2023年11月19日のハイパー縁側@淀屋橋は、國重亮さんと久留島裕也さんをゲストにお迎えしました!
テーマは 「都市(まち)と遊び心」

ハイパー縁側@淀屋橋が行われている『GAS STAND』の企画・設計・運営サポートを担当している『team raw row(チームロロ)』の國重さんと久留島さん。大阪と東京を拠点に、住宅や商業施設の建築設計からまちづくりまで、活動は多岐にわたります。

本日は、『GAS STAND』で『West CYCLE MARKET』を企画し開催中。“ヒト・モノ・コトのサイクルを創造する”をテーマに、地元の飲食店のフードやドリンク、クリエイターによるフリーマーケットやワークショップが楽しめるイベントです。「当日まで、お客さんが来てくれるかドキドキしていました」と言う2人の心配とは裏腹に、朝からファミリー層や通りすがりの外国の方・地元の方など、幅広い世代の人々で賑わいます。

数年後、この場所に大阪ガスの複合ビルが完成予定。現在、淀屋橋エリアは企業が建ち並ぶビジネス街で商業や地域の色は薄く、休日は人通りが少なくなります。現状のままビルが建つよりは、工事が始まるまでの期間を使い、実験的に何かしてみようと『GAS STAND』の企画がスタートしました。

『GAS STAND』は、大阪ガスが運営するスタンドのようなものと言う意味と、「Grow And Spread」の頭文字をとり、“賑わいや遊び心をこの場所から周りに育み広げていく”という想いが込められているそう。今の地点では、商業のまちではないけれど、このようなイベントを通じて、まち全体が盛り上がる拠点にしたいと考えています。

“ラフさ”や“遊び心”があまり感じられないエリアなので、そのようなエッセンスを加え、色々な人を巻き込みながら「こんなんやってみたい」とチャレンジできる空間を作り、次に繋げていく事を目指しています。

そんな“遊び心”が、色濃く反映されているのが、『GAS STAND』に置かれているベンチ。もともと、ここはただの空き地で喫煙者の姿がちらほら見られ、無断駐車されないように道路脇にプランターが並べられているような、どちらかと言うとネガティブな場所でした。そこを「楽しく変換できないか」と考え、そのプランターを生かし、DIYでベンチを作るワークショップを開催。

そして、新しい複合ビルに携わる様々な方がそこに胆管や木の板を加え、使いやすさと楽しさを増幅させ、居心地のよい場となりました。視点を変えた時に、「このベンチはもともとはプランターだった」という“気づき”や“驚き”を得てもらう事を意図し、既存のものを活用してこの場を構成した、と久留島さんは話します。

今回、『West CYCLE MARKET』を開催する事で、普段とはまた違う風景を作る事ができ、このエリアの可能性や期待値が高まったのではないかと感じています。
「このヒトに会いたい」「あのモノを見たい」「起こっているコトを感じたい」。ヒト・モノ・コトが集まる事で、ヒトやモノの流れやコトが起こっていくサイクルをこの場所から作っていきたい、という想いを実現できたと言います。

また、賛同してくれた参加者の皆様や来て下さった方々に楽しんでもらう事が重要で、この場に対する期待や縁を感じてもらえたら、これからもっと盛り上がっていく。人の流れが生まれるとまちが賑わう。
そして、完成する複合ビルや周囲に派生していくきっかけになるのでは、と考えています。今後、これをどう継続し、展開していくかが大切だと語ります。

“みんなで考える余白を残す”

『GAS STAND』を企画するにあたり、もともとこのような風景を作る事を思い描いていたお2人。場所の作り方としても、ベンチを全面に置くのではなく、あえて半分は何も置かず、今日のようにテントを立てる空間を残しました。“余白”を作る事で何でもできる、と久留島さんは言います。ビルが完成するまでの時間ではあるけれど、“余白”がある事で「何かできるんじゃないか」「何かやってみたい」に繋がり、色々な人を巻き込んでいく事ができる、と確信しています。

國重さんが冒頭からずっと大切そうに抱えるのは、建築事務所が作る家具のブランド『EXOS』の紹介ボード。家具に興味をもったのは、建築を勉強していた学生時代だったと振り返ります。「釘と金槌さえあればできる家具」を作るイタリアの家具デザイナーに感銘を受けたそう。
そのデザイナーの家具を初めて見た時、自分のものにせず作る事をみんなで共有する、つまり“デザインをひらく”という事を感じた國重さん。自分たちにしか作れないものや空間ではなく、“みんなで考える余地”を残す事を大切に感じるようになった、と言います。

