2024年10月5日のハイパー縁側@私市は、星野貴則さんをゲストにお迎えしました!
テーマは 「地元から地球を守ろう〜地元・農業・HIP HOP〜」
2023年9月から、京阪私市駅前で不定期に開催されている「キサイチゲート」。2024年10月、11月、12月の3回は、私市駅前だけでなく、隣駅の河内森駅から徒歩2分、JR河内磐船駅前にて「駅前酒場&駅前DJライブ」を同時開催。また、今回は「交野市地酒等による乾杯を推進する条例」が制定された事を祝い、交野市長や酒蔵関係者の方々が集まり、お揃いの黒い法被を羽織り、乾杯セレモニーが行われました。

京阪の社員の方が醸造に参加した『KISAICHI BEER』と、JR西日本の社員の方が参加した『IWAFUNE BEER』が初お目見えし、盛大に乾杯しました!河内磐船駅の改札前には、DJブースが設置され、改札横には、人工芝が敷かれています。音楽に身体を揺らす人や、自由に遊び回る子どもたち。立ち飲みカウンターでは、クラフトビールや日本酒、タコスなどを食べながら、音楽を楽しむ人々で賑わい、いつもの駅前とは違う景色が広がっています。

「地元の駅前で、音を鳴らせるなんて最高です!」と、笑顔の星野さんはラッパーであり、交野市神宮寺の『星野葡萄農園』の3代目園主。葡萄を作り続けて20年になりますが、最初から家業の葡萄農園を継ぐつもりはなかった、と言います。10代の頃、ロックバンドを組み、ベースを担当していた星野さんは、大学在学中に突如ヒップホップのカルチャーにどハマり。

「地元の奴らと、地元を世界にアピールする」というヒップホップ文化に心打たれ「俺、ベースやめるわ」と、すぐさまバンドを脱退。ラッパーになる事を決意します。今のようにインターネットが普及していないので、クラブに通い詰め、ヒップホップ音楽に直に触れる日々を過ごしました。大学卒業後は、ヒップホップの本場アメリカへの渡航を夢みましたが、お金が足りず断念し、オーストラリアでのワーキングホリデーへ。

1年間、ペンキ屋で働きながら、オーストラリアで過ごした後、そのままタイへ赴くと1人旅の楽しさに気づき、アジアを周遊。25才の頃に日本へ帰国しました。帰国してまもなく「次は、インドに行こうかな」と考えていた矢先、お母様の病気が発覚。星野さんが『星野葡萄農園』を支えていたお母様の介護を担う事になりました。

介護生活は長くはなく、お母様は亡くなる時に「誰か、葡萄園をしてほしい」という言葉を残します。星野さんはその想いを受け取り、「トライはしてみよう」と、農業に携わる事に。

小さい頃から畑に慣れ親しんでいたので、抵抗はないものの、始めてみると農業の奥深さを目の当たりにします。愛情と手をかけないと、作物は育たない。雑草との戦いが終わる事はないし、単純作業も多く、退屈に感じていたと打ち明けます。しかし、毎日畑で土に触れ、空を見ているうちに「ほんまに気持ちいい!」「畑ヤバい!面白い!」という感覚を抱くようになった星野さん。

葉っぱにしても、実にしても、色も形も同じものがない。「むっちゃオリジナルやん!」と、ときめきを覚え、自分たちのカルチャーの中で、オリジナルを磨いていくヒップホップと一緒だという事に気づきます。今では、葡萄の収穫期になると交野育ちの地元のヒップホップの仲間たちが集まり、畑作業を手伝ってくれ、みんなで収穫・出荷を行っています。

ヒップホップは、アメリカのブロンクス地区にルーツがあり、暴力や銃ではなく、ダンスやラップで優劣を争うとしたものが始まり。地元の仲間と共にシビックプライドを持ち、まちを発信し、自分を表現していく文化だと星野さんは説明します。その方法は、DJ・ラップ・ダンス・スプレーアートなど。地元のスターが地域のスターになり、世界のスターへと駆け上がっていく。

アメリカでスターになったラッパーは、学校を建設したり、子ども食堂を開いたり、まちに還元する人もいるのだそう。農業とヒップホップがイコールであるように、まちづくりとヒップホップもセットだ、と星野さんは捉えています。

