2022年1月30日のハイパー縁側@塩屋は、橋本健史さんをゲストにお迎えしました。
テーマは、「建築を通して塩屋で考えていること」。
リノベーション真っ最中の橋本さんの自宅兼事務所で開催しました!

神戸市西区出身で小さい頃は神戸の西部を生活圏としていましたが小学校の時に引っ越しをしたため、神戸のことはあまり知らなかったと言う橋本さん。
その後は神戸から離れ、明石の高校、横浜の大学で建築を学び、卒業後は浜松に活動の場を移します。浜松では、学生時代の活動の延長で勝手にシャッター商店街の研究をしたり、空き店舗でインスタレーションを実施したりしていました。

すると、オーナーから「ここ困っているから手伝って欲しい。」という話が来るようになります。そこでの事例をいくつかご紹介いただきました。
最初に紹介いただいたのは美容師さんが住むマンションのリノベーション案件。和室にベッドを置きたいのでフローリングを変えたいという要望に対して、天井をはがした際に出てきた下地を敷き詰める、という提案。木目の模様や大きさの違いが良い風合いを出していました。
「そこにある材料を動かすだけで建築のコンセプトになるのではないか。」と思うきっかけになった案件です。

その後は、出てきた床材をカウンターテーブルにしたり、壁にしたり。廃パレットを張り合わせた集成材で小屋を作ったり。時には駐車場の空きスペースという未活用空間を工房として活用もしていました。

“今あるものを活かして活用する”

「使える量が決まっている中で何ができるかを考え、普通の建築ではない発想で作品を作っていきます。」と橋本さん。

塩屋に来るきっかけはコロナ禍になってから。東京と浜松の二拠点生活をする中で東京にいる生活が多くなり、東京にいる必要があるのかと思い始めます。
浜松での仕事で手ごたえはあった一方で、もうちょっと大きな街で仕事がしたい。大きすぎず100万人前後の都市で、と考えた時に思い浮かんだのが神戸でした。

神戸のどのエリアに住もうかと考えた際に浮かんできた候補に塩屋があり、森本アリさんの本を開きます。本には繋がりのある建築家との対談もあり「塩屋いいなぁ」と思い始め、早速、森本アリさんに物件の相談をします。(これは塩屋ではお決まりパターンのようです。)
「間取り、設備は変えられるのでどうでも良い。重視したのはロケーション。どういう風景が見えるか。」の視点で現在の家を決めました。

塩屋でもそこにあるものを利用しながらリノベーションの仕事をしようと思いましたが、「みんな自分でDIYをしていて需要がない。」との事。
現在、塩屋では近くの市営住宅跡地の草刈り活動に関わっています。参加している方々が多様で、みなさんが自由意志で協賛労働をしているそう。地域の人が関わる事ができる場があり、そこに様々な人が集まってくる。そんな場所がある事に橋本さんは感動しています。

最後に、今後の活動については「古くて活用されなくなった建物を誰も触れないものとして置いておくのではなく、どうやって活用するかに重心を置いた発想で自分の力を活かしていきたい。」と締めくくられました。
塩屋の風景を眺めながら、完成した事務所で打合せをする光景が今から目に浮かびます。自宅兼事務所の完成が楽しみですね!

【橋本 健史】
橋本健史建築設計事務所 代表 / 403architecture [dajiba] 共同主宰
1984年神戸生まれ。
2021年より東京から神戸に拠点を移して活動している。
都市と密接に連関した浜松での一連のプロジェクトのほか、場所の可能性を建築的思考で浮かび上がらせるプロジェクトを国内外で手がけている。
現在、神戸芸術工科大学、関西学院大学、大阪市立大学、名城大学、桑沢デザイン研究所非常勤講師。
403architecture [dajiba]