2024年11月17日のハイパー縁側@淀屋橋は高橋裕基さんと中山亮さんをゲストにお迎えしました!
テーマは 「食を通じたまちづくり」

2023年にスタートし、3回目の開催となる『WeST CYCLE MARKET』。“ヒト・モノ・コトのサイクルを創造する”をテーマに、フードやドリンク・フリーマーケット・ワークショップ・DJブースなどで賑わい、様々な出会いや体験を楽しむ事ができます。

1回目から出店されている『ラムのラヴソング』の高橋さんは、天満・北浜・肥後橋にラムを軸とした立ち呑みスタイルの店舗を運営する会社・スコンクワークスの代表を務めています。初参加の中山さんは、東横堀川の川沿いにある、中華とワインを楽しめる立ち呑み店『ヨコボリ』の店主。お2人は当初、呑み友だったそう。大学生の頃にアルバイトをしていた中華料理店に、そのまま就職した中山さん。家の近所にあった高橋さんの1号店に、週5で深夜に押しかけ、愚痴をきいてもらっていたそう。

中山さんが中華料理店で12年間勤め、独立を考えていた頃、高橋さんは北浜に新店舗オープンを思案中でした。北浜エリアに長年住み、地域に精通していた中山さんは「何か力になれるのではないか」と、高橋さんの店の立ち上げに関わる事になりました。

高橋さんが出店先に選んだのは、登録有形文化財に指定されている生駒ビルヂング。たまたまオーナーの方と知り合いで「空き出るからどうか」と、高橋さんに声がかかったそう。最初は乗り気ではなく、歴史的建造物とも知らずに「場所だけ確認しとくか」と軽い気持ちで訪れます。

しかし、建物を見た瞬間に「電撃が走った」と、大きな衝撃を受けた高橋さん。天満で経営する1店舗目に不安を抱えていた事もあり、借りられるお金を全部借りる勢いで「ここで、人生かけてやろう」と、決断します。中山さんも、ビルの場所や雰囲気・人の流れなどを考慮しても、すべる要素はないだろうと感じていました。高橋さんは、「すべったら、ゴンちゃん(中山さん)のせいにしようと思ってました」と、当時を振り返り笑います。

新店舗のコンセプトのヒントにしたのは、アジアの裏路地の屋台ごはん。アジアカルチャーに傾倒していた高橋さんは、ベトナムや台湾をよく旅していました。しかし、現地で食べた屋台ごはんをそのまま提供しても、うけない。自分なりにジャパナイズし、ラム串などエスニック料理を楽しめるスタンド『MAKE ONE TWO』をオープンさせました。

すると、北浜エリアが騒つくほどの反響だったのだとか。高橋さんは、「こんなところに、こんなもの!?」という逆張りを狙いながらも、お客様に来て頂けて一安心だった、と本音を語ります。

一方、中山さんは『MAKE ONE TWO』の立ち上げに尽力した後、満を持して『ヨコボリ』をオープン。北浜駅前ではなく、少し外れた場所に出店する人が増え始め、いい感じの店が川沿いに点在するようになっていた頃でした。町内会を含め、美容院などの他業種の方との繋がりもできていたので、集客を心配せずにスタートダッシュできる、と確信をもっての独立でした。

中山さんは、「ここのこれが食べたい」「この空間で、いい時間を過ごしたい」と思って来てもらえる店でありたい、このエリアでキラッと光る店の1つでありたい、と店に対する想いを語ります。

“まちと共に成長してきた”

最近は、そんな町場のヒーロー的な店が商業施設に入るシーンをよく見る、と残念そうな高橋さん。お2人は、「絶対に商業施設には入らない」と断言し、「ぼくらには町場がちょうどいい」と笑顔で話します。北浜在住歴19年目の中山さんは、まちと共に成長してきたし、まちのカラーを創ってきた、と実感しています。

一昔前、ビジネス街だった北浜は、土日になると人の姿はなく閑散としていました。しかし近年、マンションが増加したり、川沿いを盛り上げる団体ができたり、まちは変化してきました。北浜エリア全体に、出店する店が増えるに伴い、「肥後橋の方の店にいこうか」「川沿いにいってみよう」と、より細かく、より外側に行ってみよう、とまちを楽しむ人々も増えた印象を中山さんは受けています。

そんな新風を吹かす若い世代と、昔からここで商売をしたり、住んでいる年配の方々の価値観や考えが異なるのは当たり前。だから、中山さんは間に入る“ハブ”の役割をしたいと、考えています。

