2024年7月30日のハイパー縁側@淀屋橋は、実藤和典さんをゲストにお迎えしました!
テーマは 「ハミガキ団 “CRAZY HAMIGAKI CULTURE CLUB”」

一度、雨で延期になった実藤さんのハイパー縁側。本日も「では、始めまーす!」と言った途端に大粒の雨が降り、一旦避難する事に。「雨男の自覚が芽生えそう…」と、苦笑いの実藤さん。幸運にも数分で降り止んでくれ、元気に再スタート!

実藤さんは、『GAS STAND』からほど近い伏見町で、お父様が院長を務める歯科医院の副院長として、歯科医師をされています。そんな実藤さんの左腕は、ギブス姿。さらに、顔面にも痛々しい怪我の痕が。日常的に、電動キックボードのシェアサービスを利用している実藤さん。先日、運転中に転倒してしまったそう。左腕を骨折するほどの大怪我で、停車中の車にハンドルをぶつけてしまいましたが、こけた瞬間、まず頭に思い浮かんだのは、「前歯の治療費いくらかな」だったと打ち明けます。

日々、歯と向き合っているからこそ、治療には時間もお金もかかり、歯の大切さを誰よりも理解しています。特に前歯は、見た目にも影響するし、治療も難しい。また、折れてしまった歯は、もう生えてくる事はありません。人の歯の様子を見れば、どんな価値観を持っていて、どれくらいお金を持っていて、どのような生活を送っているのかを垣間見る事ができるのだとか。

歯科医師として働く中で、かけたり折れたりした歯の治療もありますが、圧倒的に多いのが虫歯と歯周病の治療。どちらも、色々な原因が複合して起こるものですが、細菌の塊が大きな要因です。虫歯も歯周病も、本当に怖い病気だと実藤さんはしみじみ語ります。口腔外科病院で研修をしていた頃、虫歯で死にかけている人を見た、と言います。細菌がエナメル質を破り、体内に侵入して感染症を起こしてしまうそう。

また、歯周病も骨を溶かしたり、心筋梗塞や脳梗塞に繋がる事も。こんなにも恐ろしい病気である事、治療に時間やお金をかなり費やさないといけない事を周知させたい。みんなに歯の大切さを知ってほしい、と力強く語ります。

虫歯や歯周病は、地球上で一番蔓延している病気だ、と話す実藤さん。細菌を除去するだけで、かなりのリスクを抑えられるはずなのに、全然減っていない。それは、全員が歯を持っているのに、歯のことを知らないからではないかと指摘します。歯の教育が、カリキュラム的に軽視されている事や、親が十分に理解できていないので、家庭内リテラリーの問題もある。各々が危機感を持った上で、自分の歯と、次世代の子どもたちの歯を守る事ができるような教育・環境・システムを作る事が重要だ、と実藤さんは考えています。

そんな社会を実現する為に、歯科医師として働きながら始めたのが、『ハミガキ団』の活動。きっかけは、実藤さんが研修医の頃に遡ります。近所に、誰でも「1日店長」をできるバーがあり通っていると「店長、やってみれば?」と声がかかります。実藤さんは「歯医者バー」をする事に。実藤さんがお酒を作り、お客さんの歯の悩みを聴くというもので、それが本当に楽しかった、と振り返ります。

当時、実藤さんの勤務先は、とてつもなく多忙で、患者さんと最低限のコミュニケーションしか取れてなかった状況でした。6年間、歯について勉強してきたのに、患者さん1人1人に向き合えてない事を、「歯医者バー」を通じて実感します。仕事では、伝えられない事も、ここでは喋り放題。お客さんは、お酒を飲みながら実藤さんに質問したり、相談したり。「歯医者に行ってみます!」「ありがとうございます!」と言われ、歯に触れる事も削る事もなく、「この人の将来の歯を守れたかもしれない」と、感じる事ができました。「こんなにいい仕事はない、歯医者になって良かった!」と、初めて思えたと語ります。

この体験の価値を、同じ歯科医師や歯科衛生士、色々な人に知ってもらいたい、と「歯医者バー」を続けていた実藤さん。そうしているうちに、東京でイベントをする機会に繋がりました。集まった同業者と、“歯科と社会を繋ぐアイコン”の必要性を感じ、名前をつけて活動しようと、『ハミガキ団』を結成します。

