2023年11月15日のハイパー縁側@淀屋橋は、川島正嵩さんと森川潤さんをゲストにお迎えしました!
テーマは 「みんまちプロジェクト“みんなで育てるウェルビーイングなまち”」

本日のゲストの川島さんと森川さんは、学生時代に建築や都市計画を専攻し、「ゼネコンという立場から、まちづくりに関わりたい」と、大林組に入社。川島さんは2012年から東京の都市開発部門、森川さんは2017年から大阪の都市開発部門でキャリアをスタート。
2022年にスマートシティ推進室が新設されると、色々な部署からメンバーが招集され、川島さんもメンバーに選出。東京から大阪へ異動となりました。森川さんは、都市開発部門とスマートシティ推進室の兼務という形で、新規事業の開発に取り組んでいます。

建設会社は、建物を建てるまでが主な事業領域ですが、そこで終わるのではなく、建物ができた後のまちづくりに関与していくという事が新規事業の中身、と森川さんは説明します。エンドユーザーの方と接点となるサービス作りを行い、そこで集めたデータを活用し、副次的な事業を作っていく事を目指しています。

とは言っても最初は、「何からやろうか…」と悩み考えたそう。悩んだ末に着手したのは、淀屋橋・中之島エリアのオフィスワーカーの課題解決に繋がるサービス作り。平日の朝、オフィスに出社し働いて、夕方退社する。そんな日々を過ごすオフィスワーカーには、どんな課題やニーズがあるのか、インタビューをしてデータを収集。

ランチひとつとっても、どこでどんな昼食をとるのか、靱公園などで毎日インタビューしていたそう。また、企業の人事の方やデベロッパーの方、飲食店の方など、様々な職種の方に対しても行い、半年かけて、のべ200人ほどの声を集めました。ひたすらインタビューと企画を繰り返していた、と振り返ります。

そこで得られた結果は、「働いて帰るだけのまちになっていて、つまらない」と言う事。そんなつまらないまちから、出社しても楽しいまちにするにはどうしたらいいのか。ちょうどコロナ禍だったという事も重なり、社内のコミュニケーションが途絶え、そこを改善したいという声も。“コミュニケーションを強めるきっかけ作り”を提案し、“出社して楽しいまちにする”という大きな方針が見えてきました。

そんなスマートシティ推進室の動向を他部署の方は、「急に何を始めたんだ」という目で見ていた、と冗談混じりに話します。建設会社のスマートシティときくと、インフラ設備や情報システムをイメージするけれど、全く違うアプローチで進めるスマートシティ推進室のメンバー。オリジナリティがある分、どこに向かうのかが難しい。「ハードを作る会社が、どのようにソフトからまちのニーズを拾い上げるのか」を楽しみに見守っているそう。
川島さんも、どこに着陸するのか定かでないまま突き進んでいる、と自覚しています。まちの声を直接聞いて、試して失敗して改善して…という事を繰り返しながら奮闘中です。

そして、実際に取り組んでいるのが、集めたデータを活用し、オフィスビルの遊休スペースを有効利用するサービス。ビルによっては、貸し会議室など、稼働率が3割程度の事も。そんな場所の使い方を、ウェブ上にサービスコンテンツを並べ、オフィスの利用者自身に投票してもらいます。票が集まると、ヨガのインストラクターや、お弁当を提供する飲食店を呼ぶというサービスを行いました。

オフィスワーカー自身が、オフィスでやりたい事ができると、モチベーションが上がり、自発的に出社したくなるオフィスになっていくのでは、と考えています。また、サービス提供者側にもメリットがあり、知名度が上がり、サービスを受けたオフィスワーカーが実店舗を訪れる事にも繋がります。川島さんは、ビルオーナー、企業、店の方々と協力しながら進める事は難しくもあり、楽しくやりがいを感じています。
そして、“働いているまちが楽しい”という感覚を持ち、まちに“愛着”が湧いてくる事で、ビルオーナー、企業、働く人、飲食店、自分たちも含め、全ての人が嬉しいという状況を目指している、と語ります。

ただ、準備段階はとても苦労したそう。まずは、オフィスワーカーが満足するサービスコンテンツを集め、マッチングが起こるか検証しなくてはいけません。そこから、まちの飲食店などのサービス提供者に、個別に交渉して調整していく作業が一番汗をかいた、と森川さんは言います。しかし、大変だった反面、森川さん自身もオフィスワーカーで、どのようなサービスが欲しいのかを考える事は楽しく、今後も遊び心を持って取り組みたい、と笑顔で語ります。