年配の方からは、「あのうるさいお店どうなってる」と相談を受ける事も。若い世代には、「町内会の会長さんに挨拶した方がいいよ」とアドバイス。どの世代も、“まちを良くしたい”という想いは同じ。歴史のある地域なので、まちに愛され、みんなが円になっていけたら。そんな想いもあり、店名に『ヨコボリ』という地域の川の名前をつけたそう。

特に、ここ5年10年で、大きく変わっていくまちを肌で感じてきた中山さん。これからも、まちをよりよくしていく事に貢献していきたい。「家賃が上がるのは、やめてほしいですけどね」と、笑います。

30才の頃、勢いとノリで独立したと振り返る高橋さん。商売が成功するロジックも分からないし、こだわりよりも気持ちが先行する状態で、思い出したくない失敗をたくさん経験してきた、と打ち明けます。先輩に教えてもらったり、経験を積む事で精度が上がっていき今がある、としみじみと語ります。中山さんも、低迷していた中華料理店を継ぎ、お客様のクレーム1つ1つにコツコツと向き合ったり他店を研究したりする事で、集客を取り戻した経験があります。

そんな高橋さんが大事にしている事は、“誰と働くか”という事。イベント出店の声がかかった時も、誰からのオファーかという事が重要。『WeST CYCLE MARKET』への出店に関しても、ナチュラルワインバー『su/il soffione』の信頼する三吉さんに声をかけてもらったから、と理由はシンプル。スタッフ採用時も、「自分のチームに合う」「感覚的にいいな」と感じたら、経験やスキルは関係なく選ぶそう。“人間性を大事にしたチームづくり”を意識しています。

中山さんも、結局は“人”なのではないかと感じています。コロナ禍が明けた時に、「大丈夫やった?」とすぐに常連さんが駆けつけてくれました。中山さん自身、「この店で、あの人の注いでくれたビールが呑みたい」と店を訪れます。『ヨコボリ』にも、中山さんやスタッフと会いたい、喋りたいと来店してくれたら嬉しい。

さらに、音楽やアートなどの趣味で盛り上がれたらもっといい。カウンターのある店なので、店の雰囲気がお客さんに伝わりやすい。和気藹々としていれば、お酒を楽しく呑んでもらえるし、料理もおいしく食べてもらえる、と笑顔で話します。

高橋さんは店を始めた10年前、こんな風になっているとは想像もしていませんでした。「やりたい事をやっていったらこうなった」「やりたくない事はしたくない」と言います。30才を超えたスタッフにも、「不得意な事はしなくていい」とアドバイスするそう。苦手分野は人にお願いして、トータルで五角形を作れればいい。そうなると、ストレスが減り、人間関係が円滑にいき空気感が良くなる、と考えています。

逆に、20代には「しんどい事をガンガンした方がいい」と正反対のアドバイス。基礎体力をつけて30代を迎えてほしいと願っているからです。そんな高橋さんの店では離職率がかなり低いのだとか。対外的なブランディングだけではなく、内向きのブランディングも意識しています。「店で働く事で得られる満足値を上げる為にはどうしたらいいのか」というのを常にテーマにしている、と言います。

中山さんは、個人店だけれど休日・休憩をしっかり確保できて、給料も十分でスタッフ同士も仲良くて、それでいてやりがいもある。結果、スタッフの離職率の低さに繋がり、長く続けていけるという店を目指しています。飲食店の社会的地位を押し上げていきたい、と考えています。
食を通じて、人と人が繋がり、まちができていく。容易く、食からまちづくりへアプローチするお2人の軽やかさと、同時に信念を貫く芯の強さが印象的でした!

最後に、『WeST CYCLE MARKET』を企画する久留島さんが、ご登壇。空気感の心地よさを体験してもらえたのではないか、この風景を創れてよかったと感想を述べ、これからもコミュニティを徐々に育んでいきたい、と締めて下さいました!

【高橋 裕基(TAKAHASHI YUKI)】
株式会社スコンクワークス 代表取締役
天満の「ラムのラヴソング」「BLACK SHEEP」、北浜の「MAKE ONE TWO」、江戸堀の「BOY」ラムを軸にした立ち呑みスタイルの店舗展開で各店ともにエリアを代表する大人気店として、たくさんのお客さんに愛されている。
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ラムのラブソング
BLACK SHEEP
MAKE ONE TWO
BOY
【中山 亮(NAKAYAMA RYO)】
ヨコボリ 店主
1985年大阪市生まれ。2009年大阪経済大学大学卒。
大阪北浜エリアの中華料理店で13年勤務後、2020年同エリアに立ち飲み店「ヨコボリ」をオープン。2022年には酒好きの為のアパレルブランド「INSYUSYUGI」設立。
ヨコボリ
INSYUSYUGI