馳せられるような“優しい世界”を目指したい、と考えるように。そして、進路を決める時には自然と社会福祉に携わりたい、と福祉の世界に興味を持ちます。

今の社会福祉の在り方を変えるのに、1番手っ取り早い方法は「政治家になる事」という発想だった塗野さん。政治家の輩出数が多い、早稲田大学の政経学部を目標に受験勉強に励みます。しかし、同居するお祖父様が癌を患い、実家から通える大学に進路を変更せざるを得ない状況に。
そこで、塗野さんは地元の近畿大学への進学を選択。それをきっかけに、政治家ではなく、起業家を目指す事にしました。

大学入学当初から起業を意識していた塗野さんは、すぐさまインターンに参加したり、積極的に動き始めます。1回生の時、誰かに教えてもらったのか、自身で調べたのか「エシカル」という言葉に出会います。「エシカル」は、「倫理的な」「道徳的な」と訳されますが、自分の起こす言動や消費活動が、その先にどういう影響を及ぼすのかを考える事が「エシカル」だ、と塗野さんは捉えています。
そう考える人がもっと増えていけば、目指したい“優しい世界”に繋がるのではないか。塗野さんは、「エシカル」という言葉に出会い、「エシカル」のマインドや価値観を広めていく事が自分の使命だ、と感じます。ただ、「エシカル」ときくと、すぐに「救済弱者」や「環境配慮」と結びつけられがち。「エシカル」=「環境配慮」と、決めつける社会に対し、違和感を抱いています。そうではなく、目指す未来を実現する為の取り組みが、結果的に環境に配慮していて、そのプロセス自体が「エシカル」だ、と力強く指摘します。

“日本の古き良き文化”
また、「エシカル」「サスティナビリティ」などは横文字で、海外から入ってきた文化だと感じている人も多い。しかし、それらは日本に元からある古き良き文化。「おかげさま」「もったいない」「足るを知る」など、昔から大事にしてきた日本人の精神そのもの。「エシカル」な今を生きる為の本質だ、と塗野さんは考えています。
4年前に起業してから、東大阪の町工場の社長と会う機会が多かった塗野さん。当時は、今より「エシカル」という言葉は浸透していませんでした。中小企業の社長も例のごとく、海外の文化と考えていたり、同世代の若者同士で取り組むもの、と敬遠する人ばかりだったそう。しかし、「エシカル」は昔からある日本の文化だと説明する事で、共感してくれる人が増えていく経験を重ねてきました。
お祖父様に育てられた事も影響し、実感を込めて伝えるようにしている、と言います。そんな日本の文化を「イケてる」と若者たちが感じてくれたら、もっと誇れる日本になれるのではないか、と塗野さんは提案します。

学生時代、カンボジアを訪れ、商品開発に携わるプログラムに参加した塗野さん。そのままカンボジアで会社を立ち上げようと考えていましたが、コロナ禍に突入し断念。日本で学生団体を立ち上げ、フェアトレード商品を日本に広める活動を始めます。貧困問題や環境問題、ジェンダーなどの社会問題に向き合い、志高く活動する学生の仲間たちと関わってきました。
そんな仲間たちも、大学卒業後は企業へ就職。久しぶりに会うと、あの時の熱い想いはどこへやら。目の前の業務に追われている姿を目の当たりにし、憤りと悲しみを感じたと言います。

そこで、塗野さんは、「エシカル」をテーマにした若者の為の万博『エシカルエキスポ』を思いつきます。「何のために働くのか」を言語化し、理念パーパスを落とし込み、社会にアウトプットする場であり、若者と企業をつなぐイベント。「エシカル」に精通した企業と学生がタッグを組みブースを出店したり、トークセッションなどを行います。当初は大阪のみの開催でしたが、今年は東京にも進出し、2拠点で開催。
塗野さんは、「エシカル」の知名度が上がってきたとはいえ、まだまだマイノリティだ、と話します。だからこそ、同じような想いを持つ人と繋がりたいと望む人が多い。そこで、『エシカルエキスポ』に加え、月に1回『エシカルパーティー』という交流会も開催。100人ほどが集まり、人と人とが繋がる機会も提供しています。

