2024年11月29日のハイパー縁側@中津は小清水 緑さんをゲストにお迎えしました!
テーマは 「出会えた人と“紡ぐ” 1年かけた四万十の旬でつくるシュトーレン」

高知県四万十町で、シュトーレンを中心に製造・販売する菓子店「カゴノオト」を旦那様と経営している小清水さん。寒暖の差が激しい四万十は、フルーツなどの農作物が美味しく育つ地域。その地域ならではの新鮮な農作物を12種類使い、1年の月日をかけてシュトーレンを作り上げています。

小清水さんは、神奈川県ご出身。小さい頃はいつも走り回っていて、落ち着きがないとよく言われていました。また、時間に遅れる事もとても多かったそう。大学進学を機に東京へ引越し、社会福祉を専攻。障がいを持つ人と接するうち、彼らに魅力を感じるようになり、卒業後は、障がい福祉の現場に就職しました。

興味のある仕事に就けたものの、幼少期から時間を守る事が苦手で、同じ時間に出勤する事が難しかった小清水さん。時間に余裕ができると、ゴミ出しを始めてしまったり、出勤途中にお茶を飲みに寄ってしまったり。時間管理ができず、何時に・どこに・どのように行けばいいのか、全く分からない状態だったと振り返ります。毎日、何とか間に合うように動いてみるけれど、全然うまくいかない。自分は「不完全」で、「どこか欠けている」と、感じながら過ごす日々だったと語ります。

そんな中、小清水さんは週1回、場所を借りて自分の好きなようにカフェ運営をできる機会を得ます。そこで出会ったアーティストの方が、「できない事が、良くない事ではないんじゃないか」「面白い事じゃないか」と、いう視点を教えてくれたそう。

また、お菓子を作り、お客様に提供する方が、何となく「自分らしく働けている」という感覚があったと言います。ちょうど、「スローライフ」という言葉が世の中に浸透してきた時期で、小清水さんも保存瓶に保存食を作り、ゆっくり丁寧に、豊かに暮らすという事に憧れをもっていました。

福祉の仕事をしている中で、小清水さんは発達障害について学ぶ研修を受け、ある映像を目にします。小清水さんと同じように落ち着きがなく、衝動的に刺激がある方向に向かってしまい、時間に間に合わない。「私と一緒だ!」と、衝撃を受けます。

今まで困ってきたのは、自分が「不完全」なのではない。脳の構造に原因があり、ADHDという特性なんだ、と学ぶ事で腑に落ちた小清水さん。障がいのある方に惹かれるのも、自分もできない事がたくさんあるからなんだ、と小さい頃からの謎が解けた瞬間でした。そして、「できない事は、別の方法でできるようにすればいい」という発想を持つ事ができた、と語ります。

しかし、ADHDの特徴でもある、何でも手を出してしまいがちで、落ち着きがない暮らしは続いていました。施設の仕事以外にも、夜間救急の電話を受ける仕事をしたり、資格の勉強をしたり、目まぐるしい日々。また、時間通りに出勤する事は、変わらず難しいまま。「時間に間に合わない」というプレッシャーがどんどん膨らみ、電車という閉鎖空間にいられなくなり、パニック発作も起きてしまうように。

そんな追い込まれていた小清水さんの身に、東日本大震災という大災害が降りかかります。東京も大きく揺れ、電気も止まり、まち自体が大混乱。小清水さんは「東京に住んでいられない」と、強く感じます。

“できない事もあるけれど、できる事もある。”

電気が止まっても、自分たちで火をおこせたり、水を汲んでこれたり、電車から人が溢れ出ない生活がしたい。以前から、地に足がついた丁寧な暮らしを切望していた小清水さんは、その年のうちに、四万十町の知り合いの農家の方を訪ね、旦那様と移住を決意します。“できない事もあるけれど、できる事もある”という想いで仕事をしようと、翌年の2012年、カフェを開業する事にしました。「カゴ」のように、様々な使い方ができて、そこから色々な音を響かせていきたいと願いを込め「カゴノオト」という店名にしました。

東京の生活では、誰がどこでどのように作っているのか全く分からず、スーパーで野菜や果物を購入するのが当たり前。一方、四万十では誰がどのように作ったのかを分かって買う事ができる。小清水さんは、その農家さんを想いながら素材を使わせてもらう事ができるようになった、と嬉しそうに語ります。