『EXOS』では規格品の組み合わせを検討する事で、使い方の幅が広がる家具を提案しています。モノから考えて、ヒトがどう使うか、という事に可能性を感じていて、“こうあるべき”を超えられると、言います。
今、テーブルとして使っているものも、ベンチとしても使えるし、さらに高さを変えると、また違う用途がある。家具も空間も“こうあるべき”ではない事を大事にし、“みんなで考える余地”を残しています。

『team raw row』が3人で活動しているのも、人の意見を聴きながらものを作っていく事を大切にしたいから。“チームでいる事がまず前提”と語ります。もともと、メンバーの2人の名字に「ロ」という字が入っている事から『チームロロ』と名付け、そこから 「raw(生)」「row(漕ぐ)」と言う英語をあてました。
「生」は決めつけるのではなく、グチャグチャな状態という事を表し、みんなでどんな可能性があるのかを探り続け、漕いでいこうという想いがこもっています。

そんな、『team raw row』の標語は、“当たり前に捉われない”。「この場所ならこの建物」「この場所ならこの用途」ではなく、場の理解を深めて「こんな建物の在り方もあるのでは」と、提案する事を意識しています。
プロジェクトを進める時、会話の中で引き出しや可能性を広げられるような関係性作りを目指している、と久留島さんは語ります。空間・建物を作るまでのコンセプトや、どんな建物をどんな想いをもって作るかという企画段階からクライアントに寄り添い、運用や運営までをサポートする体制を一貫して行っています。

ただ、“当たり前に捉われない”を貫く事は大変な事も多いそう。「毎回、まずは無茶な提案してるかも」と笑う國重さん。『team raw row』的には、ど正直に真面目に提案するも「新しすぎて」「やった事がない」と、実現が難しい事も。
だから、提案した事が実際に事業性を含め成立するのか、まず自分たちでやってみる。そして、経験を経て提案する事で相手に現実味をもってもらえるように、工夫しながら取り組んでいます。

今後、このようなイベントを定着させ、この場をどのように使うのかを引き続き考えていきたい、と久留島さん。國重さんも、この先にどんなコトが起きるのか、起こせるのか、仲間と議論しながら挑戦を続けたい、と語ります。
今回のイベントは、休日の昼間の開催でしたが、平日の夜にシーンを変えて行う事を思案中。また、来場者から「音」があったらもっと居心地いいかも、という意見も。季節ごとにイベントをしても面白い、とアイデアはつきません。

最後に、スポット的にイベントをする事と、日常的に地域とのコミュニティを形成する事。そのバランスを大切にして持続する事で、“この場所らしさ”を見出していきたいと語って下さいました!
口調は優しくゆるい物腰の國重さんと久留島さんですが、“当たり前に捉われない” “こうあるべきと決めつけない”という強い信念を共有されているからこそ、『team raw row』ならではの“遊び心”が生まれ、これからもまちに豊かさをもたらしていきます!

【國重 亮(RYO KUNISHIGE)】
team raw row inc. / 建築家 / 大阪工業技術専門学校 非常勤講師
國重亮と久留島裕也の共同設立による建築設計事務所。大阪・東京を拠点に住宅や商業施設の建築設計をはじめ、美容室などの内装設計、会場構成、家具デザイン、まちづくりなど、幅広い分野のプロジェクトに取組む。また、GAS STANDの企画/設計/運営サポートを担い、WeST CYCLE MARKETの企画/運営サポートを担当。
team raw row inc.
Ryo Kunishige

【久留島裕也(YUYA KURUSHIMA)】
team raw row inc. / クリエイティブディレクター
國重亮と久留島裕也の共同設立による建築設計事務所。大阪・東京を拠点に住宅や商業施設の建築設計をはじめ、美容室などの内装設計、会場構成、家具デザイン、まちづくりなど、幅広い分野のプロジェクトに取組む。また、GAS STANDの企画/設計/運営サポートを担い、WeST CYCLE MARKETの企画/運営サポートを担当。
team raw row inc.
Yuya Kurushima