そして、現在4回目の実証実験を行っている真っ最中。去年1回目をスタートした頃は、自社のビルのみでしたが、回を重ねるにつれ、規模やエリア、期間を拡大しながら進めています。イベント形式ではなく、継続的に運用できる形にしていきたい、と考えています。

また、今まではオフィスにサービスを誘致する形でしたが、室内で行っても魅力を感じないサービスもいくつかあります。例えば、『中津ブルワリー』と連携した「飲み比べ講座」。室内よりも、ブルワリーの場の雰囲気を味わいながらビールを飲んだ方が楽しいし盛り上がる。そこで、相乗りタクシー『シェアライド』の企画が立ち上がりました。

今月末開催の『サンタバル』と連携したり、『イケフェス』会場を行き来する相乗りシャトルなど、様々な場所で運用中です。ただ、タクシーの相乗りに不安を抱える方もいる事や、予約が必要なので、その場のノリで利用できないと言う課題も。今後、どのように進めていくのか、仕組みも含め、軌道修正しながら挑戦を続けています。

“みんなで育てるウェルビーイングなまち”

スマートシティ推進室ができ、手段に対して目的に何を据えるかを熟考したメンバー。生活者の健康や、まちをより楽しく過ごせるものにしたいと言う想いを込め、“ウエルビーイング”をスローガンに掲げることにしました。目指しているところは、“みんなで育てるウェルビーイングなまち”。ゼネコンがまちづくりを行うのではなく、まちで働く人、生活する人、みんなの想いを繋げ、新しいサービスを作りながら、みんなでまちを育てていくというイメージです。しかし、生活者1人1人の価値観は違うし、捉え方もまちまち。その人に最適なウェルビーイングなサービスを届ける為に、ニーズをつぶさに拾い、提供していく事をビジョンとしています。

また、ICTを全面に出すのではなく、あくまで下支えするツールとして、ユーザーが積極的にまちに関わるきっかけを作る事が、今後、スマートシティに繋がるのではないか、と森川さんは考えています。川島さんも、スマートにする部分というのは、働いている人、生活する人の声を集めたり束ねたり、データでできる事。つまり、“みんなで育てていくまち”を実現する手段として、データを駆使する必要がある、と話します。

会社として新しい取り組みをする際に、本業に返す事は必然的に意識する事。まちを魅力的にし、賃料水準を上げる事で、建設や建て替えの需要が増えていく事に繋がる、と考えています。ただ、新規事業を波に乗せるには、時間はかかります。まずは、“楽しめるまちづくり”を全力で進めたい、と意気込みます。

『GAS STAND』を企画する白木さんからは、共感する部分が多いとう感想も。『中津ブルワリー』醸造長の鈴木さんからは、淀屋橋ならではの人の属性を生かしている面白い取り組み。土日過疎化する場所の価値を上げる事にもっていくのもいいのかも、という意見もでました。

今回、まったくもって新しい事に挑戦していて、「失敗から学ぶ事が多い」と、川島さんは言います。しかし、会社に閉じこもって行うのではなく、まちの様々な方と関わりながら事業に取り組める事が楽しいと感じています。森川さんも、アイデアを自由に提案し、進めていける環境がありがたい、と語ります。

試行錯誤しながら、前に進むお2人。苦労が多い中でも「楽しい!」と爽やかに語る姿が印象的でした!1人でできる事は何もない。仲間を集め、データを下支えにしながら、たくさんの人に使ってもらえるような、“テックとリアルの交わる場”を、今後も盛り上げていきたいと語って下さいました!

【川島 正嵩】
株式会社大林組 営業総本部 スマートシティ推進室 事業開発部 副課長
2012年大林組入社、建設現場・設計を経験後、都市開発部門に配属。
建替提案、再開発事業、テナントリーシング、不動産売買と一連の開発業務を担当。
2022年より、新規事業として立ち上がったスマートシティ推進室にて奮闘中。

【森川 潤】
株式会社大林組 営業総本部 スマートシティ推進室 事業開発部 主任
2017年大林組入社、建設現場・設計を経験後、都市開発部門に配属され、「グラングリーン大阪」うめきた2期地区開発事業を担当。
2022年から新設されたスマートシティ推進室を兼務し、新規サービスの開発を実施中。

株式会社大林組
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