20才で起業し、若さという尖りに「エシカル」という魔法を纏って突っ走ってきた、と自身を振り返ります。99%の人に「エシカル」で本当に儲かるのか、と共感してもらえない現実にぶちあたり、社会の厳しさを知ったと言います。そんな中、塗野さんが大事にしている事が、「エシカル」を通じて1人1人の“配慮範囲を広げる”事。
塗野さんは、「モテていない企業が多いのではないか」と、指摘します。素晴らしい未来像を掲げているのに、それが伝わっていない企業が多い。だから、採用に困っていたり、離職率が高くなってしまう。想いが届いていないのは、もったいない。企業がどんな想いで働くのかを言語化したものと、理念パーパスをすり合わせる事で、社内のエンゲージメントが上がる。すると、離職率が下がり、実利にも繋がる。結果的に、ワーキングの中で配慮範囲が広がり、働く意味を見出す事ができる。すると、“配慮範囲を広げる”という自分たちのミッションを遂行できているのではないか、と考えています。

家賃数万円のアパートの一室からスタートした会社。淀屋橋・中之島エリアのオフィスビルに事務所を構える事に憧れがある、とビル群を見上げます。いい車に乗りたいし、高価な時計を身につけ、大きな家を持ちたい。分かりやすい成長の証に魅かれる、とざっくばらんに話す塗野さん。ソーシャルビジネスに携わる人の中では珍しいタイプ、と笑います。根性論だし、昭和気質な部分が多い、と自身を分析します。
また、会社は完全なピラミッド型組織ですがコアメンバーのお1人は、「人を巻き込む力」や「人をワクワクさせる力」に長けていて、ついていきたくなる、と塗野さんの魅力を話します。一度、他企業に就職したものの、「ワクワク度が断然違う」と、塗野さんの会社に舞い戻ってきたそう。

今後、想いを持っている老舗企業など後継者不足に悩む側と、想いはあるけれど何もない若者のマッチングをしたい、と考えています。実現するには、若者側に学びが必要になるので、スクールのような事業を展開していきたい。その為には、会社として社会的な信用が必須なので、IPOを目指す事も視野に入れているそう。そして、今期の目標は「エシカル」を通じて、ビジネス的な価値を上げ、企業の課題を解決できる地盤を作る事。
また、来年の『エシカルエキスポ』では、企業数も増やし、新たな出会いと共創が生まれるという期待感を社会に伝えていきたい、と意気込みます。福岡・名古屋・札幌などでも開催し、さらには故郷の広島にも広げていきたい、と笑顔の塗野さん。次回の『エシカルエキスポ』は、ちょうど大阪万博の会期中に開催予定。万博とも連携できたらもっと面白い、と語って下さいました!

若者目線で、若者の心を動かす熱い想いと発信力、様々な企業人との出会いや経験を重ね、全体を冷静に見渡す力を兼ね備える塗野さん。両面を生かす塗野さんの今後の活躍にも期待が高まります!

株式会社ラントレ 代表取締役 / 一般社団法人ETHICAL EXPO JAPAN 代表理事
母子家庭で施設育ちのバックグラウンドから、社会的に立場の弱い人達に社会全体として目を向ける優しい世界を創ることが、自分の使命 であると考え始める。そのために大学入学時に、 学生起業をすることを決意。
18歳で、明治乳業の営業代理店で飛び込み営業の後、 新卒人材会社で営業として活動。 2020年3月にカンボジアでの商品開発を経て、フェアトレード商品のプロモーション支援を行う。エシカルなマインドセットを広め、社会にいい会社をもっと世に広めるべく、株式会社ラントレを設立。
その後消費者にも直接エシカルの価値観、取り組みを啓蒙できる環境を整えるため、一般社団法人ETHICAL EXPO JAPANを設立、エシカルエキスポの開催。
2024年度は大阪東京開催の2拠点開催を行い、大阪、グランフロントにて1万人、東京、渋谷ストリームにて3000人の来場者数を記録した。
株式会社Lentree
一般社団法人ETHICAL EXPO JAPAN