そんな星野さんは、2022年に河内磐船駅前でカレー&タコスの店『lulico(ルリコ)』をオープン。京阪河内森駅とJR河内磐船駅の両駅から近く、人通りの多い立地を選んだのは、神宮寺の葡萄をアピールしたいから。神宮寺葡萄はブランドにはなっているものの、認知度はまだまだ低い。もっと知ってもらうきっかけにしたい、と考えました。収穫期には店頭で葡萄を販売したり、メニューに葡萄ジュースを用意しています。

カレーとタコスは、星野さんの大好物だそうで「自分の好きなもの、全部詰め込みました!」と、右手にはタコス・左手にはカレーを持つ、葡萄のマスコットキャラクターが印象的です。店内にはターンテーブルもあり、「あとは、スタジオが揃えば最高!」と笑います。

オープン以降『lulico』は様々な人が訪れ、集う場となっています。葡萄を購入したり、食事を楽しむ事はもちろん、交野在住の若手DJを育成する場にも。また、交野市出身で、ワールドチャンピオンのダンサー・keicrazyさんに会いに来るダンサーの方もたくさんいるのだとか。

星野さんは、そんな風に「交野に足を運ぶ理由を作っていきたい」「わざわざ来てもらえる場所にしたい」と、考えています。交野には、面白い人がいる。葡萄・クラフトビール・日本酒など、面白い人たちが作った美味しい物がある。そして、豊かな自然がある。『lulico』は、交野のまちの魅力を発信する基地になっています。

“それぞれが得意分野を追及したら、まちはもっと面白くなる”

「自分の好きな事を追求したら、こうなった」と笑顔で話す星野さん。みんな得意分野がある。“それぞれが得意分野を追求したら、もっともっとまちが面白くなる”と、提案します。「ほんまに好きな事をやりましょう!思い切り!」一歩を踏み出したら、いくしかなくなる。一歩を踏み出し「生きるのは、おもろい」って思う人が集まれば、地球は続いていくのではないか、と力強く語ります。

星野さんが地球規模で考えるようになったのは、農業を始めてから。自然と向き合い食物を作る事で、環境の変化の深刻さや収穫の喜びなどを肌で感じるように。地球を壊すのも守るのも人間。戦争なんてしている場合じゃない。すぐに環境を改善したり、国を動かしたりする事は難しいかもしれないけれど、地球の事を考え、平和を心から願う地元の仲間たちとできる事をしたい、という気持ちが農業を通じて芽生えてきた、と語ります。

現在、星野さんが挑戦しているのが新しい品種の葡萄の開発。葡萄の品種は、1万種類以上あり、8割がワイン用、2割が食べる用だそう。近年は、皮ごと食べられて、種がない品種が人気なので、まず種を採取していく事が難しい、と言います。すでに挑戦を始めて数年。新しい品種ができた暁には、『HOPPY』(星野さんのラッパー名)と名づけ、世界に生きた証を残し、「葡萄ブロックパーティー」を開く予定だ、と意気込みます。

来月の「キサイチゲート」では、河内磐船駅前でダンスレッスンやDJ体験、再来月は、アコースティックライブを計画中。地域の子どもたちが、ダンスやDJに興味を持ってくれたり、ギターの音色にハートをぶち抜かれてほしい、と願います。そして、1年後には河内磐船駅のロータリーでフェスを開催する風景を描いています。

交野のアーティストに出演してもらい、地元の方々に出店してもらう。自分1人ではできないけど、声に出し発信する事で共感する仲間が集まったら実現できるのではないか、と考えています。改札を出て、すぐフェスをしている風景なんて見た事ない。「交野って面白いやん!」と、盛り上がるはず。「そんな風景を作れたら、涙しちゃうかも」と、笑顔で語ります。

小学生の頃、地元の友達と日が暮れても遊んでいた日々。その延長線上で、ヒップホップにハマり、交野のまちを誇りに思い、愛着が溢れ、仲間たちと表現するようになった。そして、星野さんが葡萄作りを始めると、自然と仲間が力を添えてくれるように。そんな、どこまでも自然体でフレキシブルな星野さんの生き方が印象的でした!

握り慣れたマイクで、「最高!」「最強!」「むっちゃ面白い!」「トライしてみよう!」と、軽やかに言ってのける星野さんの周りには、信頼できる仲間たちが集います。河内磐船駅前を、交野のまちを、仲間と一歩ずつ変えていく。ダブルA面で、河内磐船駅と河内森駅を題材にした曲を作って下さるお約束も。
来年の秋、どんな風景が広がっているのか楽しみですね!

【星野貴則 a.k.a HOPPY】
園主
出身地 交野市神宮寺
経歴 ぶどう農家20年
星野ぶどう園
CURRY&TACOS lulico