3月4日のハイパー縁側@天満橋は、宮野順子さんをゲストにお迎えしました!
テーマは「都住創がおしえてくれた、まちに住むということ」
宮野さんは設計事務所で働いた後、現在は大学教員をしながらコーポラティブ住宅やまち・住まいに関わる研究をされています。

まずは、コーポラティブ住宅について教えていただきました。通常のマンションは、デペロッパーが土地を買い、建物を建てて住む人を募集します。コーポラティブ住宅はコーディネーターが住みたい人を集め、そこで組合を組成して土地を買い、自分たちで建物を発注するという流れ。

建物を建てる前に1年以上も住人たちで話し合うので、住み始める時には既にコミュニティは出来上がっている、と宮野さんは話します。「副次的だけど、それが良さの一つ。」ただ、手間がすごくかかるということは事実であり、広く普及するに至らないのが現状だと宮野さんは考えます。

宮野さんは阪神大震災が起きた年に大学入試を受け、神戸の大学へ進学。神戸のまちが復興するプロセスを、間近に見ながら学生生活を送ります。
建築を学んでいた宮野さんは、震災復興住宅の調査訪問を行っていました。その時、玄関のドアを開け放ち、独りでテレビを見ている高齢者の姿を多く目にします。アンケートをお願いすると、みんな嬉しそうにたくさん話をしてくれたと言います。

震災が起きる前は、ご近所さんを身近に感じる長屋に住んでいた方がたくさんいました。しかし、突然、鉄の扉1枚で閉ざされるマンション暮らしになり、今までのコミュニティを無くし、人と繋がるきっかけを掴めない人々の様子を目の当たりにしました。
“寂しいなら、みんなで住めたらいいのに…”と、素直に感じた宮野さん。この経験が、シェアやコミュニティのある住まいを研究するきっかけになったと話します。

そして現在、宮野さんがお住まいなのがコーポラティブ住宅の「都住創」。
学生の頃からコーポラティブ住宅の事は知っていたという宮野さんは、設計事務所を運営する旦那様と事務所兼住宅を探していたところ天満橋の「都住創」にたどり着き、リノベーションをして暮らしています。

入居した翌年から「面白そう!」と、管理組合の理事長を買って出た宮野さん。自ら住み、理事長も務めながら住まいの研究を進めてきました。谷町・大江地区界隈に20棟ほどあるという他の「都住創」にも、研究と称して訪ね歩いています、と笑います。

「都住創」の始まりは今から44年ほど前。その頃は都心に住むというより、郊外に住むことが主流になり始めていました。その中で「都住創」を企画・設計をした中筋さんと安原さんは、まちの中心部にいながら戸建てのような自由設計で快適な空間づくりを目指した、と言います。
中筋さんは「都住創」を、“縦の長屋”と表現されたそう。現在、「都住創」の住民の皆様もそう認識しています。

今見ても、機能的でおしゃれなデザイン。お金のかけどころが「さすがだな」と思う物の選択がされていると、宮野さんは話します。間取りについても、個室が重要視されていた頃にリビングに人が集まりやすい設計になっていたり、様々な部分に先見の目を感じると言います。

また、特徴的なのがかっこいい外観。今回は外観の写真や住人の皆様のインタビュー動画も用意して下さいました。どの「都住創」も独特で、間取りも全て違います。地下室がついているメゾネットタイプのお部屋や、料理教室を開きたい方の為の広々としたキッチン付きのお部屋など、本当に個性豊かです。
「お住まいの方の雰囲気と家の雰囲気がマッチしていて、味が出てくるのも楽しい」と宮野さんは話します。

“住まいを引き継ぐ”

「都住創」では住人が入れ替わる際に次の世代へうまく引き継がれていくのも魅力、と宮野さんは言います。それぞれの「都住創」に長老格の方がいて、設計士の考えや理念・管理についての事などを新しい住人にしっかりと伝えていくそう。

第一世代と呼ばれる、最初から「都住創」に関わっている住人の方にもお話をききました。子育て期は子供を通した交流が盛んで、お互いに家を行き来することも多かったと話します。屋上でプールをしたり、天神祭の花火を見たという思い出も。

通常のマンションよりも自主管理している部分が多い「都住創」。住人が管理に関わることで、さらに住まいに“愛着”が増していくと話します。しかし、住人の高齢化に伴い自主管理を続けていく事に不安もあるそう。
そこは、コミュニティに親和性の高い住人が新しく入居する事で、解決の方向に向ったという事例もある、と宮野さん。

また、部分的に管理を委託するなどの工夫もしています。バランスを取りながら、心を入れる人がちゃんと住んでいるということがマンションの管理にとって大事だ、と宮野さんは考えます。
現在は途絶えてしまっている「都住創」同士の連合会。その繋がりを復活させ、コミュニケーションを取りながら、「都住創」の持つ課題や改善点を話し合い、解決していくことも必要という話も出ました。

世の中の流れとして、人が関わらなくても廻るマンションの仕組み作りが広がっています。一方で、「都住創」は“人が手間をかけて廻っていく仕組み”であり、世間とは反対の方向性にあると言えます。しかし、そこには「阿吽の呼吸」があり、ある意味で効率的だと宮野さんは考えています。

“住みごたえのある住まい”を楽しんで100年を目指したい!と、宮野さん。
設計士や歴代の住居者の思い・愛着を受け継いでいく「都住創」。住人の方が生き生きと暮らし、よりよい住まいをみんなで紡いでいく様子が印象的でした!

【宮野 順子】
武庫川女子大学 建築学部建築学科 准教授 / 一級建築士 / 博士(工学) / 都住創在住
1977年大阪市生。震災直後の神戸の大学で建築を学ぶ。
アルバイトの調査で訪問した震災復興住宅で玄関扉を開け放し、ひとりテレビを見る高齢者の姿に疑問をもったことがきっかけで、高齢者の共同居住(グループリビング、シェアハウス)の研究に取り組む。
遠藤剛生建築設計事務所勤務を経て、博士号取得。共同性のある住宅が専門分野。
2013年に、家族が増えたことがきっかけで、コーポラティブハウジング都住創をリノベーションし居住する。
転居後すぐ管理組合の理事長を経験し、2015年から他の都住創も含めた研究を行なっている。
武庫川女子大学 建築学部