2023年10月25日のハイパー縁側は、荒川公良さん・西田吉宏さん・小島和人さんのお三方をゲストにお迎えしました!
テーマは「中津・西田ビルから、これからの未来を語ろう。」
荒川さんは10月28日に、中津の西田ビルにショールームのオープンを控える株式会社TOOLBOXの代表です。
この日は関係者向けの内覧が行われました!
2022年の夏頃から物件を探し始めたという荒川さん。というのも、5-6年程前から大阪にも出店して欲しい、というお客さんの声がとても多かったそう。
大阪で物件を探す中で、荒川さんは場所も当然ですが、人が大事になるなと考えていました。ただ、大阪の事が分からず土地勘もないので、まず2日間かけて自転車に乗っていろんな物件を見て回ったそう。
中津の西田ビルやハイパー縁側の事は、ネットで大阪の動きを少し調べていて知ったそうですが、誰がやっているかなどは全く知らなかったと話します。
自転車に乗って回っている時はその事も忘れていたそうですが、ちょうど中津を回っている時に西田ビルのタイルがちらっと見えて、その瞬間に「あのビルが気になる!」と感じて覗き込みにいきました。
西田ビルの事はとても気になりましたが、その時は空室募集していないと言われました。それでもビル側の誰かにつながりたいと動いていると、ご縁がつながっていき、見学をしたり話をしていくうちに、ここ西田ビルにショールームを構えることになりました!
ここにした理由として、中津の街がどうかの前に、西田ビルの存在がありました。ビルの外観が好きだったし、ここを使ってなにかをしている人達がいる。ここに乗ったら面白そう!と感じたそう。それが中津だったと荒川さんは話します。
そんな西田ビルは、4年前に西田さんたちが「地域にひらく」というコンセプトでコワーキングスペースを開き、ハイパー縁側や中津ブルワリーもできました。オーナーの想いが根底にある場です。
築58年になるこのビルは、もともと建て替えの話も出ていました。それでも、コワーキングができて地域の人が入ってくるようになると、この建物自体に価値を感じてくれたり、関心をもってくれている人がいる事が分かってきました。そういう人達の話を聞いていると西田さんの考えも変わってきたといいます。そしてついに、役員会で「建て替えをやめる!」と話すまでに至りました。
どうしてその判断に至ったのかというと、基本的に面白そうだったからだと西田さんは話します。地域にひらく、人が集まる場所をつくるという考えにしてもそう。「おもしろい」という判断が自分の中にはひとつあると話します。
ひと昔前は、採算性・経済ベースの考え方がメインになっていました。それも大切ですが、その根底にあるのは人が興味を持つか、おもしろさがあるかどうか。わくわく、おもしろいは大切だと話します。「そういう判断ができるオーナーさんは普通いないですよね」と荒川さん。
小島さんは普段から、新しい事業づくり・組織づくり・エリアづくり等の仕事をしていますが、さまざまなプロジェクトを見る中で、最終的に成功したなと感じるプロジェクトには、「なんか面白いから、やった」という要素が含まれている事が高いと感じています。
確からしさを得ながら真面目にやりました、というものは「失敗はしていないけど、本当に成功か?」と思えるものも多いと感じています。
西田さんが5年後に思い描く風景は、「地域のハブでありたい」と考えています。地域への責任をもって、「建物のオーナー発信でやるまちづくりには、こういうものもあるんだ!」という事を示せて、その事例がいろんな所で出てきて、そのモデルケースになっていたら嬉しいと話します。
中津でも実際起きている事として、オーナーが建物を手放してしまい、おもしろくもないマンションが建って、おもしろくもない街になっていく可能性があります。それに歯止めをかけるようなきっかけになりたい、と西田さんは考えています。
荒川さんは、西田さんの今のお話がめちゃめちゃ希望になってくれていると話します。「おもしろい」が防波堤になって、全国各地の開発に見られる「よくある風景」になっていくのを止めてくれていて、その止める裏側で面白い事が起きています。
この状態はつくってはいない、なにかできている状態だと小島さんも話します。思い描いた通りになっているかというと、きっとそうではないが、自然と変化していっているかたち。それが大事だなと考えます。
“工作的な形”
荒川さんは、「時代の流れ的に、これからは計画的ではなく工作的になるのではないか」と話します。計画を立てる事を20世紀はやってきたけど、結局そうなっていないし、すればするほど人がいなくなっていく。ちょっと作ってみて、人のリアクションをみてまた作っていく。そんな工作的な形になるのではないかと話します。
小島さんがFabCafeでやっているのも、つくる+(プラス)発表する・誰かに提供する、ということ。クリエイター・アーティストに限らず誰もが発信をしていったら、豊かな暮らしにつながっていくのではないかと考えています。
TOOLBOXさんのショールームも、ビルのリノベーションに伴い1年後には移動してもらう可能性がある、特殊な条件付きで入居しています。なので、ショールームの施工も作り込まず外せるようにしていて、移動するとなればすぐに動かせる状態でつくっています。
改装の際の、壁の剥がし跡もそのままになっていますが、その不規則さが逆におもしろさになっていたり、そこに絵をかけてみたり。工作的にやってみることが、新しい発想のものづくりにつながることもあると感じています!