当初は、歯科医師や衛生士らプロがメインとなり、磨き方や歯のケアを教えるというスタイルでした。しかし、それでは1人1人になかなか自覚が芽生えない。現在の大変な教育現場で、すぐに歯の教育システムを整備する事は難しい。そこで、「立場が人を作る」という言葉があるように、みんなが『ハミガキ団』に入り、Tシャツを着てみる。モチベーションを上げ、みんなが歯についての知識をシェアする仕組みに飛び込めば、日本の歯科事情は変えられる、と実藤さんは考えました。

最低限の知識を集めたハンドブックを作成し、それを片手に子どもに教えるツールを用意したり、歯ブラシを作る事も計画中。『ハミガキ団』というアイコンが社会に浸透していく事で、歯について考える機会が増え、文化やインフラが整っていく。そんな社会を目指しています。

実際に、『ハミガキ団』の活動は、広がりをみせ、1年間に20ものイベントに参加しています。また、南海電鉄主催のクリエイターインレジデンスプログラム『Chokett』にも採択され、“なんばの街で歯を磨きこなす”をタイトルとして活動中。ポータブル洗面台を設置し、いつでも歯磨きができるパブリック歯磨きスペースを作ったり、歯磨きができる店舗や商業施設のトイレなどを募り、ステッカーを貼付してもらい、「歯磨きマップ」を作成します。

『ハミガキ団』がいつも行うイベントでは、スイカ味、チョコミント味など様々な味の歯磨き粉を用意し、味見コーナーを設置。シャンプーや化粧品を選ぶように、歯磨き粉の味を自分の好みで選ぶエンターテーメントと捉えています。「どこの歯磨き粉使ってるの?」と歯磨きトークが弾み、コミュニケーションが生まれる事も。

“気持ちいいからやる”

おしゃれで楽しく、自分のモチベーションもアップ。しかも、歯を磨く事で、気持ちよくなり、気分転換にもなる。虫歯や歯周病予防の為に、義務感で歯磨きをするのではなく、もっとカジュアルに、“気持ちいいからやる”。そんな文化形成をする事で、日本の公衆衛生の向上に繋がる、と語ります。

また、「自己表現の1つにしてほしい」という想いもある実藤さん。歯ブラシやミラー、Tシャツなど様々な『ハミガキ団』グッズを販売しています。本日は、ペンギンのキャラクターがインパクト大のピンク色の「歯磨き中毒Tシャツ」を着用。
これから、さらに服作りに力をいれていきたい、と意気込みます。服を着ていたら、誰でもカジュアルに『ハミガキ団』と名乗れるようなシステムを作っていきたい、と笑顔で話します。

今後、パブリック洗面台を設置する場を「スタンド」、もとからあるトイレなどの洗面台をデザインして作った場を「スペース」、歯磨きができて、さらに虫歯と戦う一式が手に入る場を「ステーション」と定義づけ、インフラをしっかり整えていきたい、と考えています。どのような場所に需要があるのか、どんな世代に刺さるのか、経済効果は生まれるのか、調査を進め、データを集めていく。エビデンスを提示する事で、会社や商業施設に歯磨きスペース設置が義務化されたり、補助金がでるような世の中を目指します。

インフラが整うと、社会の人の流れが変わる。そのインフラをベースに行動する人が増え、行動様式の変化が起こる。口の健康は、糖尿病にもアルツハイマー病にも関連があり、全身の健康に関わってきます。実藤さんは、インフラを整える事が、行動様式に変化を起こし、人々の健康に繋がる、と考えています。

ただ、インフラを整える事は、簡単ではありません。「ぜひ協力してほしい」と、真剣に訴える実藤さん。一方で、「新しいインフラ作るの、ワクワクしませんか?」と、楽しそうに爽やかな笑顔で語る姿が印象的でした!インフラを整え、日本を歯磨き先進国へ。
確実に『ハミガキ団』の活動は、世の中にうねりを起こし、人々を健康な人生へと導いていていきます!

【実藤 和典(じつふじ かずのり)】
ハミガキ団 代表 / 歯科医師(ジツフジ歯科医院 副院長)
大阪府・大阪市生まれ。岡山大学歯学部歯学科卒業。
歯科医師である父の影響で歯科医師を志すも、臨床の現場における人々の歯の健康格差を目の当たりにし、教育・文化レベルからの意識改善の必要性を感じる。
民間の歯の自衛組織をテーマにした非営利活動団体「ハミガキ団」のプロジェクトを立ち上げ、フェスやマルシェなど様々な野外イベントにて歯磨きを楽しめる「パブリック歯磨きスタンド」を設置。
地元大阪を中心に歯の健康教育のボトムアップと歯磨きのカルチャー形成を目指し、精力的に活動している。
ハミガキ団
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