また、兼業農家の家庭で育った旦那様は、農業の苦労を肌で感じてきました。農家さんの背景や想いを伝えたいと、直接取材をし、動画を発信しています。お2人は、出会えた人や素材の魅力を発信したい、一緒に何かしていきたい、と考えています。

そんな小清水さんは、農家さんから直接買わせてもらった素材を、教えてもらった保存方法を実践し、大事に大事に保存瓶に保存していました。しかし、大事にし過ぎて、棚が保存瓶でいっぱいになってしまったと笑います。

そこで、アドベントの時期から少しずつ食べ、クリスマスを待ち望む、ドライフルーツを使ったドイツの焼き菓子・シュトーレンを作る事を思いつきます。小清水さん自身も、学生の頃から大好きなシュトーレン。大事に保存していた素材を使い、ストーリーも一緒に発信しながら販売すると、遠くからも買いに来るお客様もいて、すぐに完売したそう。

「こんなに喜んでもらえるんだったら」と、翌年分から数を増やして作る事に。春なら苺、3月にしか出会えない文旦など、その時期にしか収穫できない12ヶ月分の素材をラム酒に漬け込み熟成させ、シュトーレンを焼き上げます。その中には、移住のきっかけになった農家さんが作る生姜も入っているんだとか。

「カゴノオト」のシュトーレンやお菓子が皆さんの手に届くまでには、農家さん以外にも色々な方が関わっています。緩衝材として使用しているもくめんは、日本で唯一のもくんめん専門の会社。間伐材を使用したもくめんで、商品を包んでいます。また、障がいのある方の施設で、パッケージやクッキー作りをお願いしていると言います。毎年楽しみに待ってくれているお客様も、一緒に作ってもらっているような気持ちでいる小清水さん。たくさんの人が関わり、”みんなで作っている感覚”と笑顔で語ります。

「カゴノオト」は、「カゴノオトの事業を通じて、できてもできなくても認められる社会に貢献していく」「カゴノオトの関わるすべての人が豊かになり、出会えてよかったと思う事業を展開していく」という2つの理念を掲げています。小清水さんは、「様々な人がいる」という事に商品を通して知ってもらえたり、気づいてもらえたらと考えています。多様性のある人々が生きやすい、カラフルな未来を目指しています。

皆さんが過ごしている1年と、同じように時を刻んできた「カゴノオト」のシュトーレン。気軽に買える価格ではないけれど、1年間頑張った自分へのごほうびや、大事な人への贈り物にしたり、大切な人と一緒に食べてほしい、と優しく語る小清水さんの姿が印象的でした!

今年は、思っている事がようやく表現でき、人に伝えられるようになってきた。また、自身の特性が、シュトーレンや「カゴノオト」の事業につながっている事を実感しているそう。もっと伝えていきたいし、発信していく事を大切にしていきたい、と力強く語って下さいました!

自分と向き合い、“できない事もあるけれど、できる事もある”という発想の転換をし、自分を受け入れた小清水さん。これからも、出会えた人を大切にし、まっすぐ明るい小清水さんの発信が、様々な方々の勇気につながり、優しい社会を紡いでいきます!

【小清水 緑】
カゴノオト
神奈川県横須賀市出身
東京で大学卒業後、障がい福祉の現場で働く。
仕事をしながら週に1回、東京の中野で自分のカフェ展開していた。
だんだん仕事をしている自分よりカフェをしている自分の方が自分らしくいられると感じるようになった。
2011年東日本大震災がおこり、「地に足の着いた暮らしをしたい。自分で仕事を作り出したい」と思い高知県四万十町に移住。
2012年よりカフェをはじめる。
四万十で農家さんが育てるものを使って料理をやお菓子をお客さまへ提供する。
2013年より四万十のものを使った「1年かけた四万十の旬でつくるシュトーレン」を作り始める
2018年シュトーレン作りに専念するためカフェを辞める。
2019年シュトーレン専門店として場所を移転する。オンラインショップもオープン。
現在は、四万十に暮らす生産者さんが育てる素材を直接、生産者さんのところへ行って作られる現場を見せてもらい、人生ストーリーもお聞きしながら素材を買わせてもらう。
その素材を1年かけて様々な生産者さんから旬ごとに仕入れ、仕込みをして1年かがりでつくるシュトーレンを製造している。
地域の障がいを持つ事業所さんに作業の一部もお願いし、様々な方の手を渡り大事にお客様のもとへお届けしている。
2023年阪急さんのシュトレンイベント「きっとみつかる私のシュトレン」がきっかけで、2024年秋「奥四万十の恵み」イベント催事。
カゴノオト
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