ちゃんと作られたものよりも、例えばこの壁は焦って用意したのかな、などが読み取れるような仕上がりの方が人間を感じられて、見ていて楽しい。そういうものの積み重ね、人間味みたいなものが中津にもあふれているのではないかと感じています。
最後におひとりずつ、来年の抱負をお話しいただきました!
西田さんは、2024年に西田ビルのリノベーションのマスタープランが作られようとしていてハードは整いつつあるので、自分たちはソフトのところ、オーナーとして西田ビルそのものを盛り上げる事を西田工業の自社努力としてもやっていく必要があるなと考えています。
荒川さんは、今週末にまずショールームがオープンするので、それがまず中津のまちの中に馴染んで、ちゃんとお客さんが来てくれて安心してもらえる状態にしたいと話します。
工作的にする、走りながら変えていくのは大変な事ですが、それを楽しむ発想で色々起きてくる事もアイデアにしていきたいと話します。「仕事でもコラボしたい!」と西田さん。
小島さんは、建設業界に西田工業さんやTOOLBOXさんがいる中で、自分たちはものづくりカフェを通じて、小さなつくることから、だれもが空間をつくっていけるような、建設の新しい形をつくっていきたいと話します。
大阪のノリで重要なポイントは、創造性とムード。小島さんたちは特別なアーティストだけではない、いろんな人達の創造性をつくっていっています。この中津にも同じものを感じます。そのムードを作っていく時に、自分が関わってきた音楽とアートという無形価値をつかっていきたい。それとものづくりをつなげて、「つくる」と「発信する」を組み合わせて新たな形をつくっていきたいとお話されました!
これからも、西田ビルを起点に工作的な実験は続いていきます。この中津で、どんなおもしろい形ができていくのか、ワクワクでいっぱいになるお話でした!
【荒川 公良(Kimiyoshi Arakawa)】
株式会社TOOLBOX 代表取締役
1979年福井県生まれ。早稲田大学大学院にて建築学を専攻。株式会社イリアにてインテリア設計を経験後、2007年より「東京R不動産」を運営する株式会社スピークに入社しリノベーションの設計を行う。2010年住み手主導の空間づくりを目指すオンラインストア「toolbox」を立ち上げ、内装建材や住宅設備の企画・販売に従事。2013年に株式会社TOOLBOX設立、2019年同社代表取締役に就任。2020年toolboxの著書「マイホーム 自分に素直に暮らしをつくる」を刊行。2021年ウェブサービスとして『グッドデザイン賞・ベスト100』を受賞。
自分らしく愛着のある空間づくり – toolbox – ツールボックス
西田工業株式会社 代表取締役社長
1975年京都府福知山市生まれ。
大学卒業後、敬愛し憧れの存在であった祖父と共に仕事するため西田工業株式会社に入社。入社後は建築・土木・舗装各現場含め事務実務経験を積み、2008年に取締役就任。2018年より6代目社長となる。
社長就任後は西田ビルを地域に開き、社内に新たな風を吹かせるための取組みを展開。
テーマは『挑戦と変革』
現状維持は衰退という考えの下、創業114年の歴史に安住することなく新しいことやワクワクすることに反応し、組織変革を進めている。
「心すなおに」西田工業株式会社
株式会社ロフトワーク プロデューサー / FabCafe Osaka(仮)準備室
アート作品を作らないアーティスト「ハモニズム(作家名)」。通称「ハモさん」 建築施工管理、デザイナー、プランナー、アーティストという経歴をたどり、多様なものから着想を得て繋げることで先入観を取り除き、変化するためのプロジェクト設計を得意とする。
デザイン経営、サーキュラーデザイン、新規事業支援など幅広くプロデュースを手掛けるが、共通して「なにか新しいことをしたい」時に駆り出されるプロデューサー。口癖は「人の欲望と向き合う」。
都市で暮らす事にこだわり、夏場は大阪市内の河川で40cmを超える黒鯛を数十匹釣り上げる。
株式会社ロフトワーク
FabCafe